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ヒューマン・ビーング  作者: マーブ
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永遠の時と空

第12章



 地球上で、核爆発が始まってから、3日経った。


 地上で生き残っている人間は、少ないだろう。


 地球は分厚い、死の灰で覆われて、陸も海も見えない。


 お互いを無慈悲に殺してしまう、核兵器を作った人類への罰としか、考えられない。


 人類は自分自身の首を、自分の手で、しめてしまったのだ。


 残ったのは、永遠と思える時間、放射線を出し続ける物質だけだった。



第13章



 「機長、前方に何か見えませんか?」


 副操縦士が夕闇の中に、薄っすらと前方を覆う何かを見ていた。

 機長はレーダーを見て、首をかしげた。


 「何か全体的に映っているな、レーダーの故障か?」


 機長の言う通り、レーダー画面は一面に何かがあると、光っていた。

 しかし、普通こんなことは、あり得ない。


 副操縦士は無線で、


 「こちらニュージーランド航空705便、オークランド管制塔、レーダーと、目視で、前方に何かあるように見えるのですが、そちらで確認出来ますかどうぞ」

 これを聞いて一人の管制官が答えた。


 「こちらオークランド管制室、こちらのレーダーにも何か映っていますが、こちらで確認しますどうぞ」


 この時、オークランド管制室では、大混乱が起こっていた。


 主任管制官が、

 「これは一体、何なんだ!」

 レーダー画面は一面に光っていた。


 どのレーダー画面にも同じものが、映っていた。

 何かがあるのだ。


 それも、ニュージーランドを囲うように、全方位にわたって、何かが映っていた。


 そして主任管制官は電話を取り、


 「こちらはオークランド管制室ですが、レーダー全体に反応があるのですが、そちらクライストチャーチではどうですか?」


 するとクライストチャーチ空港の管制官が、


 「こちらも同じように、レーダー全体に何かが映っています。現在、これがレーダーの故障なのかどうか調査中です」


 クライストチャーチでも、この事態に慌てている様子が、電話を通して聞こえてくる。


 電話している間でも、

 「こちら705便、レーダー上に映っている、ものとの距離300キロメートル、このまま飛行して大丈夫ですか? 後30分で到達します。どうぞ」


 これを聞いた管制官が、電話をしている、隣の主任管制官に向かって、


 「705便が、このまま飛行して、いいかどうか聞いていますが」


 「ちょっと、待ってくれ」


 電話を持っている、主任管制官が苛立ちながら言った。


 電話の向こうでは、


 「はい、分かりました。そう言う事で対処いたします」


 向こうの管制官が、別の電話で、話しているのが聞こえる。

 すると、別の声で、


 「お待たせしました。私はクライストチャーチの主任管制官です。航空局も同じ現象が起こっているようで、一時的な、電波障害と言う判断を、もらいました。そう言う事で対処して下さい。正式に航空局から通達の電話が、入ると思います」


 航空局に電話していた、クライストチャーチの主任管制官が言った。


 「分かりました。そう言う措置で対応してます。ありがとうございました」


 そして電話を下ろした。


 「航空局から、電波障害であると判断が降りました。705便はそのまま飛行を続行してよし」


 主任管制官は、705便からの無線を受けた、管制官に言った。


 「大丈夫ですね?」

 主任管制官に念を押した。


 「大丈夫です。航空局がそう言いましたから」

 主任管制官は何の疑いも持たず、言い切った。


 管制室では、イエスかノーのはっきりとした判断が必要だ。あいまいな判断は事故につながるからだ。


 「705便、こちらオークランド管制室、航空局から原因は電波障害で、あるとの判断が降りました。よって、そのまま注意して、飛行を続行して下さい。どうぞ」


 「了解しました。このままのコースを維持して、飛行します、オークランド管制官、ありがとう」


 副操縦士は機長に、

 「このまま飛行しましょう」

 と言った。


 機長はオートパイロットをオンにして、イギリスに向け飛行計画書通りの、コースをコンピューターに入力した。


 数分、そのまま飛び続けていたが、やがて、機長と副操縦士は前方を、注目し始めた。


 「機、機長、やはり何か見えますね?」


 副操縦士がそう言うと、


 「そ、そうだな、何か前方に緑色の何かが・・・・・・」


 機長もそう言い、レーダーを再確認した。


 「レーダーに強いエコーが映ってるぞ!」


 機長が副操縦士に言うと、警告音と共に、


 「衝突警報、衝突警報、回避、回避」


 と鳴り出した。


 もう、疑う余地はなかった。

 今ははっきりと、緑色の壁が前方に見える。

 電波障害でも幻覚でもない。


 このままでは衝突する。


 「機、機長、ぶつかる!」

 副操縦士が叫んだ。


 機長は必死になって、操縦桿を回した。

 しかし、旋回の途中で、飛行機は緑色の壁に接触し、左翼を失って、キリモミ状態で海面に墜落した。


 オークランドの管制官は、レーダーで705便を追跡していたが、電波障害だと言われた、エコー画面の手前で、705便の識別信号を見失った。


 「消、消えた!」


 「こちらオークランド管制室、ニュージーランド航空705便応答せよ!」


 管制官は繰り返し呼んだ。


 「こちらオークランド管制室、ニュージーランド航空705便応答せよ!」


 応答がない。


 隣の管制官を見たが、両手を開いて、分からないと言っている。レーダーから、機影がなくなると言う事は、墜落以外、考えられない。


 「主任管制官、705便の識別信号が、例のエコーの手前で、消えてしまいました。無線で呼びましたが、応答がありません。墜落したのでしょうか!」


 そう言われて、主任管制官は、自ら、レーダー画面を見たが、705便の識別信号が消えている。


 主任管制官は慌ててマイクを口に当て、


 「こちらオークランド管制室、ニュージーランド705便、応答せよ!」


 ノイズしか聞こえない。


 「705便! 応答せよ!」


 「ニュージーランド航空705便! 応答せよ!」


 主任管制官は耳を済まして待っていたが、応答がない、額から汗が流れ落ちる。

 この管制室にいる管制官、全員が応答を待った。


 しかし、応答はなかった。


 そして主任管制官は、緊急時専用の赤電話を取った。


 「ニュージーランド航空705便が墜落したようです! 救助を要請します!」


 この電話の後、航空局によってフライトは、全面禁止された。

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