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逃げて決戦


 次が多分最終話かな、と思います。


 胎動する紫の壁に、大型モンスターが群雄闊歩するさまは、今までの魔王ダンジョンと同じ。


 しかし、今回ぼくが出た所は違う所だった。


 巨人のモンスターはおらず、変わりに、ドラゴンのようなモンスターがたくさんいる。


 前腕部が翼の飛竜(ワイバーン)に、体のところどころが燃えている炎龍(サラマンダー)。そして、腕が一切ない、神龍みたいな緑色の龍。


 他にも龍がたくさん。


 もうやだ。


 帰りたい。


 しかも。


 炎龍と目が合った。


 きえぇぇぇぇぇえ!


 こら! 鳴き声あげるな! ほら、他の龍にも気付かれちゃったじゃないか……。


 炎龍があげた鳴き声により、周りにいた全部の龍がこちらを向いて。


「ぎやぁぁぁぁAaaaAaaアアアァァぁああAAあAAああAaa!」


 ぼくは、逃げ出した。


 相変わらず選択肢は逃げる一択さ☆


 足元で炎の塊が()ぜる。


 それをジャンプしてかわすが、ジャンプした先には神龍の口。


 スキル???を発動すると、空中で体が捻られ、神龍の口の横ギリギリを通過して、地面に着地する。


 着地の勢いそのままに、龍達(ドラゴンズ)に背を向けて、走る。


 ピィィィィィイイイイイイィイィィイ!


 鳴き声と共に、飛竜(ワイバーン)が突っ込んでくる。


 膝を抱えて横に飛ぶ事でそれを回避、地面に転がる。


 ゾクッ


 背筋を粟立たせる怖気を感じ、その場から転がる。


 転がって起き上がるついでにぼくのもといた場所を見やると、そこには氷柱が出来ていた。


 白龍(スノードラゴン)までいますか……。


 死にたくない! それだけを心のよりどころに、ぼくは走る。


 ときに樹龍(フェアリードラゴン)(つた)のムチをかわし、ときに雷光龍(ライジングドラゴン)の雷を地面に転がって避けたりしつつ、ぼくは走り続けた。


 すると。


 知らないあいだに、魔王の間に閉じ込められていた。


『よくぞここまで来たな、小童(こわっぱ)よ! 「ピイイィィィィィイイィィ!」れがたかが小「キエェェェェエエエ!」う! だがハンデは「クルィィィィィイィイ!」さあ! かかって「キシャアアァァァッァアアアァア!」 先手は貴様にや「うわああああああぁぁぁあああわっわwぁああ!」!』


 魔王の言葉なんて聞いている余裕無かった。魔王が気の毒だ……。


 でも、ぼくにも悠長に魔王の言葉を聞いている余裕が無かった。


 なぜかって? そんなの見たら分かるだろう? 総勢三十くらいの龍達(ドラゴンズ)に襲われてるんだよ!


 毒龍(ポイズンドラゴン)の毒の霧をよけて、魔王の後ろに駆け込む。


 魔王の大きさは大体七メートルくらい。龍で比べると炎龍(サラマンダー)と同じくらい。


 魔王は確か、先手は譲る、といったはずだ。


 ならば、遠慮なく貰っちゃってください。


 三十もの龍の攻撃全部をね!


魔王リーストガリア HP13902/56000 MP∞ At4090 De2010 Sp480


 うわ、HP超減ってる!


 龍達すごい。


『ぬう、なかなかやるな(キシャァッァァア)小童(こわっぱ)! 我からもいかせて貰うぞ(ピエェェェェエエエエ)!」


 ドラゴンの声が被っているが、今度は魔王の下にいる為に、かろうじて声が聞き取れる。


 魔王が魔法を詠唱。


 闇色の塊がうまれ、ぼくに真正面から突っ込んでくる。


 確実にぼくより大きいそれを、地面との差約三十センチのところをスライディングで潜り抜けた。


 闇の塊は魔王の足に命中。


 魔王のHPが減少する。


 これはもしかしたら倒せるんじゃない? と、一瞬足を止めたのがいけなかった。


 ぼくの元に龍達の攻撃が集中する。


 まず一番に飛び込んできたのは飛竜(ワイバーン)


