第3話 弱点の発見
目を覚ますといつもと違う。
あっ、これが知らない天井か。部屋の中か。
気を失ったまでは覚えている。当たり前だが。
きっとハンクが担いで中に入れたのだろう。
とりあえず起きて礼くらい言おう。体を起きあげた。
「おぅ、起きたのか。」
すると横にでかい奴がいた。
「うぉぅっ!?」
驚いて変な声が出た。
「何おどろいてんだよ、ずっと看病してたんだぜ。」
えっ、お前がかよ。変なもの食わされてないよな。
「お前、気を放出しすぎてガス欠になってたんだからな。」
なるほど。だから貧血の症状みたいなのが出たのか。
「いや、今日はやめよう。もう疲れた。」
気を使い果たしてへろへろだった。
「そうか?じゃあ飯食って寝るか!」
「飯は俺が作る。いや、作らせてくれ。」
俺は嘆願した。そうじゃないと俺の体がもたない。
そして、家庭科4の力を見せつけ、風呂に入って、寝た。
風呂にハンクも入ってきた時は死ぬかと思った。
しかしなんだろう。この修学旅行前のような高揚感は
明日が楽しみだなぁ。
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翌日。飯を早く起きて作り、ハンクをたたき起こし、飯を一緒に食べ、そして庭に出た。
ハンクはまだ少し眠そうだ。
「よし、今日は二つ目の魔法を試す。」
「おぉ、頑張れよ……。」
「まぁ、見とけって。目も覚めるくらいのもの見してやるから。」
樹は魔法を使ってはいないがその呪文からそれがどういった魔法かは分かっていた。
樹は左手をグーにして、そして人差し指と中指だけを伸ばす。そして、それを右手で包む。そして、
「分身の術!!」
大きな声で叫んだ。すると、白い煙が周りから吹き出た。煙はすぐに消え、周りを見ると、俺がもう一人いた。
やっぱりそうだ!!
樹は飛んで喜んだ。ハンクは目を見開き、口をポカンと開けている。まだ状況が理解出来ていないようだ。
「ほら、ハンク。すごいだろ。こいつ殴ってみ。多分消えっから。」
挑発するようにいった。ハンクはしばらくボーッとして、
「あぁ、いいぜ。」
ハンクは喧嘩を買うように言ってきた。
「いくぜっ!オラゴラ!」
そう言い分身の方にハンクの右ストレートが飛んでゆく。分身の顔は引きつっていた。どんまい俺。
あとはパンチが分身の顔に当たって、白い煙がでて分身が消える。分身というのはそういうものだ。
そう思っていた。
ハンクのパンチが、分身の顔に命中した。
その直後、俺、本体の顔に変化が、起きた。
「グガァァ!?」
ハンマーで、殴られたように痛い。
仰け反るような痛みだ。骨の何本かは折れている。
そんな感じだ。しかし、顔を触ると異常はない。
だが、痛みは残る。焼けるような痛みが。
「なんでお前も仰け反ってるんだ?」
ハンクは俺に言ってきた。
あっ、そうだ。分身は!これで消えていたら成功だ。
分身が立っていた場所を見る。
すると、顔が真っ赤になっていて、鼻が折れ、歯も折れている男がいた。俺だ。分身だ。
痛々しい。そう思った。だが、同時に疑問も生じる。
まさかっ!そう思い、分身の金的を思い切り蹴った。
「ハグゥッ!?」
俺の金的と腹に猛烈な痛みが来た。
やっぱりか。そう感じた。
「お前何自分の分身蹴ってんだよ。」
「いや、実験だ。これでわかったことがひとつある」
「俺と分身の痛覚は繋がっている。」
「なぁ!?」
これはとんでもない弱点が見つかった。
分身の意義に関わる弱点だ。
「顔がぁ、俺の男がぁ、……。」
顔を殴られ、金的を蹴りあげられた分身。
痛々しい。早く消してあげよう。
恐らくこれを消せば俺の痛みも消える。
分身を発動させた時と同じ印を結ぶ。
「解!!」
普通ならこれで消えるはず…………。
「痛いよぉ。……。」
分身が消えない。あれ?どういうことだ。
消えないぞ。そういえばダメージを与えても消えなかった。これはもしかして、分身の術じゃあなくて分裂の術なのか?
だとしたらこの分身が可哀想だ。早く治療しなくてはいけない。
そう思い分身に手を差し伸べた。
分身は何も言わずに手を掴んだ。
『ぼわわぁ〜ん 』
煙をあげて分身が消えた。
もう訳がわからない。とりあえず実験が必要だ。
そう思い、分身を作った。
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樹の精神は夜を迎え限界に達した。
とりあえず、分かった。分身のことは……。これはやばい能力だ。もう家に戻って休もう。
「おーい!飯が出来たぞ!」
ハンクは途中で俺の実験から抜けていたらしく大声で叫んでいた。最悪だ。集中しすぎてあいつに飯を作らせてしまった。ひどく落胆した。
しかし、食事は案外美味しいものであった。
ひどくひどい見た目ではあるが、昼飯を抜いてぶっ続けで実験をしてたせいでなんでもうまく感じる。
「それで、ムシャムシャ。どうだったんだ。分身。」
頬にご飯粒をつけて言う。可愛くない。
「はぁ、とりあえず今の俺が一度に出せる分身の数は10体。そしてそいつらがダメージをくらうと本体の俺もくらう。そしてダメージを受けても消えることはない。」
「んじゃどう消すんだ?」
「消し方は2つ。分身に直接触り印を結ぶ。もう一つは…………。」
「死に値するダメージを食らう。」
実験中に気づいた最大の弱点。それがこれだ。
つまり、遠隔で分身を動かしている時に消すことはできず、拷問にかけられても消えずに俺にダメージが入る。最悪の弱点だ。
この結果を導くのに俺は俺を5人殺った。
と同時に5回死んだ。そういうことだ。多量出血で殺したので樹自身はとんでもない痛みというのを味わうことはなかった。失神しそうにはなったが。
「なるほどなぁ。」
手を叩いてそういう。絶対に意味がわかっていない。
「それより聞きたいことがある。」
「んっ?なんだ?」
「どうやって兵士になれるんだ。」
そういえばずっと聞いていなかったと思い出した。
「あぁ、それか。それはテストだな。」
「テスト?」
「あぁ。来週ある採用試験に合格すればいい。試験といっても戦うだけだがな。」
「な〜んだ。戦うだけか……。」
「らっ、来週!?」
「あれ?言ってなかったけか?」
「なんでそんな大事なことを先に言っとかないんだ。どうするんだ。残り7日でどう仕上げればいいんだ。これじゃあ無理ゲーじゃあないか!」
7日で弱点の改善。そして戦闘をどうするか。
俺の異世界ライフは苦境へと落ちていった……。
残り7日。
第3話をあげさせて頂きました。
これからの展開は頭の中で混雑中ですので、少し更新が遅くなる場合がございます。あしからず。
おそらくですが、毎週月曜日か1週開けた月曜日に毎回あげさせていただきます。
是非お楽しみに……