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cooooooooool!!!!~変態どもに囲まれた俺の心霊体験聞く?~  作者: アホ太郎
第一夜 【エレベーターが止まった】
7/19

戻ってきた日常

「だ……ぶ……ですか!?」



 ざわざわと人の話し声がする。騒がしさで、目が覚めた。


 目だけを動かし、現状を分析する。どうやらエレベーターの中で眠っていたらしい。救急隊らしき人が目の前におり、エレベーターの外には野次馬で埋め尽くされていた。


 勝二は痛む体を動かし、ゆっくりと体を起こす。足がズキズキする。



「ああ、よかった!」


「やった! 目を覚ましたぞ!」


「誰も起きないから心配したわ!」



 デパートの係らしき人と、野次馬が歓喜の声を上げる。悪霊の姿などどこにもない。

 ふと隣を見ると、桜と愛実が眠っていた。二人の瞳がゆっくりと上がる。



「こ、ここは……?」


「夢……だったのです?」



 二人とも寝ぼけ眼で辺りを見回し、今の状況を確認する。



「使用停止してたエレベーターに人がいると聞いたときは驚きました。一体、どうやって入ったんですか?」


「使用停止……してた?」



 救急隊員の言った内容に、言葉を失う。


 そんなはずはない。確かにエレベーターは動いていた。入るときも起動していたはずだ。



「そんな……じゃあ、今までのは全て夢……?」



 信じられない表情で呟く勝二に、愛実が落ちていた鞄を拾う。大量の塩が入った、勝二の鞄である。



「夢じゃ……ないのです」



 鞄の中身を見ながら断言する愛実。勝二と桜も鞄の中を見る。


 ――塩が全部なくなっていた。


 黙り込む勝二と桜。その横で、愛実が小さな声で呟いた。



「……約束、無事果たせたのです」



 あんなことがあったはずなのに、どこか嬉しそうに言う愛実に、思わず勝二の顔が緩む。桜もつられてクスリと笑った。



「ところで、気になってたんですけど、し、勝二さんはどうして大量の塩を買ったんですか?」



 いつの間にか下の名前で呼んできた桜。さらには、どこか熱っぽい視線までチラチラとこちらに向けてくる。

 隣にいる愛実が、ムッとした顔で頬を膨らませた。



「ああ、実は――」



 桜のその質問で、今まで忘れていた厄介事を思い出し、げんなりした。


 そうだったのだ。勝二は今から、《あそこ》に帰らないといけないのだ。


 これからくる災難を想像して、思わず乾いた笑みが漏れる。興味津々で見てくる二人の視線から目を背け、彼は言い難そうにくぐもった声で言った。



「俺の住んでるアパートの部屋、《いわくつき物件》なんだ」




第一夜 【エレベーターが止まった】

~完~

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