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ヒューマン・ビーング  作者: マーブ
27/35

戦い

第32章



 「地球に向かった宇宙船が破壊された。遠距離探知機から消えた」


 「全て地球へ移動せよ」


 全ての敵宇宙船が、いっせいにワープして消えた。


 その頃、ジョニー達が乗っている古代宇宙船では、危険を知らせるアラームが鳴っていた。


 ジェリーが、

 「敵宇宙船団が月に現れたぞ!」


 するとジョニーは、

 「なに!」


 だが、ハルトは冷静に言った。


 「ジェリー、メインスクリーンに」


 メインスクリーンに映ったのは、数え切れないほどの敵宇宙船だった。


 月を覆い尽くしていた。


 3人はあまりの多さに、不安と恐怖を感じた。

 予想はしていたが、実際に自分の目で見ると、絶望的な数だ。


 「これを僕たちだけで、たたくのか?」


 ジェリーは無理だと、言わんばかりだった。


 ジェリーだけでなくジョニー、ハルトも同じように感じていた。

 目の前にある、圧倒的な敵宇宙船の数に、彼らの気持ちは大きく揺らいでいた。


 「無理だ。とても無理だ。あまりにも数が多すぎる!」

 ジョニーが言った。


 しかし、敵の動きは速かった。


 敵宇宙船から、無数の小型宇宙船が出てきた。

 そして、真っ直ぐ地球へ向かった。


 これを見ていたハルトが、 

 「あれには無人機が乗っているに違いない。それも大量の無人機だ! なんとか止めないと!」

 大声で叫んだ。


 ジョニーはロシアでの、殺りくを思い出した。


 「人間、全てを殺す気だ!」


 ジョニーの言うとおり、宇宙人は人間を地球から消すつもりだ。

 なぜ、人間を殺し、絶滅させるのかは分からない。その目的も不明だ。しかし、このまま見過ごすことは、決して出来ない。


 たとえ、絶望的な状況でもだ。


 「ハルト、攻撃だ! 小型宇宙船を叩き落とせ!」


 ジョニーに言われるまでもなく、ハルトは小型宇宙船をロックしていた。

 「発射!」


 初めて使った陽子パルス砲が、小型宇宙船に向け容赦なく発射された。


 小型宇宙船は次々に破壊されていったが、あまりにも数が多く、全てを破壊する事は出来ない。陽子パルス砲の軸線上には地球がある。この兵器を地球に向けて、発射することは出来ない。地上を破壊するからだ。破壊されなかった小型宇宙船は、次々と地球の大気に突入して行った。


 それを見ていたジョニーは、 

 「ダメか、敵宇宙船団に動きはあるか!」


 ジェリーが、

 「今のところ、動きはないようだ」


 敵宇宙船も見ていたはずだ。動きがないのはおかしい。敵は攻撃しているのを、見ているはずだ。こちらはすでに探知されている。


 なぜ、反撃してこない。

   

