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cooooooooool!!!!~変態どもに囲まれた俺の心霊体験聞く?~  作者: アホ太郎
第一夜 【エレベーターが止まった】
2/19

何かいる

 とりあえず、勝二たちはこれからどうしようか三人で相談することにした。三人で意見を出し合ったが、解決案など出るはずもなく、手詰まりな状況が続くだけだった。

 

 そのときだった。突然、照明が消えた。



「……ひっ!」



 隣にいた小学生から息をのむ声が聞こえる。



「だ、大丈夫か?」



 何も見えない暗闇の中、声をかけると、服をギュッと掴まれる感覚がした。

 大人びて見えていてもやはり子供なのだろう。暗闇が怖いのか、手が震えていた。



「い、いた……」


「え、何が?」


「な、なんでもないのです」



 小学生は動揺した声を押し殺し、それ以上は何も言おうとしなかった。



「確かこの辺りに……あ、ありました!」



 女子高生からゴソゴソと物をあさる音が聞こえ、カチリと何かのスイッチを押す音がした瞬間、目の前が眩しくなった。突然の光に目がチカチカする。



「懐中電灯を鞄に入れてきて正解でした」


「なんでそんなもの持ってるの!?」


「意外と便利ですよ。あ、予備の電池もあるので、安心して下さい」


「用意周到すぎるだろ! この状況を予知でもしてたのか!?」



 女子高生は【計画通り】とでも言いたそうな顔でニタリと笑った。


 なんだこの女子高生、おそろしい子!


 突っ立っていても仕方がないので、勝二たち三人は輪になって座ることにした。



「……」


「……」


「……」



 そしてみんな、無言で懐中電灯の明かりを眺める。

 正直、とても気まずかった。


 よく考えれば、こんな状況になっていなかったら、話すことすらなかった赤の他人なわけで、おまけにこんな絶望の中、まともに話すことすら難しかった。



「あの、その……せっかくだし、自己紹介、しない?」



 気づまりな空気の中、勝二が恐る恐るそう提案すると、二人は無言で頷いた。



「えっと、じゃあ、言い出しっぺの俺から。俺の名前は望月勝二。高校一年生です。趣味は……特にないです。一人暮らししていて、最近の悩みは隣人トラブル……と、その他たくさんです。よ、よろしく……」


秋村桜あきむら さくら


森野愛実もりの まなみ



 順番に女子高生、小学生と、暗い面持ちでボソリと名前だけ呟いた。



「暗い! 暗すぎるよ、二人とも! もっと自己紹介しようぜ! い、いえーい!」


「……」


「……」


「……なんか、ごめん」



 自然と謝罪の言葉が口から出ていた。なんで謝っているのだろうか。

 再びどんよりした空気になり、堪らず勝二は口を開いた。



「あ、秋村さんは俺と同い年ぐらいだよね。高校生?」


「ええ、そうです。高校一年生です」


「おお! 俺と一緒だね!」


「そうですね」


「……」


「……」



 会話終わっちゃったよ、ちくしょう!

 勝二はめげず、今度は小学生の方を見た。



「えっと、愛実ちゃん? 何年生なのかな?」


「小学三年生なのです」


「へえー、三年生かー。学校は楽しい?」


「……」


「あ、あれ、愛実ちゃん?」



 突然、無言になって俯く愛実に勝二は焦る。彼女は少しの沈黙の後、どこか遠い目をして口を開いた。



「……行ってないのです」


「へ……?」



 愛実は目を伏せ、



「……わたし、ひきこもりなのです」


「あ、うん、そうなんだ。ごめんね、悪いこと訊いちゃって」


「……いいのです」



 とんでもない爆弾引いちゃったよ、ちくしょう!


 ますますドス黒くなっていく空気。あまりの気まずい雰囲気に、勝二からダラダラと汗が流れる。


 さすがの桜もこの空気に耐えられなかったようで、顔をひきつらせながら話題をふってきた。



「あ、そうそう、知っていますか。このエレベーター、一部の人たちの間で結構有名なんですよ」


「へ、へえー、そうなんだ。どう有名なの?」



 勝二はすかさずこの話題にのっかかった。この空気を打ち消してくれるなら、なんでもよかった。


 それにしても、何度かこのアパートに来ているが、そんな噂、聞いたこともなかったな。勝二は首をひねる。


 さっきまでの暗い面持ちはどこへやら、桜はどこか得意気な表情で、



「ここで自殺した幽霊がでるらしいんですよ!」


「おいいいぃぃぃ! あんたこの状況で何言ってんだあああああぁぁぁ!」



 爆弾どころか大砲ぶっぱなしてきたよ、この女!


 桜は動揺する勝二をクスクス笑い、



「あくまで噂ですよ。本気にしないで下さい。今まで結構な心霊スポットに行ったことがありますけど、幽霊に会ったどころか、みたことすらありませんよ。大体、こんなところに幽霊なんているわけが――」


「あ、あの、それなのですが……」



 今まで黙って話を聞いていた愛実が恐る恐る、



「幽霊なら、さっきからずっとあそこにいるのです」



 そう言って、エレベーターの隅を指差す。



「またまた嘘ついちゃってもう。年上をからかうものじゃないわよ」



 桜が笑いながら、懐中電灯の光をそこにあてた。


 ――血まみれの男が立っていた。



「うぎゃあああああああああああぁぁぁ!」


「ぐおべえええええええええええぇぇぇ!」



 勝二たち二人は悲鳴を上げる。

 桜が懐中電灯を投げ捨て、真っ青な顔でゼエゼエと息を切らす。しかし、そのおかげで奴の姿が暗闇に消えて見えなくなった。



「今のなに今のなに今のなにいいいいいいぃぃぃ!? きゃああああああああああ!」



 彼女は狂ったように同じ言葉を何度も叫び、頭をかきむしる。今の姿は美人も糞もなかった。無理もない。勝二も桜が叫んでいなければ、正気を失って大声を上げていただろう。



「い、いつからいたんだ、あれ!?」



 勝二の問いに、愛実は平然と、



「明かりが消える直前からいたのです」


「そんなときからいたの!? ていうか、よく今まで平気だったね!?」


「見慣れているのです」



 愛実はそう言い、何か嫌な記憶でも思い出したのか、目を細めて、自虐的にふっと笑った。



「そのせいでいじめられて、ひきこもりになったのです」


「あ、ご、ごめんね。嫌なこと思い出させちゃったね」


「……いいのです」



 また話が戻っちゃったよ、ちくしょう!


 またもや勝二たちの空気は悪くなり、互いに無言になる。

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