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2 明星 蛍(みょうじょう けい)

 世界には自分と同じ顔が二人いる。それが本当だとは思っていなかった。

 でも、出逢った。

 『似ている』ではなく『そっくり』な、一卵性の双子のように同じ顔。既に一人出逢っていたけど、もう一人出逢うとは思わなかった。以前出逢った『彼』より強く、何かを感じた。

「そっくりだな」

『そっくりさん』の隣にいた美形が笑った。確か、『美形ランキング』の三位に入っていた人だ。僕の高校の制服を着ているけど、その人だとわかった。氏名は読めない名字で、名前は『十夜』と書かれていたのをしっかりと思い出した。

 十夜の笑い声に緊張が解けたのか、『そっくりさん』は柔らかい笑みを浮かべた。同じ顔なのに、自分では作れない表情。それに、『何か』を強く感じた。

 パチン。どこかで指が鳴る音が鮮明に聞こえた。

「本当に。僕は神羽葵。よろしく、ケイくん?」

「蛍でいい。漢字は『ほたる』で、ケイ。明星みょうじょう蛍。よろしく葵、十夜」

 上手く笑えたか自信がなかった。

 葵。どこかで聞いたことがある気がした。鎖骨がジクジクと痛む。

 痛みが、何かを呼び起こそうとしている。歩と出逢ったときに感じた痛みに似ていた。

 葵は「ランキングってすごいね」と苦い顔をした十夜と笑っていた。このまま話していたかったけど、集合時間の五分前になっていた。

「歩、夜宵やよいは先に化学室に行ってるから」

「わかりました。では、行きましょうか」

「僕も一緒に行っていい?」

 歩と並んで教室を出ようとしたところで掛かった声。断る理由はなかった。歩を窺うと、いつもの笑みを浮かべていた。

「うん、見て行ってよ。合同発表で、結構凝った作りになってるから」

 

「あ、もうお客入ってたんだ」

 ドアを開けると、並べた椅子の半数が埋まっていた。飲食禁止にしていたけど、部員が配る金平糖は例外で。でも、噛み砕くのは禁止。まだ椅子に座っていない人は、展示物を見て回っていた。

 惑星をボールで比較した模型、星空の写真、クラスメイトの占い師の母親に協力してもらって作った星占い。葵たちが展示物を見て回っているのを歩と待っていた。

「すごいね。科学部に入ろうか迷ってたんだけど、入ろうかなって思ったよ」

「是非是非入ってよ。来年は一緒にやろう!」

 金平糖を手渡すと、葵は嬉しそうに笑い、十夜は苦笑した。なんとなく、二人との距離が縮まった気がした。

 楽しそうに金平糖を食べながら待っている客を横目に、準備スペースへ暗幕を開けて入った。

「じゃあ、準備しよっか。葵と十夜は、適当に座ってて」

「蛍だけずるいですね。すぐに仲良くなるなんて。……そうですね、仲良くなる第一歩として名前で呼び合いませんか?」

 歩の提案に皆頷いた。

 名前で呼ぶのが自然に感じる。葵、歩、夜宵。名前で呼んでいた気がした。ずっと、昔に。

 鎖骨の痛みが増した。思わず、手で押さえた。

「あ、みんな揃ってる」

「時間通りだよ、夜宵」

 暗幕を開けて現れたのは、同じ顔の、俺とは違う制服を着た夜宵だった。

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