 ジョニーはそう思った。


 敵宇宙船の中では、

 「あの船はなんだ」


 「地球にはあのような宇宙船は無いはず」


 「ほかの星からやって来たものでしょう。地球にはあのような宇宙船を造る技術はまだ、ありません」


 「人間が作れるのはあの程度」


 画面に通信衛星を映し出した。


 「攻撃されたのだ、あれを破壊せよ」

 と言い、攻撃準備を始めた。


 「敵宇宙船に動きがある。高エネルギー反応あり、攻撃されるぞ!」


 ジェリーが言うと同時に、敵宇宙船団からいっせいに、無数の白いエネルギービームが発射された。


 「ハルト、シールドで耐えられるか?」

 ジェリーが迫り来るビームの塊を見ながら言った。


 「分からない、直撃するぞ! シールド最大」

 ハルトはシールドを最大レベルに上げた。


 「来るぞ! 衝撃にそなえろ!」

 ジェリーが言うと、三人は身構えた。


 そして古代宇宙船は、無数の光の束の中に消えた。


 「ハルト、シールドは大丈夫か!」

 激しく揺れる轟音の中、ジョニーが大声で言った。


 大型メインスクリーンは、目映い光を発していた。


 「ジェリー、メインスクリーンを切ってくれ! 計器類が何も見えない!」


 ハルトは後ろに座っているジェリーに大声で言った。


 ジェリーがメインスクリーンを切ると、操縦室は真っ暗になり、計器類と小型モニターだけが光っていた。


 その中で、

 「シールド50パーセントに低下、さらに低下している。このままじゃ、もたない!」

 ハルトが叫んだ。


 「ワープだ! ジェリー、どこでもいいから目標をセットしてくれ!」


 ジェリーは目の前に映っているモニターから、急いで恒星やスキャン出来る範囲で、物体が無いところを探した。


 ワープアウトポイントに物体があると、この船は終わりだ。


 「ここだ! ワープポイントOK」

 ジェリーのかけ声と共に、初めてのワープに入った。


 「ワープ」

 ジョニーが言った。


 前方のメインスクリーンが消えているので、外の様子は分からない。外部からの攻撃はやんだようだ。ワープすると同時に、激しい振動や轟音は消え去った。

どうやら、敵宇宙船から無事逃げることが出来た。それに体が少し軽いような気がする。

 ジョニーは船の破壊をまぬがれて安堵した。


 「ジェリー、前方のメインスクリーンを入れてくれ」


 ジョニーは外がどうなっているのか、知りたかった。


 人類史上、初めてのワープだからだ。


 ジェリーがメインスクリーンをオンにすると、

 「おお~」

 3人がうなった。


 恒星と思われる光の点が次々と通り過ぎて行く、地球から一番近い恒星でも、光の速度で8年かかる。この数十秒の間に地球から、かなり離れたようだ。


 「ワープアウトするぞ」


 ジェリーが言うと、星の流がゆっくりとなり、そして止まった。


 「ジェリー、ここはどこだ」

 ハルトがたずねた。


 ジェリーがあわてた様子で、

 「ええ~、ここは地球から50光年離れた所だ」


 これを聞いたハルトとジョニーは驚いた。

 ジェリー自身も驚いているようだった。


 しかし、人類初のワープに、感動している時間の余裕は3人にはなかった。

 今は遠く離れてしまった地球が、宇宙人の侵略を受けているのに違いない。


 「船の損害は」

 ジョニーが聞くと、


 「このモニターで見る限り、損傷はないようだ」

 ジェリーが前にある、小型モニターを見ながら言った。


 そのモニターには船体損傷の状況が、詳しく映っていた。


 「人々が殺される」

 ジョニーが独り言のように言った。


 その通りだ。


 無数に出てきた小型宇宙船を、全て破壊する事が出来なかった。そして、小型宇宙船が地球の大気中に突入するのを見た。ロシアで見たように、必ず人が殺される。


 宇宙人の目的は分からない。しかし、人間を一人残らず殺す事だけは、はっきり分かっていた。しかし、3人は行き詰まっていた。あれだけ多くの敵宇宙船を相手に、逃げることしか出来なかったからだ。


 「こうしている間にも無人ロボットが、人々を殺している。どうにかならないのか!」

 ジョニーは苛立っていた。





第33章



 地球では、人々による必死の抵抗が続いていた。


 ハルトの言ったように、核爆発で直接被害を受けなかった人達が、大勢生き残っていた。


 カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地付近では、さいわいにも核物質が付近に無かったため、基地が無傷で残っていた。