 こいつの攻撃は体当たり主体。自身のスピードに任せて突っ込んでくる。


 スキル???を発動し、膝を抱えてて前方に飛び、着地する。飛竜の頭の上に。


 そのまま飛竜の翼を掴み、振り落とされないように力をこめる。


 この手が離れたらぼくは死ぬんだ。


 そう思った。


          ☆☆☆


「よっ! ほっ!」


 飛竜の操作方法を覚えた。


 右の翼を掴んで動きを止めれば、右に曲がる。


 左を掴むと反対に。


 依然飛竜はぼくをふりおとそうと必死だが、ぼくも命がかかっている。必死なんだ。



 魔王の残りHPは3092/56000。


 龍達の攻撃は、開始当初より魔王に当たる事はなくなったものの、それでもぼくの飛竜さばきで、着々とHPを減らしていく。


 と。


『我、この世界の(ことわり)を改変する。光と闇を繋ぎ、世界を闇の支配化に、光は死に絶える―――』


 魔王が魔法の詠唱を始める。


『そして残った世界には、光の傷跡が残り、人々は闇に恐れおののく―――』


 待って! なんか超強そうな魔法が来た!


『神々よ、我は代償に魂を払わん。この身はてようと、世界を光の名の下の正義という傲慢(ごうまん)から解き放とう―――』


 魔王の声が滔々(とうとう)ととつむがれ続ける。


 何故魔王の声がこうもはっきりと聞こえるのか。


 飛竜の体の上から、眼下を見下ろして分かった。


 龍が動きを止めている。


 飛竜でさえも、今は空中で旋回しているだけでぼくを振り落とそうとしない。


『|《深淵に戻す魔法》《アビス・リターンズ・マジック》!』


 この東京ドームと同じくらいの大きさの魔王の間の光源(紫や黄色、赤の水晶)が光を失う。


 そして、今度は床が光を放ち始める。


 光としては明らかにおかしい黒い光。


 水晶は光を失い、大地は漆黒に輝く。


 ヤバイにおいがする……。


 下手すりゃ龍達もろともぼくも死ぬ。


 死にたくない。ぼくは再度そう思った。


 そして。


 黒の輝きが最高潮に達した時、光が凄い速度でせりあがり始めた。


 魔王をのみ込んで。炎龍ものみ込んで。樹龍ものみ込んで。雷光龍も毒龍も白龍も黒龍も―――


 全てを巻き込んで、黒い光は輝き続ける。


 当たれば即死の光。


 「死にたくない」から「死ぬわけにはいかない」、に認識が変わる。


 ぼくは呆けていた頭を振り、考える。


 現在、龍達を飲み込んだ部分に穴が空いている黒い光は高さが100メートルくらいにいるぼく――と飛竜――に迫ってくる。


「ぼくと一緒にあの黒い光に巻き込まれて死ぬか、それとも二人一緒に逃げ延びるのか、どっちがいい?」


 通じるかどうかは分からないが、飛竜に叫ぶ。


 ピェェェェエエェェエ!


 飛竜は一声鳴くと、ぼくの目を見て、頷くような仕草をする。


 そして、黒い光にあいた穴の中、死の待ち受ける場所へと、飛び込んだ。


          ☆☆☆


 結果、ぼくと飛竜は死ななかった。


 穴に入る で正解だったのだ。


 黒い光に空いた穴を下まで飛んでいくと、黒の光に身を焦がす龍がいた。


 この龍のおかげでぼくと飛竜は助かっているのだ。


 軽く黙祷。


 そして漆黒の光はせりあがりきって。


 唐突に光は消えた。


 後に残ったのは、ぼくと飛竜と。そして、魔王。


 水晶がまた光を放ち始める。


 魔王のHPは残り1。


 代償に魂を払うとか言ってたんだ、当たり前か。


 しかし、あと一が減らせない。


 なぜなら。


 ぼくにはもとより逃げるしか選択肢がなく、飛竜(ワイバーン)には体当たりしかない。


 魔王は瘴気を放っており、ぶつかったらダメージを喰らいそうだ。


「ねえ、ぼくにまだ見せてない技とかないの?」


 飛竜に聞くと、飛竜が若干笑ったようにぼくは感じた。確かにぼくは飛竜の笑い声を聞いたんだ。


 コォォォォぁあぁぁッァアアアアアッッ!!!


 飛竜の口元に気流が渦巻き、それが放たれた。


 技名を確認すると、飛竜の息吹(ワイバーンブレス)となっている。


飛竜の息吹(ワイバーンブレス)《暴風を擬似的に作り出し、敵にぶつける事で対象を切り刻む凶悪な魔法》


 それは、魔王であって魔王でない魔王の抜け殻を吹き飛ばし、魔王を倒した。









              「ぼくの、いや、ぼく達の勝利だ!」




 やっと魔王討伐だ!


 勝ったぜ!


 次で終わらせます、多分。

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