逃げて共闘
第三話です。
多分五話が最終話になるかな、と思います。
あと、毎日八時に予約投稿してます。
一話からずっとそうなんですけど。
そしてぼくは、目を覚ました。
システムウィンドウ(ゲーム内の携帯みたいなもの)を開き、現在時刻を確認する。
うん、よく寝た。
樹のハンモックから降り、一度大きく伸びをする。
「んーっ」
よし、とりあえずフィールドに行こう。
☆☆☆
「あの、うちのパーティに入りませんか? 今、頭数が欲しくて…」
フィールドに出て複数の男女プレイヤーがいるグループから声をかけられた。
ぼくとしては別に断る理由も無い為、いいよー、と適当に返事を返し。
「で、どこに行くの?」
「このフィールドの奥の森、『クドの森』を抜けた先の、『ユック洞窟』が今攻略の最先端なんですけど、ここのボスが無茶苦茶強くて、私達のギルドからの死者も二桁を突破しました……」
ぼくももしかしたら死ぬんじゃないの? と思ったけど、よく考えればぼくに攻撃は当たらないから大丈夫。
「じゃあ、早速行こうか」
「あ、その前に、あなたの職業やお名前を――――」
☆☆☆
『ユック洞窟』に到着。
森を進む間は、まるでお姫様をガードするかのようにぼくを丁重に扱ってくれたパーティの名前は『星天の守護者』。頼もしいねぇ。
ここ『ユック洞窟』は、天井は高く、ところどころから水晶が飛び出しているのが特徴で、鍾乳洞もさがせばあるんだそうな。見たいな、是非。
森はジメッとしてたけど(ハンモックの上は別で、快適な温度)、中に入ったらヒンヤリしてた。上着欲しいな、と思ってたら、パーティのリーダーっぽい人がくれた。優しー。
とりあえず、初めての装備品をゲットしたので、装備してみる。
革のジャケット《肌寒い日にもこれがあれば寒くない。De+3》
「遠慮しないで下さいね、それは街に行けば格安で売ってますので」
今まで初期装備のみで戦ってたぼくって一体……。
「この先に、ボスがいますので気をつけてください」
しばらく歩いていると、リーダーっぽいプレイヤーの人が言う。
空気が急に冷え込み、さっきまでのものと一変した。
自然、ぼくの気も引き締まった。
寝ぼけで靄がかかったようだった脳も、しゃきっとする。
「この先にボスがいるんだよね? どんなの?」
「一言で言いあらわすと、あれはそう、カニ―――巨大なカニです」
「ふうん。じゃあ、これはボスじゃないんだよね?」
「え? どれですか?」
ぼくの後ろからさっきからついてきているタコみたいなモンスター。
周りの雑魚モンスターと違うのは、その大きさ。
雑魚モンスターは自転車くらいが最大だけど、このタコ、高さが二階建ての建物くらい……ってうわ!
急に攻撃してきた!
「一度ここから離脱して形成を立て直せ!」
リーダーの号令で、パーティが散開する。
えーっと、ぼくは、あれ? 逃げている内にボス部屋まで辿り着いて…? タコも僕について来てるみたいだし……。
しかも、タコとぼくが部屋に入った瞬間に部屋のドアが閉まった。
………………いやいやいや。ボスみたいなタコと、ボスであるカニ、そしてぼくだけしかこの部屋にいないんだけど。
お兄さん達ー? どこ行っちゃったのさー!?
この部屋、どうやらこいつらを倒さないと出られないようである。
この部屋は大体学校の体育館と同じくらい。天井は鍾乳石が垂れ下がり、鍾乳洞を想像すれば一発でここがヒットすると思う。
そして、地面は一センチくらい水が侵食しており、ちょっと動きづらい。
一番目立つ者は、鍾乳洞の奥に鎮座ましましているのがデカイカニ。タコと同じくらいある。
シザーキング HP120 MP39 At29 De18 Sp48
たこ HP132 MP27 At34 De30 Sp12
カニみたいなのがシザーキング。巨大タコはそのまんまたこ。えらい適当なネーミングである。
とりあえず、そんな事を考えながら、シザ-キングが放ってくるハサミ攻撃をよける。
そのままの勢いでカニの腹の下を走り抜ける。
すると、ぼくのうしろをたこが追ってきて、カニの下に潜り込んだ。そして絡まる。
うわ…気持ち悪…。
カニとたこが絡まるさまは、それはそれは気持ち悪かった。
とりあえず、それに近づいてみる。
ブゥン!