 兵士や民間人が武器を取り、突如、飛来してきた物体と交戦状態になっていた。


 「後ろに立つな!」

 兵士が叫んだ。


 ロケットランチャーから、発射されたロケット弾は物体に命中したが、物体は無傷だった。銃を持った男達がその物体を撃ったが、弾は物体に跳ね返された。


 そして、物体から兵士や民間人の区別無く、赤い光線が四方八方に発射された。


 建物の壁に隠れている者や、ぶ厚いコンクリートを盾にしていた人達は、コンクリートや、ぶ厚い壁を、粉々に破壊して貫通した光線に当たり、次々と殺されていった。


 残されたのは、人だと分からないくらい、バラバラにされた肉片だけだった。


 兵士や人々が手にした武器では、そこら中に浮いている物体に、傷一つ、与えることが出来なかった。


 人間が地球上から消え去るのは時間の問題だった。ジョニー、ハルト、ジェリー、地球が、人類が危ない。早く戻ってこい。




第34章



 「ジョニー、どうすればいいんだ」


 ジェリーが、嘆いていた。


 ジョニーも、ハルトも、気持ちはジェリーと同じだった。


 こうしている間にも、あの無人機で人々が殺されている。あの時、地球に向かった小型宇宙船の数は、無数にあった。問題は、あの無人機を操作している母船だ。

 しかし、母船と思われる船は、どれか分からない。敵宇宙船団のほとんどが、30キロメートルを超す大型船ばかりだ。どれも同じように見える。正確な数は分からないが、数百はいただろう。彼らはその敵宇宙船団の攻撃から、逃げるのが精一杯だった。

 地球を救うどころではなかった。


 「数には数か」

 ハルトがポツンと言った。


 ハルトは目の前に映っているBreak upと書かれた文字を見つめていた。

 そして、小型モニター上にあるそのボタンを押した。


 すると、前方のメインスクリーンの右端に、赤色でメッセージが出た。door open and Break up、船が少し揺れた。ハルトが押したボタンが赤く点滅しだした。彼らからは見えなかったが、船の中央部、右側面にある扉が開いていた。


 「なんだ、あれは!敵か!」


 ジェリーがメインスクリーンに映っている、多数の小型物体を見て言った。


 モニターの右には、多数の小さな物体が映っている。ここには敵はいないはずだ。その時、ハルトは目の前のモニターに釘付けになっていた。


 そして、

 「大丈夫。この船の兵器だ。こ、これは小型の無人兵器だ! それもこんなに大量に!」

 ハルトが興奮して言った。


 さらにモニターを見ながら、


 「これも全部、敵宇宙船を粉々にした、陽子パルス兵器を持っている! 156個もあるぞ!」

 と言うと、メインスクリーンに映っている小型の兵器が動き出した。


 「ハルト、何かやったのか?」

 ジョニーが聞くと、


 「ボタンを押した」

 不思議な顔をしながらハルトは言った。


 記憶力の良いハルトだったが、この船の教育装置で頭に直接、短時間で強制的に入れられたこの船の情報を、全て覚えることは、うまく出来ない。


 メインスクリーンをしばらく見ていたハルトが、

 「あれはどうやら、自立型だ!」

 思い出して言った。


 「敵と味方を見分けて自動的に、攻撃するように出来ている。今は敵がいないから探しているだけだ」

 とハルトは言った。


 この兵器のことは、すぐには思い出せなかったが、記憶には焼き付いていた。中には、決して使ってはならない兵器もあった。ジョニーも、その兵器を知っていた。

ジェリーには知らされていない。多分、知らない方がいいだろう。そんな恐ろし

い兵器も、この古代宇宙船にはあった。


 「ジェリー、この小型兵器を船外に出したままでワープ出来るか?」

 ジョニーがたずねると、


 「分からない。ワープフィールド内に、あれが留まってくれれば、出来ると思うが?」

 ジェリーは自信なさそうに答えた。


 「難しいと、言うことだな」

 ジョニーは何か、考えながら言った。


 しかし、ハルトにはジョニーの考えが分かっていた。


 この小型兵器を船外に出したままワープし、敵宇宙船の近くで、ワープアウトする。そしてこの兵器で先制攻撃をすれば、たとえ敵宇宙船の数が多くても、勝てそうな気がする。だが、ワープしてこの兵器をこの場所に残したり、ワープ中に壊すようなことがあってはいけない。ハルトはそう思っていた。


