(二) 宮海博美
ゴールデンウィークは憂鬱な一週間。たとえば、毎日が日曜日みたいな一人暮らしにとって、本物の日曜日が苦痛であるように。
そんな私に、欲しかった予定を運んできたのはいつもの男二人だった。
片方は最初の提案者、そしてもう一方は私の同類。同類の男は私の心の内を見透かすように、「もう人数に入れてある」と言った。私は一瞬ムッとしかけて、でも黙ってうなづいた。
同類の心の内だって、私は知っている。
その幽かな優越感が、時々は私を支えてくれる。
「この扉のガタガタ揺れる音がいいんだよ」
「へぇ」
「ほぉ」
とまぁ、どうでもいい回想はなかったことにして。
今日は「合宿」の日。
「合宿」。提案者のバカ中準はそう言った。確かにそう言った。たぶんあのバカは一泊するつもりだった。
「いいかミエミエ、もうすぐ見えるのだがなぁ」
「美恵ちゃんはそれでいいの?」
「えーと、……あんまり良くないです」
片道一時間の行き先は、直美の実家より近い。そもそもバカと一緒に佐田山ツアーなら、たっぷり二時間。その程度の距離感覚が分からないはずもないのに、真顔で泊まろうと言い出すバカの頭が、まるで理解できなかった。当然のように却下した。
「あれ、あれが古墳だ」
「あそこですか?」
「準ちゃんって詳しいね」
そうして電車に乗って、既に三十分を過ぎた。
くすんだ色合いの住宅地を抜け、川を二つ渡って、遮るもののない日射しが緑の景色を少しだけ霞ませている。私は流れ行く線路を糸のように辿りながら、ちょっとだけ後悔しはじめている。
子供の頃の浜中準にとって、一時間もかかるそこは立派な旅行先だった。地元民だからこその感覚。そんなものを持ち合わせるはずもない私は、余所者なんだと自己主張しただけなのだ。
「美恵ちゃんは、もっと行きたいところもあったでしょ?」
「そういや、まだ引っ越して一ヶ月だよなぁ」
「いえ…、どこに行ったらいいかも分かりませんし…」
「ふぅむ」
そんな物思いにふけっていたら、話題が変わったようだ。
部長の「ふぅむ」が響く。それは危険な合図。
壮大な無駄話の合図。
「まずは檀森寺だな」
「檀森寺?」
「この町の通を自認するなら外せない名所だ。まだ素人の相馬さんには分からないだろうが…」
「はぁ」
過去の一瞬たりとも通だったことのない余所者の部長が、くだらない名所ばかり嬉々として語り続ける。そんな彼は……、確かに部長にふさわしいと思う。
もちろん今日の行き先も相当にくだらない。提案者をさしおいて熱く語る部長を、私と直美はどんな目で見ているだろう。
「それで…」
「待て庭っち! 右に見えて来たぞ」
「何が?」
「県民の森だ!」
並んで座る三人を観客に繰り広げられる、男二名の不毛なせめぎ合い。この空間で目を輝かせている相馬さんは、なるほど大型新人だ。
だけど………、三人の中では一番目を輝かせてないのも相馬さん。
だってね。