あっぶない! とっさにスキル???でかわしたけど今のたこの足を振り下ろす攻撃はやばかった。体のぎりぎりをかすめていく。
そして、ぼくをかすめていったたこの足は、カニの足にあたり、そしてカニの足がもげた。
見ると、シザーキングのHPが減っている。
ごっそり一割。
これは使える! と判断したぼくは、シザーキングとたこに無謀とも思える距離まで近づく。
今度はシザーキングのハサミ攻撃が来たので、たこの足を対角線上に挟むように逃げる。
すると、今度はたこの足がちぎれた。
たこが、暴れる。
わざわざぼくが入らなくとも、シザーキングにダメージが通り続ける。
もちろん、シザーキングも負けてはいない。
たこにはさみ攻撃を放ち続けて。
結局。たこに残された足は二本、シザーキングはハサミが一つ、足が二本で、HPも残り一割ほどになっている。
しかし、暴れている最中で絡まっていたのがとれてしまって、今は二体ともぼくの方を向いており―――
いやー待った待った!
まずたこ! 足が光ってる! それは確実に必殺技だ! あたったら死んじゃう!
次にカニ! ハサミから魔方陣でてる! 多分泡とか放つ攻撃でしょ! こんな所ではなっちゃ駄目!
どうしよう。あの数の攻撃されたらよけられなさそうだ。ノーモア、弾幕。
横、というか、たことカニと同じ高さにいたらよけられない。
下はもちろん無理。
間に入ったら多分、相打ちは望めると思うけど間違いなくぼくも巻き込まれる。
じゃあ上か。
シザーキングの甲羅を蹴り付け、上に跳び岩が飛び出ている所に着地。
そして、上に鋭く伸びて攻撃力の増したたこの足が、シザーキングの泡攻撃が、突き刺さった。
鍾乳洞の天井へと。
ここの鍾乳石、大きいものでは5メートルくらいから、小さくても最低50センチ。
そこに衝撃をあたえたら、そんなの鍾乳石が落下するに決まっている。
ただ、ここの鍾乳洞はもしかしたら固定オブジェクトなんじゃないか、という可能性もあったからこれは完全に賭け。
しかし、鍾乳石は落ちた。
賭けは、ぼくの勝ちだ!
☆☆☆
閉じきっていた壁が開いた。
ちなみに、LVは1→6に。
結構上がってる。
「おお、まさか帰ってくるとは! ご無事ですか!?」
「えっと、無傷。ノーダメージ」
「馬鹿な…。本当にノーダメージだ!」
「なんだって!? 俺達の仲間が何十人も殺されたんだぞ!?」
その後も、やたらと褒め称えられて、更に崇められたが、面倒くさかったので逃げておいた。
☆☆☆
カニとたこを倒したことにより通れるようになった道を抜けると、そこは砂浜で、海は透き通るような青。砂浜の色は白。絶妙なコントラストの、とても綺麗な所だった。
さっきとは一転、すこし暖かくなっている。
岩場から出て、右手に黒い岩―――多分玄武岩―――、左手に紺碧の海に、そして、真っ直ぐ行った先に町。
砂浜の感触を確かめるように歩き、町までゆっくり歩く。
麦藁帽子とサマードレスがあれば絵になったろうなぁ。
買えないし着ないけど。
街に辿り着き、フィールドと町の境界線をこえると、そこは、魔王ダンジョンでした。
……忘れてたー…。
今から四話書きます(今20日日曜日)。