 ジョニーとハルトは考え込んだ。


 それを見て、

 「2人の考えていることは、よく分かる。この兵器を失うような危険な賭は出来ない」

 ジェリーがはっきりと言った。


 「しかし・・・・・・・」

 ジョニーが言いかけると、


 「時間がない。今、こうしている間にも、地球の人達が殺されている。いったん、小型兵器を収容しよう」

 ハルトは言った。


 「それじゃ収容するぞ」

 ハルトはSTOPボタンを押した。


 船外では右側面の扉が再び開くと、小型兵器はその中に入っていった。


 「それじゃ、やるか!」


 ジョニーが言うとジェリーが、

 「なるべく、敵との距離をとってワープアウトするほうがいいな」


 するとハルトが言った。

 「火星付近で、ワープアウトしよう」


 一方、ジョニーは、

 「離れすぎじゃないか?」

 と言ったが、


 「敵の火力は計り知れない。火星でも敵の射程に入っている可能性もある。それぐらいの距離はとった方がいいだろう」


 ジェリーの言い分が正しいようだと、ジョニーもハルトもジェリーの意見に賛成した。

 「そうだな、僕の考えは甘いようだ」

 ジョニーがジェリーに言った。


 ジェリーは亞空間ソナーを使って、ワープアウトポイントをスキャンし、火星付近にセットした。


 「ワープ準備OK、いつでも飛べるぞ!」


 ジェリーがゴーサインを出すと、ジョニーは何の迷いもなく、

 「ワープ!」

 と言うとワープ航法に入った。


 そして、

 「ワープアウトまで後、30秒」


 ジェリーはそう言うと、前方のメインスクリーンに、ワープアウトまでのカウントダウンを表示させた。


 彼ら3人は、恒星が流れ去って行くのを見ながら、反撃の準備をした。


 「ワープアウトまで5,4,3,2,1」


 ジェリーのカウントダウンが終わると、目の前に初めての見る、火星が現れた。

 そしてハルトはBreak upのボタンを押して小型兵器を、後方に展開させた。


 すると突然、前方から光の束がやって来た。

 「高エネルギー反応感知、危険です。危険です」

 コンピューターは繰り返し警告した。


 「まずい!」

 ハルトが言った。


 ジョニーは慌てて、火星の衛星フォボスの後ろに回ったが、後ろから追従して

きた、頼みの小型兵器は、次々と敵のビーム兵器にとらわれ、破壊されていった。


 だが、小型兵器は、彼らの船を守るために、敵のビームを受けていたのだ。


 「しまった!」

 ジェリーが破壊されいく、小型兵器を見て言った。


 敵宇宙船はジョニー達の船が、ワープアウトする場所を、あらかじめ探知していたようだ。直撃は小型兵器によって避けることが出来たが、半数近くの小型兵器を失ってしまった。


 彼らの大きなミスだった。


 火星の衛星フォボスは、敵のビーム兵器から、彼らを守ってくれたが、フォボスは粉々に吹き飛んでしまった。そして、破壊された小型兵器の残骸が、彼らの船の周り一面に浮いていた。


 だが、彼らは自分達の作戦の甘さを、悔やんでいる暇はなかった。次のビームが目前に迫って来ていた。もう隠れる衛星は近くにない。火星の裏に逃げ込む時間もなかった。


 「ハルト、シールドを!」


 ジョニーに言われるまでもなく、ハルトはシールドを最大出力にしていた。


 そして彼らの船は、ビームの直撃を受けた。


 激しく揺れる船内で、

 「大丈夫、耐えられる!」


 「シールドの低下なし!」

 上下左右に揺れる船内で、ハルトの声はジョニー、ジェリーには頼もしく聞こえた。


 しかし、

 「小型兵器、全て消滅」

 ジェリーが大声で言った。


 シールドは彼らが頼りにしていた、小型兵器までは守ってくれなかった。


 小型兵器は自らを盾にして、シールドの外側で、敵のビームを受け止めてくれたのだった。


 しかし、不思議なことに敵の攻撃は一度きりで、次の攻撃は無かった。ジョニー達にとっては幸運だった。


 頼りにしていた小型兵器を、全て失ってしまったジョニー達は、自分達の攻撃方法の甘さを感じていた。シールドと、衛星フォボス、そして、小型兵器のお陰で船の破壊だけは、かろうじて避けられた。


