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河図石語  作者: nats_show
GW編
15/35

(三) 浜中準

 昨日、俺は髪を切った。

 家の近くのなじみの店だ。椅子に座りさえすれば、何も言わずに望み通り………のはずだったが、気がつくとカリアゲくんだった。

 ファックユー。

 そもそも髪はなぜ伸びるのか。伸びなければ散髪に失敗することもなく、ハイエナのような連中に笑いの種を提供することもない。しかし実際には、髪が伸びなくなった時は俺がこの世から消える時だ。いや、俺がこの世から消えてもまだ、わずかには伸び続けるらしい。むごい話じゃないか。


「おはよう準ちゃん」

「うむ、おはようナオナオ」

「さすが準ちゃんは早いねー」


 本日の天気は快晴の予定。予想気温も五月下旬並み。まばらな人混みの中で一人立つ俺は、八甲田山の誰かのように凛々しい目印だ。

 そこに最初に現れたナオナオは、薄いカーディガンにスカートという「動きやすい服装」かどうかの境界線の格好で、少し遠慮気味にやってきた。

 ナオナオは、佐多山のジュンの異名をとる俺様とさして変わらない距離なのに、下宿している軟弱者だ。俺様の姿を見るたびに、敗北者としての自分に気づかされるのだ。


「庭っちは間に合うと思う?」

「何を言うナオナオ、庭っちが信用できないとでも言うのか!?」

「…できるとでも?」

「うーむ」


 敗北感を他者に転化しようとするナオナオの腹黒い策謀を、俺は一言で切り捨てた。俺は友を守ったのだ。愛の勇者だった。

 そして三十分後、ブチ切れる宮サマの隣で俺は静かに怒りを抑えていた。奴は俺を裏切るのが趣味。乗せられてはいけないのだ…。

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