誕生日・・・
彼氏と喧嘩したひろみ
理由は、たわいもないことだった。
しかも、この日はひろみの誕生日・・・
楽しいはずのデートが・・・なんで?・・・そう後悔しつつひろみは一人、街路樹が立ち並ぶ暗い歩道を歩いていた。
事の発端は、些細な事だった。それは大塚がメールに夢中になって、話を聞いてくれなかったことだった。
さっきまでいたホテルのレストラン・・・そこはひろみの誕生日祝いだと大塚が予約してくれたものだった。目の前には彼氏の大塚が・・・そんな楽しい会話の途中で彼の携帯にメールが入ってきた。
「ちょっと・・」
そう言って大塚は、携帯を取り出しメールを見出した。その光景を見て不安がよぎるひろみ・・・私は、ここにいるのに・・・誰からなの?・・・私よりそのメールのほうが大事なの?そう思っているとつい声を上げてしまった。
「ちょっと! 私の話聞いてるの? 一体、誰からのメール?」
「会社からだよ!」
ひろみのきつい言い方に大塚も半分怒り気味だった。
しかし
ひろみの怒りはおさまらい・・・いつも・・・私を置いて・・・そう思うとイライラが増してくる。
「だから・・誰からなの?」
「会社だって言ってるだろう!!しつこいぞ。」
しつこい?って・・・なによ・・・わたしより・・・そのメールのほうがよっぽど大事なのね。ひろみは大塚の言葉に我慢できなくなった。
そして
「もう!!いいわ!」
席を立ってしまった。
「おい!!待てよ!!」
慌ててひろみのほうへ駆け寄り手をつかんだ大塚。
ひろみはその手を振りほどき大塚を睨み叫んだ。
「離してよ!!」
その光景にレストラン中が注目していた。睨まれた大塚が何か言おうする前に
「じゃ・・」
そういい残しひろみは、レストランを後にした。
何でこうなんだろう?
ひろみは、とぼとぼ歩いていた。
大塚啓太とは同期入社、しばらくして、付き合うようになった。
あれから4年・・・
ひろみも24になる。
最近、彼との喧嘩が増えてきた。それに、なかなか結婚の話も出てこない。本当に私のこと・・・そう不安が襲ってきた。その時だったひろみの携帯がなった。液晶画面を見るとそこには”啓太”の文字があった。しばらくそ携帯を見つめるひろみ・・いつもだったらすぐに出るくせに、今日に限って出たくない・・・
本当は、出たいはず・・・なぜ?
携帯をじーっと見つめているとやがて携帯の着信音が切れた。
しばらく、止まった携帯を見つめていたひろみ・・・
ふたたび・・一人とぼとぼ歩きだした。
そして
今の自分を思うとますます憂鬱になってきた。
こんなさびしい誕生日・・・
私は、なんて・・・
しばらく、うつむいて、歩いていた・・・
そこへ・・・
「ちょっと。お嬢さん・・・」
横から声がする。
ふと横を見ると
占い師が手を招いている・・・
「わたし? ですか?」
ひろみは自分を指差して聞いた
「そう、君じゃ・・」
占い師は、にこやかに話す。
あやしい・・・ひろみは思った。
しかし・・・
次の占い師の一言が彼女の足を止めた。
「彼と喧嘩したんだろ!」
驚くひろみ
そして
占い師の話を聞くことにした。
「まず、名前と生年月日をここに書いてくれ。」
ひろみは”田中 ひろみ”と生年月日をそこに書いた。
そして
「占いたいことは、なにかな?」
占い師は、おもむろに聞いてきた。
しばらく考えるひろみ
「結婚のことについて」
ひろみの言葉を聞いた占い師は、タロットカードを取り出し、シャッフルを始めた
「好きなところでストップといってくれ。」
しばらくして
「ストップ」
ひろみの言葉で占い師はカードをひとつまとめ、上からぱらぱらと落としたそして、
「好きなところでストップといってくれ。」
「ストップ」
そして