 さいわいにも、第二の攻撃がなかったが、


 「何か信号が入ってる」


 ジェリーは、モニターに映っている信号を見ながら言った。


 「信号をスピーカーに出してくれ」

 ジョニーが言った。


 スピーカーからは、意味不明の音が流れていた。


 何か、言葉のような感じだった。


 「ジェリー、何か言葉に聞こえる。解読は無理か?」

 ハルトに言われるまでもなく、ジェリーはAUTOと書かれたボタンを見つけ、そしてそのボタンを押した。 


 すると、

 「おまえ達は何者だ」


 モガモガという音から英語に変わった。


 「おまえ達は何者だ」

 英語で聞こえるとはいえ、ジョニー達は直感的に強い悪意を感じた。


 「おまえ達は何者だ。なぜ、我々の船を破壊した」


 ジョニー達は戸惑っていたが、

 「おまえ達こそ、何者だ!」

 ハルトがいきなり言った。


 それも荒々しい声で言った。


 「我々の船をなぜ、破壊した」

 悪意に満ちた声が言うと、


 ハルトが切り返した。

 「おまえ達はなぜ、地球人を殺す!」


 しかし、ハルトの質問は無視されたようだ。


 返事を待つこと10数分、なんの返答もなかったが、


 そして、

 「おまえ達はなぜ、この惑星に来た」


 コンピューターによって、英語に翻訳し、スピーカーから流れているが、それでも、感情のかけらもない、冷たい声に聞こえる。それにやはり、強い悪意も感じさせる。この相手に感情があるかないかは、別としてだ。


