第5話 チートな勝者
なんの魔法だかはわからない。
だが、使わずに負けるのは嫌だ。やるっきゃない。
「カルトーラ!!」
その時、やはり体から煙が出てきた。
「そんな煙じゃあ僕の風には勝てないよ!!」
確かにそうだ。だがなんというかこの煙は何か違う!
何か奇跡を起こしてくれる。そんな気がする。多分。
詠唱をしてからものの数秒である。
煙は樹のみを包み込んだ。そして、だんだんと黒い色が消えてゆく。
「おいっ!ちょっまっ……。」
まずい!これでは裸同然だ。
風魔法を叩き込まれてジ・エンドだ。
しかし、相手も様子がおかしかった。
何かキョロキョロしているような……。
「くそ!どこに行った!もしかして逃げたのか!?」
は?煙が消えたのになんで俺の事が見えてないんだ。
馬鹿かあいつは。
いや、待てよ……。もしかしてこの魔法は……。
「くそっ!フーガ!!」
運の悪いことにそのフーガを打った方向は樹のいる方
「がはぁっ!!」
「そんなところにいたのか!」
だが、これで確信がもてた。
おそらくだが、この『カルトーラ 』は煙が周りの景色に合わせて色を変え、俺を消す。
つまり、『潜伏魔法』だ。
だが、あくまで煙。風には弱い。
いいぞこれなら……。そうだ!
「はっ!馬鹿野郎め!俺の場所が見えないお前なんてもはや赤子同然なんだよ!」
「はぁ!?この1番に向かって何言ってるんだよ!」
いいぞ。いい感じに怒りを買った。これなら……。
「カルトーラ!!」
「くそっ!また煙か!」
煙が樹を包み、そして樹は消えた。
「2度もそんなのが通用すると思うなよ!!」
「フーガ!!」
またも運が悪く、樹へと突風が吹く。
「ぐはぁっ!!」
「チェックメイトだよ!喰らえ!」
予想通りだぜ。
「いまだ!!いけ!!」
「!?」
樹の掛け声とともに男の身体は地面へと崩れいく。
「なんだ!これは!」
うつ伏せになった男はもがきながらも言い放った。
「分身だよ。お前はキレててわかんないかったかもしれないが魔法は俺自身だけでなく、俺の分身達にも掛けておいてお前の後ろにまわらせていたんだよ!」
「あっありえない!君と分身の距離は離れていた!そんなことができるはずが……。」
「誰が俺自身が魔法をかけたと言った。」
男はキョトンとしている。
「使えんだよ。俺の分身も。」
そう。実験の成果のひとつ。分身も放出魔法を使えたということ。
「そんなの……チートじゃないか!!」
「うるせぇ!一気に行くぜ!!」
そう言い、樹は分身が抑えられ、うつ伏せの男に向かって、
「喰らえ!名付けて分身ピラミッド!!」
どこから出てきたのか分身が男の体に飛び込んでゆく
「あっ、あぁ……あっ!…………。」
「あっ、落ちた。」
少しの静寂が会場を包んだ。
「勝者!541番!!」
会場が審判の声を境に一気に沸いた。
樹もそれに応えるかのように腕を上げる。
分身も一緒に。
だが、力が入らない。フラフラする。
視界がだんだんと暗くなってゆく。
1回なった時がある症状だ。最初に魔法を使った時だ
もしかしてガス欠なのか。俺。
確かにラストを決めるために分身を数体出したが……
あっ、そういえば実験結果にこんなのがあったなぁ。
魔力は分身の体からは使われず、俺自身から使われる
そういうことか。
分身の潜伏魔法の結果か。
まぁ、いいか。勝ったし。
勝者はゆっくりと地へと倒れた。
どうも。作者のPowellです。
さて、色々な都合があり再うpとなった今回。
ここから王宮編とする予定ですのでお楽しみに。
PS、ロードレースが欲しい。