矛盾と終焉
第42章
地上には、無数に、かつて人であった肉の塊が、あたり一面に散乱していた。
周りは血だらけだ。そこには殺人マシンである無人機は、地面に落ちていた。無人機をコントロールしていた信号が、なくなったからだ。
なぜ、無人機は人間を一人一人殺していくのだろう。まるで人殺しを、楽しんでいるとしか、考えられない。
地球の資源が目的なら、邪魔な人類を、絶滅させるのは簡単なことだろう。大量破壊兵器を使えば、すむことだ。しかし、侵略者はそうはしてない。まるでゲームのように、人をわざわざ、一人殺し、また一人殺している。
一気に人類を絶滅させるのと、一人一人殺していき、結果として、人類を絶滅させる。どちらも、人間を全員殺してしまうことに、変わりがないように思える。
冷たい考え方だが、十分な時間が経ち、宇宙から地球を見れば、理由は分からないが、かつてこの地球と言う惑星に生き物が存在し、今は絶滅していなくなっている。宇宙から来た、訪問者は、きっとそう思うだけだろう。
それとも、侵略者が地上にいるのを、見るだろう。
だが、まるでビデオゲームを、やっているように、無人機を遠隔操作し、人間を一人一人殺していく行為には明らかな残酷さと、強い悪意を感じさせる。
同じように今まで、地上でもそんな惨劇が、人間同士で繰り返されてきた。侵略者にしても、人間同士の殺し合いにも、それ程、殺すという意味では大きな違いはないだろう。
この世界、この宇宙には善があれば、悪が存在している。どちらが多いかと聞かれると、分からない。あえて言うならばどちらも、同じだけ存在しているのだろう。
電気にプラスがあればマイナスがある。磁極にはN極に対しS極、物質があれば反物質、物理学の法則では、必ず反対の性質を持つ物質あるいは、現象があるとされている。
物理学の法則以外でも、同じ事が言える。例えば、生と死、男と女、喜びと悲しみ、憎しみと愛、欲望と無欲、絶望と希望、努力と怠惰、そして人間の心の中では善と悪が同居している。さらに付け加えるならば、悪人と善人がいる。
必ずしも、性質が反対のものが存在しないと、思う人もいるでしょう。例えば、物理学で言えばブラックホールに対しホワイトホールがその例である。ブラックホールは確認されているが、ホワイトホールは今だ、確認はされていない。
時間に対しても同じ様な事が言える。未来へと進む時間の流れ、それに対し過去へと流れる時間の流れは、その存在は確認もされていなし、現代の物理学では否定されていると言ってよいであろう。今のところ、時間は未来へと流れる一方通行である。
しかし、この世界には必ず反対の性質を持つものが存在していると思う。特に人の心の中では日々、悪と善が絶えず発生している。全てにおいて、善人と言える人はいないはずだと思う。人の世界ではその悪と善のバランスが崩れた時、平和な社会から戦争と言う最悪の事態を生むのだ。現在でも世界中のどこかで必ず戦争が起こっている。これは人類の歴史において、避け難いことだ。
出来る事なら、人を殺す悪い心をなくして、人を生かす善い心を持ちたい。
ジョニー達の物語は続く。
第43章
ジョニー達は敵宇宙船の残骸を通り過ぎて、まだ地球上にいる、数百の敵宇宙船を破壊するために進んだ。
「コンピュータ、まだ敵宇宙船は停止しているか?」
ジョニー達の船が放った、次元バースト波、強力な電磁波攻撃によって、敵の活動は一時的に停止していた。
「地球の裏側では停止せず、活動しています」
「何だと!」
ジョニーが大声を上げた。
しかし、ハルトは、やはりと思った。
地球上にいる敵宇宙船は、全て無人機だ。ジョニー達が放った次元バースト波は、地球の大気と地球自身によって弱められ、地球の裏側までは、到達していなかったのだ。この兵器は、真空の宇宙空間では、強力な威力を発揮するが、地球の大気層と地球自身によって無力化される。
これは、予想出来たことだ。
そして、ハルトは言った。
「あの無人機は複数の場所から、信号を受け取っているようだ」
「そうだな、コンピュータ、信号の発信源は特定出来るか?」
ジョニーは多分、ダメだと思ったが聞いてみた。
「信号は複数箇所から発信され、パルス化されているようで特定は不可能です」
これを聞いたジョニーは、
「パルス化されているようとは、どう言う意味だ!」
今も人が殺され続けているのだ。
ジョニーは、苛立って怒鳴るように言った。
それに対し、コンピュータは、
「信号自体が何なのか、分からないからです。未知の信号です」
と答えた。
「そうか、悪かった、コンピュータ」
ジョニーはコンピューターに対して怒鳴ったことを、素直にあやまった。
「ジョニーさん、あやまる必要はありません。未知の信号を受信して、地上に発信している船は、特定出来ます」
コンピュータが言うと、
「中継衛星か?」
ジョニーが聞くと、
「そうです。中継衛星がいます。それを破壊すれば地上にいる無人機を、止めることが可能です」
「雑魚にはかまわず、その中継衛星だけを破壊しよう」
ハルトがすでに、ディスプレイに表示されている、近くの中継衛星を見ながら言った。
「いくぞ、ハルト!」
ジョニーは船の速度を上げた。
そして次元バースト波を連続発射しながら、敵宇宙船を無料化していった。
ハルトは、ディスプレイに映っている、中継衛星をロックし、そしてパワーアップした、ビーム兵器で次々と破壊していった。