 どうやらジョニー達を、地球人と思っていないようだ。どこかの星から、やって来た訪問者と、勘違いしているらしい。


 だが、ジョニーが怒りをこめて言った。

 「俺たちは地球人だ!」


 敵の反応は早かった。

 「地球人の文明ではおまえ達の船を造ることは出来ない、ここに来た目的は何か」


 これを聞いたジェリーは、

 「やつらは前から地球を狙っているようだ」


 そしてジョニーは、

 「そうだな、あの口ぶりでは、地球のことはよく知っているようだ」

 ハルトもジョニー、ジェリーが言った通りに、感じた。


 「侵略の目的は何かはわからないが、多分、地球の資源だろう。それに強い悪意も感じる」


 ハルトの言った通りだ。

 地球の今までの歴史が、物語っている。


 人間が繰り返してきたことを今、宇宙人がやろうとしている。邪魔者は奴隷にされるか、皆殺しになるかだ。 


 今回は邪魔な人類は皆殺しになる番だった。

 これで人間が繰り返して起こしてきた戦争も、完全に終わる。


 地球外生命体の侵略によってだ。


 「おまえ達の船を破壊する」


 この通信の後、再び敵宇宙船はいっせいに高エネルギービームを発射した。


 「ジョニー、火星の裏に回れ、ビームがやって来る!」

 ジェリーはいち早く、高エネルギー反応を探知してジョニーに指示した。


 「ハルト、シールドを最大に、ここを突っ切るぞ!」


 目の前にある、粉々に砕けた衛星フォボスの中に、ジョニーは突っ込むつもりで言った。


 ワープで逃げるには、あまりにも時間がなかったからだ。


 だが、フォボスの残骸の中には、数キロメートルもある巨大な岩の塊もある。

 シールドで彼らの船が守られているとはいえ、こんな大きな岩の塊がある中に、突っ込んで行くのでは彼らも、無事ではすまない。


 しかし、ジョニーは何のためらいもなく、秒速5000キロという亞光速で突っ込んだ。


 ジョニーが方向を変えたとたんに、巨大な岩の塊が現れた。


 「ヤバイ! 衝突する!」

 ジョニーが叫んだ。


 だが、あまりにも大きすぎてよけることが出来ない。このままでは岩の塊に激突してしまう。


 「こ、これは・・・・・・・」


 ハルトの武器攻撃システムが、勝手に動き出した。


 目の前のモニター画面が、激しく動いている。


 そして船の前方から、青白い光が出たかと思うと、目の前にあった岩の塊が、粉々に砕けた。それから後は障害物が現れるたびに、その青白い光によって破壊していった。


 古代宇宙船が、まるで自分の意志を持ったかのように、目の前に立ちはだかる障害物を、次々と排除していった。


 船が無事に火星の裏側に着いたかと思うと、敵のビームが容赦なく、火星の表面に降り注いだ。火星はその丸い形を保っていたが、無残にも表面は、無数のクレーターに覆われていまった。


 「ハルト、今のは」


 ジョニーの額は、汗びっしょりだった。


 「ジョニー、僕にも分からない。勝手に、武器攻撃システムがやった」


 ジョニーはそれを聞くと、

 「この古代宇宙船には驚かされるな」


 次の瞬間、ジェリーが叫んだ。

 「敵宇宙船団がワープした!」


 「ワープアウトポイントはどこだ!」


 ジョニーの表情が変わった。

 「ここだ! こんな、近距離のワープが出来るのか!」


 ジェリーも敵と同じように、ワープアウトポイントを探知出来るようになっていたが、


 「でも、待てよ、ワープアウトは一カ所じゃないぞ!」


 ジェリーのモニターには、数百のワープアウトポイントが表示されていた。


 突如、メインスクリーンに、敵宇宙船の一隻が、前方にワープアウトして来たのが映った。


 目の前だ。


 「シールドそのまま、突っ切るぞ!」

 とジョニーは言うと、操縦桿を急いで前に倒した。


 すると、目の前に現れた巨大な宇宙船は、一瞬で粉々になった。

 武器攻撃システムによって破壊されたのだ。


 ハルトが目標をロックすることなく、自動でコンピュータが危険と判断して攻撃している。


 おびただしい破片の中、彼らの船は、破片を避けることなく突き進んだ。


 敵宇宙船団をかろうじて抜け出た時、目の前には地球があった。ジョニーが亜光速で突撃したからだ。


 火星から一気に地球まで来た。


 いつもの美しい地球の姿だったが、敵の無人ロボットによって今も、人々が殺されているだろう。地上には無人ロボットを、破壊出来る武器はない。


 生き残っている人達を助けなければならない。それには、無人ロボットをコントロールしている母船を、破壊しなければならない。

 彼らは気持ちだけが焦っていた。


 しかし、彼らは自分の船を守るのに精一杯だった。敵宇宙船の数が、あまりにも多過ぎたからだ。


 「皆の気持ちは分かるが、今、地球に行ってもどうにもならない。僕も今、すぐにも地球に戻って、無人ロボットを叩き潰したい。でも、無人ロボットは無数にいる。今はただ、敵宇宙船を全滅させることだけ考えよう。全滅させれば、無人ロボットのコントロール信号も無くなるだろう」


