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龍帝記  作者: 久万聖
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王女アデライード

 アデライードは、王宮のテラスでお茶を飲んでいる。


 テラスより庭園を見ながら思う。


 なぜ自分がここに居るのか、と。


 先々王ラテール五世の娘とはいえ、フィリップ王子とは違って母の身分は平民であり、決して公認される立場では無かった。


 それがなぜ公認されるようになったのか?


 それはラムジー四世の失態が原因である。


 ラムジー四世が友好関係にある龍人族の巫女の代替わりに、使節団副団長として赴いた際の失態。自らの立場を省みず龍の巫女に求婚したことにある。


 ラムジー四世の王としての資質の欠如に危機感を覚えたラテール五世が、アデライードを呼んだのだ。


 有力貴族の嫁に送り、ラムジー四世か、もしくはウリエの後見となってもらうために。


 アデライードとしては幸運なことに、降嫁させられる前にラテール五世は崩御し、その計画は頓挫した。


 もし、ラテール五世の思惑通りに降嫁することになっていたら?


「考えるだけでおぞましい。」


 本気でそう思う。


 有力貴族といえば聞こえはいいかもしれないが、実際には年寄り貴族の後添えか子供しか相手はいない。


 そんなところに嫁いだとしても、つい最近まで公認されなかった身で何ができるだろうか?


 つい最近まで公認されなかった身だ。嫁いだ先で馬鹿にされるのがオチだろう。


 フィリップ王子は、そんな自分を妹として受け入れてくれ、色々と気を使ってくれる。ウリエも、自分を姉と慕ってくれる。そんな二人の役に立とうとは思うが、この国のためになろうとは思えない。


 今回の件が片付いたら、どこか辺境でいいから領地をもらい、ひっそりと暮らすつもりだった。だが、面白そうな国ができたことを知った。だから・・・。


「今回の功績を持って、あの国に行かせて貰おう。」


 そう考えている。


 ウリエには、しっかりと自分を売り込むように伝えている。


 そして明日、ウリエが出立してから4日目。ウリエがすぐには戻れなくなる距離に到達し、フィリップも同様にすぐに戻ることができない地に行く。ラムジー四世派貴族が動き出す可能性が最も高くなるだろう。


 ラムジー四世派貴族が動くのを待つ必要はない。


 平民として市井で生活をしていた時に培った人脈がある。それをフルに活用することで、ラムジー四世派貴族の動向だけでなく、不正・不法行為の証拠は掴んでいる。


 テーブルの上にある鈴を鳴らす。


 その音に呼ばれた自分付きの家令に小声で指示をだす。


 この夜、イストール王国王都ガロアの擾乱は開演する。

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