フリーダム
この国は腐っている。私は小さい頃からそう感じていた。王によれば「すべての民は平等でなければならない」とのことらしく、国策により国民たちは徹底した管理をされていた。その顕著な例として、国民は生まれた時に国が指定した将来へと決められたレールを歩まなければならないのだ。例えばだが、「医者になれ」そう国に言われれば小・中・高・大と学生の間ずっと医者になるためだけの勉強をすることになる。他にも「会社を経営しろ」と言われたり、「弁護士になれ」と言われたりもする。それらも同じように決められたレールの上を歩み続けなければならない。当然「社員となれ」と言われる人間もいる。こういった専門的な知識をあまり必要としない人間は適当な教育を受け、決められた就職先へと出向く。しかし、これでは全く平等な感じがしないと思う。そう、賃金に普通であれば差が出るはずだ。私は他国ではそうであると学んでいる。だが安心して欲しい。この国では賃金が存在しない。全て現物支給だ。しかもどの職も全く同じである。そのため金銭による格差は全く発生しない。むしろ医者や弁護士になったほうが、多忙であるためこの国では不幸だといえる。ただし忙しい職ほど、その分名誉が得られると王は考えているため平等だとしている。
そんなこの国、名前はキングダムという。とても安易な名前だ。そんな安易な名前を変えるといって半年ほど前、王国の中心にある広場に住民が集められた。それから数刻ほど後、十人ほどの兵に囲まれ王が現れた。そのまま広場の中心へと進み、一呼吸置いて話し始めた。
「皆の衆、聞いて欲しい」
スピーカーから王の声が広場中に響き渡る。
「この国は建国以来、完全な管理の上成り立ってきた。……しかし、それも今日で終わりにしようと思う」
王の突然の言葉に広場に集まった住民たちは一斉にどよめく。
「静まれい! 王の御前であるぞ!」
それを鎮めるべく兵士が怒鳴る。
「昨夜、近隣の国との会談があった。そこで話し合いをした結果、近隣の国同士の流通を盛んにしようとの事になった」
王の話を住民は静かに聞く。
「しかし、流通を盛んにするためには今以上に消費を増やさなければならない。そのためにはこの国にも金銭を作らなければならないという結論が出たのだ」
「それでは我々は消費の自由を得られるということなのですか!?」
突如、興奮気味に青年が質問を投げかけた。
「貴様! 王が話している最中であるぞ!」
兵がまたも怒鳴る。
「よいよい。青年よ君の質問は半分正解である」
青年が首を傾げる。
「私は中途半端が嫌いでな。自由にするならばとことんしようと思っている」
王は大きく息を吐き、吸った。
「今ここに、我が国の名をフリーダムとし、全国民の完全なる自由を宣言する!」
広場は一瞬沈黙に包まれ、次の瞬間には歓声に包まれた。
……それから一ヶ月後。
国はあの宣言の後すぐさま紙幣を作成。労働による手当を現物支給ではなく金銭とした。また職業ごとの勤務時間や報酬も市民に話しあわせ決めさせた。
その結果この国は流通と消費が盛んとなり昔に比べれば格段に栄えた。しかし、完全なる自由の弊害も生まれた。格差が生まれたのである。職業ごとの賃金に差が出てくれば当然のことである。しかも、その職に対してのみの勉強しかしてこなかった人しかいないため転職もできないことも大きな要因である。そうした格差は犯罪を生んだ。略奪、殺人とにかく表は華やかになったぶん裏では毎日のように悲惨なことが起きていた。
私は今考えさせられている。自由とは何なのかと。私は昔の腐りきったような国が嫌いだった。
しかし、今の表と裏がはっきりと別れたこの国も嫌いである。ではいったい何が一番良いのか、自由と束縛これらの関係性について深く深く悩まされるのだ。
初めて完成させた作品?
製作時間40分。とりあえず途中からつまらないことは確実にわかっていたが、完成させることを目標とした。
こんな駄文を読んでいただき誠にありがとうございました。