 ジョニーは美しい地球を背にして言った。


 ハルトも、ジェリーも、気持ちはジョニーと同じだ。これを聞いて、ハルトとジェリーは軽く頭をたてに振って、そうしようと言う気持ちを表した。


 そうしてる間にも、敵宇宙船団は彼らの船に向かっていた。

 彼らは追われる立場だ。


 「敵宇宙船、亜光速で接近中、到着まで後20秒」

 ジェリーが言った。


 ハルトは攻撃の準備を始めた。頼りにしていた小型兵器はもうない。悔しいと思いながら、敵宇宙船せん滅の新たな兵器をさがした。


 「19、18、17・・・・・・」

 ジェリーのカウントダウンが突然、止まった。


 すると、

 「こ、これは地球からの無線か?」


 ジェリーは多くの雑音の中、かすかだが、はっきりとした、地上からの無線をキャッチした。


 「ハルト、聞こえる? こちらE5KRC301カイヤ、ジョニー聞こえますか? こちらE5KRC301カイヤ、応答して!」

 かすがだが、聞こえる。


 カイヤの声だ。


 「ジェリー、こっちに切り替えてくれ!」

 ヘッドセットを付けながらハルトが言った。


 「周波数は51.2MHz」


 モニターを見ながらハルトに伝えた。


 「了解、51.2MHz、いつもの周波数だな」

 と言いながら、ハルトは周波数を51.2MHzに合わせた。


 そして、

 「カイヤ聞こえるか! こちらハルト! 応答せよ!」


 マイクに向かって、大きな声でハルトは呼んだ。


 「こちらカイヤ、ハルト! 聞こえるよ!」


 「カイヤ! こちらも良く聞こえる。どうぞ!」


 「ハルト、助けて! こっちは大変な事になってる!」


 「カイヤ、どうなってる!」


 「ハルト、変なロボットにみんな襲われてる! 殺されちゃうよ! 助けて!」


 ジェリーが会話に割って入った。


 「まもなく、敵宇宙船団が来るぞ!」

 彼らは緊張した。


 ハルトが、

 「カイヤ! 必ず助ける! 待ってろよ!」

 今は、それしか言えなかった。 


 そして、敵宇宙船がそこらじゅうから、現れた。

 またたく間に、彼らの船が敵宇宙船に囲まれた。


 「ヤバイ!」

 ジョニーの声だ。


 敵がいっせいに攻撃して来た。


 白く光るビームが、そこらじゅうから彼らの船に迫って来た。

 避けることはムリだ。


 「次元バースト波、発射!」

 攻撃システム担当のハルトが言った。


 すると、船全体からとてつもないエネルギー波が、発射された。


 そのエネルギー波は、船を中心にして球状に広がっていった。敵が発射したビームは、次々とそのエネルギー波に飲み込まれて無力化されていった。


 そしてそのエネルギー波は、敵宇宙船団をも包み込んだ。エネルギー波によって、敵宇宙船団にダメージを与えたが、破壊するにはいたらなかった。エネルギー波は広がるにつれ、弱くなっていくからだ。


