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異世界とゴキブリのような俺と  作者: Powell
試験編
7/12

第7話 姫と日常と……

「仕事始めに遅刻とはいい度胸じゃない。見習いのくせに」


女はそう吐いた。いや、姫といったほうがいいのだろう。


ここで俺にはふたつの選択が生まれる。

一つはすいません。という仕事ルート。


二つ目はなんだと!という恋愛ルート。


だが、分かる。こいつとは上手くやれない。

そういう感じがする。ただでさえも気の強い奴は苦手なんだ。ウマが合わないというか。


「あっ。すいません。」

ここは出世を取る!上へ行けば出会いも多くなることだろう。

深々と頭を下げる。

どうだ。この綺麗な90度の礼は!

ここまでされると何も出来まい。

困惑する姫の姿が目に浮かぶ……


「アクリシム!!」


2回目の衝撃が体中を駆け巡った。

「ぐはぁっ!!」


「そんな形だけの礼なんて要らないわ。それより仕事してちょうだい。仕事を!」


「……この悪魔が。」


「えぇ?何か言った?」


「いいえ!何も言っておりませんよ!ハハハ!」


最近思う。なんか辛い。


………………………………………………………………


さて、朝起きて身だしなみを整えて、朝食を食べてそのまま姫を起こしに行くというルーティーンが出来るまでに2週間を要した。

それまでは朝 朝起きれずに飯を抜いて来るや、単純に寝坊で間に合わないという事が起きたが慣れたものだ。

「おはようございます。リーシャ姫。」


姫は何回か寝返りを打ちそしてゆっくりと体を起こした。


「だから何度も言ってるでしょ。リーシャでいいしけいごじゃなくてもいいって、同い年だし。」


「いいえいいえそんな!!」


タメ語を使わない理由はただ一つ。

あんまり親近感を覚えたくない。

出会い方だけになんか親近感を覚えたら負けなような気がする。

姫が寝ぼけながら服装を整えに行っている間にベットメイキング。

なぜだろう。

普通の男子なら興奮するであろうシチュでも何も感じない。

女と見ていなくただの仕事道具と思っているからであろうか。


「さぁ、行くわよ。」


姫は着替えを整えて食事へと向かう。

樹はただそれに同行するだけである。

………………………………………………………………


食事やその他もろもろを行った後の姫は暇である。

そこで樹の本当の仕事、及び訓練が始まる。

仕事というのは姫のわがままへの対処。

基本はパシリである。

訓練というのは剣術である。

王国剣術の達人である姫のレクチャーを受けているのであるがノビを感じない。


「ほら!また剣に振り回されてる!」


こんな言葉を何度も聞くのである。

それも当然。この王国剣術、剣を片手で操るものであるからだ。

剣は両手で持つものという概念のある樹にはまぁ無理なことである。

姫の声とともに倒れ、立ち上がる分身を見る。

それが樹の日常であった。

どうやらどこぞの分身を得意とする忍者と同じように経験も共有できるようだ。それは好都合。

しかし、だからといって疲れを感じない訳では無い。

痛覚を共有しているから痛いし分身を出す時に気も使う。

周りからは休んでいるように見えてこれはこれできつい。

書斎でただ訓練を見ながらリンゴを剥いている彼も一応苦労はしているのだ。

あっ。分身が倒れた。こちらに向けてバツサインを出している。

もうダメか。しかし困った。もう気が残ってない。

だが、そんなのであのわがまま姫が許すわけもなく

こちらへ向けて手招きをしている。

これを無視すると後からめんどくさい。

仕方なくリンゴを置いて本体が向かった。


「遅いわよ!!」


不意打ちが飛んできた。しかしそれを樹は避けた。

たかが2週間の修行だがフルで動いて食らっているため予測と動体視力でどうにかなった。


「甘い!!」


そう言い抜刀。しかしやっぱり重い。

そのまますっぽ抜けた。


「隙だらけよこの分身野郎!!」


このセリフ。1日に1回は聞く。

俺がヘマをした時のセリフ。

分身を切る時のセリフ。

いやちょっと待って。本体だから本体だから。

そんなことを思っても口が回らない。

これが緊張なのか、はたまた身震いなのか。

分からなかった。


キィーーン!!


刃と刃が当たる音がした。

姫の剣とそして樹の包丁。

あっ、リンゴ剥いたあとも持ってたんだ。

多分殺意でだろう。感謝。

樹は力が抜けていくのが分かった。

はぁ、緊張した。

土の感触が気持ちよく感じた。

あぁ、生きてるっていいな。


「あっ、大丈夫?」


姫が脱力した樹を見てなにかを感じたらしい。

他人行儀に聞いてきた。


「大丈夫だぁ?」


死ぬかもしれなかったという経験のせいか

樹を今まで止めていた枷が外れた。


「死ぬかと思ったわ!俺は本体だっつーの!てゆうか本体じゃなくても切りかかるなよ!痛いんだよ毎回毎回!馬鹿かお前は!!」


溢れるように言葉が出た。

まぁ、死にかけたわけだし、これくらいはいいだろう


「ふっ、くふふっ、アハハ!ハハハハ!」


これは以外だ。姫が笑い始めた。

ここでの展開は申し訳なさそうにするか、逆ギレであるはずなのに。

どこかのネジが外れているようだ。


「さっ、お昼にするわよ。」


何事も無かったかのように剣を収め少し跳ねながらランチへと向かう。

この女、全く気にしていない。

いや、むしろ楽しんでいるな。

もしや、これからもきっと……。


ひとり震える昼であった。


………………………………………………………………


さて、今日も今日とて朝飯を作り姫を起こしに行くというルーティーンに変化は見られないが少し変わったことがある。


「朝ですよーー!」


「んんっ? ……。 うるさいわね……。」


「さぁ、早く着替えて、時間もないんだから。」


其ノ壱。少し距離をつめて友達感覚になったということ。

やはりこの方が何だかかしこまらずに済むため楽だ。

しかし、早く起きろよ、とか幼なじみ主人公みたいなことは絶対にやらない。

やったら負けだ。


其ノ弐。それは剣術である。

先日の包丁の件によって俺には短剣の方が合うのではないかとリーシャが言い始めてそれに従った結果なんかいい感じになった。

今ではどうにかこうにかリーシャの剣を受け止めれるようになった。

正直に言えば今は充実している。

全てが上手くいき始めてようやく歯車が回りだしたようなそんな感覚だ。

しかし何かを忘れている気がする。

あれ?そういえば俺の休日っていったい……。

そう思った時にはもう遅かったのだろう。

目の前が真っ白になった。

ついこの前まで学生だった男が休みなしで働き続ける

よく考えれば当たり前のことだろう。

勤続1ヶ月と少しのことであった。








どうも僕です。

さて、これを作るにあたっては日にちをだいぶ空けたためキャラがブレブレになっていると思いますが、気にしません。

最後までブレブレでいくと思いますので悪しからず。


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