中継衛星と言っても、大きさは他の敵宇宙船と変わらない。ニューヨークの面積と、ほぼ同じ大きさだ。しかし、ジョニー達が乗っている、古代宇宙船のビーム兵器の、一撃で、木っ端微塵に吹き飛んだ。
敵宇宙船を次々と破壊しながらも、ジョニーとハルトは地上に残した家族を思った。すでに、殺されてしまっているかもと、大きな不安があった。そのため、彼らは早く、中継衛星全てを破壊しなければと、気持ちだけが焦っていた。
ジェリーが敵の母星に着くのは13日後だ。眼下には夕日に包まれた、アフリカ大陸が見えている。その美しい地球の姿を見ると、絶対に守りきらないと、いけない。ジョニーとハルトは強く思った。
無力化された敵宇宙船が、目の前まで迫っていたが、彼らは避けようともせず、そのまま突き進んだ。
彼らの船は、敵宇宙船の外壁を突き破り、その内部を破壊しながら突き進んだ。
敵宇宙船の大きさは直径30キロメートルの大型船だ。それに対し、彼らの乗っている古代宇宙船は、全長700メートルしかなかったが、パワーアップされた強力なシールドによって、守られていた。
敵宇宙船の内部を破壊し尽くし、再び外壁を再び突き破って、宇宙空間に出ると同時に、内部から破壊し尽くされた敵宇宙船は、眩い光を放ちながら大爆発を起こし、粉々に吹き飛んだ。
周囲にいた敵宇宙船も、その大爆発に巻き込まれて次々と連鎖的に、爆発していった。
彼らの船は地球の自転とは、反対方向に進んだ。地上から打ち上げられた、数々の人工衛星と衝突しては、無力化された敵宇宙船を破壊しながら進んだ。
今となっては地球を取り巻く、多くの人工衛星はなんの役目も果たしていなかった。
現在の科学技術では到底、敵宇宙船を迎え撃つ兵器は作る事が出来ない。皮肉なことだが、人間を殺す兵器は数えきれない程、ある。人間はこれまで、何をしようとしていたのか、バカらしく思える。
残念としか言いようがない。
ジョニーとハルトはぶつかって、粉々になる地球の人工衛星をただ、黙って見ているだけだった。
目的は敵の中継衛星だ。
「ハルト、もう少しだな」
南アメリカを見ながらジョニーが言った。
「あとは太平洋上だけだ」
ハルトは答えた。
彼らは次々と、中継衛星だけでなく、地球上にいる敵宇宙船も破壊していった。不思議なことに、敵母星からの直接攻撃はなかった。それだけが、彼らの気がかりだった。
「なぜ攻撃してこない?」
ジョニーは、口に出して言った。
ハルトも同じことを考えていた。
「ジョニー、多分、敵はあの巨大ビームが、この船には効かないと、分かったからじゃないか」
「それだけだといいが・・・・・・」
ジョニーは嫌な予感がしていた。
あれほど、敵母星からの直接攻撃があったのに、今は何もない。パワーアップして、あの巨大ビーム兵器にも耐えられるようになった。今はジョニー達が優位で、地球上にいる敵宇宙船を次々と破壊している。
やがて、ハワイ諸島が見えてきた。
「ジョニー、あと少しだな」
ハルトが言った。
すると突然、
「高エネルギー反応あり!」
コンピュータが警告した。
ジョニーとハルトはやはり、敵母星からの直接攻撃だなと思った。この攻撃は何度も受けているので、シールドが守ってくれると、安心していた。
「危険、危険、危険・・・・・・・」
コンピュータは何度も、警告を続けた。
おかしいなと、ジョニーは思った。
そう思った瞬間、ディスプレイ全体が、紫色に光った。そして何か、巨大な物体が衝突したような、激しい衝撃が彼らを襲った。
「シールド消滅、船体破損、シールド消滅、船体破損・・・・・・・」
コンピュータの音声が途中で、途切れた。
二人がいるコックピットにも亀裂が入った。
そして、注入されていたb・p・sが流れ出した。
「コンピュータ、一体、どうなっている!」
ジョニーが大声で言ったが、コンピューターからの返事は返ってこない。
「ジョニー、そこら中の警告ランプがついているぞ!」
ハルトの声がかすかに、聞こえた。
ジョニーの目の前のモニターにも、ハルトと同じように、多数の警告ランプがついていた。
「コンピュータから応答がない!」
ハルトの声が、次第にとぎれとぎれになり、聞こえなくなってしまった。
「ハルト! 聞こえるか!」
ジョニーは叫んだが、もう何も、聞こえてこなかった。
古代宇宙船は、敵母星からの攻撃によって、中央から半分にちぎれてしまった。
「ジョニー、息が出来ない! 苦しい、助けてくれ!」
ハルトの声はもう、ジョニーには届かなかった。
ジョニーも同じように、息が出来なくなっていた。
やがて彼らを守るb・p・sの液体が完全になくなってしまった。
「ハ、ハルト」
ジョニーはテレパシーを使った。
しかし、ハルトからの返事はなかった。
そして、最後の一撃がやって来た。
宇宙空間の一部に、裂け目が現れた。その裂け目から、紫色の強大なエネルギーが、2つにちぎれてしまった古代宇宙船めがけ、容赦なく降り注いだ。
ちぎれてしまった古代宇宙船は、紫色の光につつまれ消滅した。
「お袋・・・・・・・」
ジョニーの最後の、テレパシーが全宇宙に飛び散った。
再び宇宙空間の裂け目が現れ、紫色のエネルギーの塊が、今度は地球を飲み込んだ。
そして、地球はあとかたもなく消え去った。
2017年12月27日、地球は消滅し、人類は滅亡した。
あまりにも、突然過ぎる出来事だった。
これが、人類の、地球の、運命だったのか、あまりにも、突然過ぎた。