 敵船団は健在だったが、不思議なことにしばらくの間、なんの動きもなかった。


 ジョニー達は次の攻撃に注意していたが、エネルギー波を発射した後、すぐには攻撃をしてこなかった。


 ジョニー達は不思議に思った。


 敵の攻撃がすぐに、始まらなかったからだ。


 「ジョニー、なぜ彼らは攻撃してこないんだ?」

 ジェリーが小型モニターの様子を見ながら言った。


 もちろん、メインスクリーンにも敵の動きはなかった。


 「ジョニー、これはもしかして」

 ハルトが何かを言おうとした。


 「そうだな、僕も今、考えていた」

 ジョニーとハルトは、何を考えているのだろう。


 ジョニーとハルトが考えていることを、ジェリーが言い当てた。

 「これも全部、無人船なのか?」


 急いでハルトはマイクを握った。

 「ガルシア、まだ、聞こえているか、どうぞ!」


 しかし、返事はなかった。


 この船が発射したエネルギー波が地球に、影響して通信が出来ないのかどうかは、よく分からなかった。


 すると、

 「通信が回復した」

 ジェリーが言った。


 ハルトはすぐに、

 「ガルシア、聞こえるか! どうぞ!」


 雑音だらけだったが、

 「ハルト、聞こえるよ! ロボットが動かなくなったよ!」


 ハルトは大声で、

 「分かった、ガルシア、でもすぐに動き出す。地下室に隠れろ! 了解したか!」


 「了解、ハルト、地下室に隠れるどうぞ!」


 「ガルシア、良く聞けよ。僕たちは元気だ。宇宙船も大丈夫。また、呼ぶから無線機の電池を節約してくれ、了解したか!」


 「了解、ハルト、また、必ず呼んでよ!」


 「それじゃ、切るよ。ガルシア、生き延びてくれ!」


 雑音がしだいに大きくなり、ガルシアの声が聞こえなくなった。


 そしてハルトが振り向くと、

 「あの敵宇宙船も全部、無人船だ。地球との無線は回復したが、僕たちが放ったエネルギー波は、まだまだこの宇宙空間に影響を及ぼしている。敵をたたくなら、今しかない!」



 敵宇宙船団は宇宙空間に漂い、まだ動く様子がなかった。ジェリーが言った通り、あの宇宙船団は何らかの信号を受け、地上の無人ロボットと同じように、動いていたようだ。


 破壊するなら、今だ。


 ハルトは素早く敵宇宙船をロックした。モニターを見ていると、ロックした数が359となっている。


 あまりの多さに、

 「なんと、359隻もあるぞ!」


 ジョニーとジェリーはハルトの言葉に驚いたが、

 「ハルト、陽子パルス砲で連続攻撃だ! 軸線上に絶対に、地球を入れるなよ!」


 ジョニーはそう言うと、船をゆっくりと発進させた。


 敵宇宙船が沈黙している間に、全てを破壊しなければならない。どれが、地球にいる無人ロボットを、コントロールしている、母船かは全く分からない。どれも同じ船に見える。とにかく、今は、全てを破壊しなければならない。ハルトは急いだ。


 すると、ハルトの気持ちがこの船に通じたのか、今まで船の下からだけだったパルス陽子砲が、上からも、左右からも、発射されるようになっていた。隠されていた砲門が全て開かれたのだ。


 「全砲門、オープン」

 コンピュータが言った。


 その時、ハルトは思った。

 この船は、自分の心を読んでいる。


 モニターには、次々と敵宇宙船がロックされ、破壊している様子が映っていた。


 地球に向けて発射する砲門は一つもなかった。そして後、数10隻というところで、敵宇宙船をコントロールしている信号が戻ったのだろう。ワープして消え去った。


 だが、それだけでは終わらせなかった。


 ジェリーはモニターを見ていて、敵のワープアウトポイントをじっと待った。

 なぜなら、彼らは必ず戻って来るからだ。敵宇宙船の母星を叩かなければと思った。


 ジョニーとハルトはジェリーの反応を待った。彼らの船の周りには、完全に破壊された、敵宇宙船の残骸が漂っていた。


 敵宇宙船はなかなかワープアウトしなかった。10分が過ぎ、そして1時間を過ぎた。

 敵宇宙船のワープ状態を前方の大型スクリーンに映していた。


 スクリーンを見ていたジョニーが口を開いた。

 「これは近くではないな」


 これを聞くと、ハルトとジェリーは厳しい表情になった。



 モニターを見つめていたジェリーが、

 「あっ」

 と言った。


 モニターから、敵宇宙船の軌跡が消えてしまったからだ。


 そしてジェリーは皆に言った。

 「敵宇宙船を最後まで追うことが出来なかった。あまりにも遠すぎる」


 するとジョニーは、

 「どれくらい」


 それに対しジェリーは、

 「遠い、すごく遠い。今、言えるのは少なくても、300万光年以上はある。僕達の住んでいる銀河系ではない。よく知っているアンドロメダ銀河よりも、もっと遠い所だ」


 ジェリーの思いがけない発言に、ジョニーとハルトは何も言えなかった。


 当然のことだろう。二人にとっては、初めて宇宙空間に出たばかりだ。地球では、何年も訓練を受けた、特別なエリートだけが行ける空間だ。ましてや、人類は火星にさえ到達していない。


 ワープ技術は映画の世界での話だ。


 彼らの理解出来る速度は、せいぜい秒速5Kmまでだ。それがいきなり、光の速度を超えた世界に、入ってしまった。今までの常識ではもう、何も通じない世界に、なってしまったのだ。


 だが、常識をはるかに超えた世界でも、正しい判断をしなければならない。それが出来ないと、彼ら自身も、地球の人々も、決して生きて行く事は出来ない。


 過酷な運命が、彼らを待っている。

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