これをあと2回繰り返した。ひろみの前には3枚のカードが裏向きにおかれていた。
占い師は、それぞれのカードを指差し
「さて、これらのカードは、それぞれ過去・現在・未来となっておる。」
それを見てひろみは、うなずいた。
占い師が過去のカードを開いた。
そこには”恋人”が逆位置になっていた。
「どういうことですか?」
カードの意味を知らないひろみが聞くと
「う~む」
少し顔にしわをあつめる占い師・・・
その顔を見て不安になるひろみ
やがて重い口を開く・・・
「これは、君の悩みだ。とにかく、君の相手は、以前、浮気しなかった?」
ひろみは、驚いた。
かつて、大塚は、ひろみの知らないところで、浮気をしていた事があった。
「そして、次のカードは、現在・・・よっ・・」
占師がカードひっくり返す。
そこには
”死神”が逆位置になっていた。
ひろみは、このカードがかなり悪い意味だと一目でわかった。
「終わりなんですか。わたし・・・」
ひろみは思わずつぶやいた。
しかし
占い師の言葉は意外だった。
「これは、新たな出発だ。」
「えっ!?」
「君は、今から新たな出会いがあるぞ・・そして、未来のカードは?」
占い師が最後の一枚をめくった。
”運命の輪”が正位置で出てきた。
「おお!!運命的な出会いがあるぞ。これから、そして、いい未来がまっておりるぞ。」
占師が言う言葉に戸惑うひろみ
「じゃぁ、彼とは?」
「今の彼とは、ずいぶん昔に別れたことになっておる、もし、付き合っているのだったら形だけだし、お互いに愛情はないんじゃない?」
ドキッ!!
本心を当てられた。そう驚くひろみ、けど・・・けど・・・認めたくない・・・
ひろみは、うつむきじーっとカードを見つめた。その様子をみていた占い師がひろみに告げた。
「しかも、今日が運命の日になりそうだ。」
「えっ?」
占い師の言葉に驚くひろみをよそに話を続けた。
「いい誕生日になるぞ。そして、いい未来が待っておるぞ」
占い師と別れたひろみは、占い師の言葉がいまいち信じられないまま
また一人で歩き出した、ただ、半分いい気になったが、悲しみもあった。
そんな時、再び携帯がなった。
大塚からだった。
「ひろみ、いまどこだ? 今日は、プレゼントもあるのに・・・」
大塚の言葉にひろみは、占いははずれね・・・そう思った
そして、急いで大塚が待つ場所へ向かった。
そこは
ホテルのロビーだった。
大塚は「一緒に来てくれ」と鍵を見せた。
ひろみは、そこに婚約指輪があると確信しついて行った。
部屋に入ると机の上にブランドのバックがはいった袋がポツンと置いてあった。
「これ前からほしがっていたろう?」
大塚の言葉にとまどうひろみ、
「・・・・」
「どうした?」
「・・・・ち・・が・・・う・・・・」
「なにが、・・・ちがうだ・・・ひろみ・・・」
「ちがう・・・」
ただそう言って、首を振るひろみ
「何がちがうだ・・・・俺は、ちゃんと準備したんだ・・・」
再び大塚も怒りだした。
そして
ひろみは、部屋を飛び出した。
しばらく
わけもわからずに走っていたひろみ
そのうちに
ドンと人とぶつかった。
「いたた・・」
ひろみはふと目の前を見るとある男が尻餅をついていた。
「いてぇ・・」
そう言いつつおもむろに立ち上がった。
そして
「大丈夫ですか?」
たずねてきた
「私のほうこそすみません。よそ見していまして・・」
「こんな夜道を一人で無鉄砲に走ると危ないですよ。・・・相手が私だからいいよなものだ・・・」
ひろみは、話を聞いているうちに、この声にここらあたりがあった。えっっと・・・
「ひょっとして、中村さんですか?」
思わず声に出してしまったひろみ
「えっ・・・なんで、僕の名前を知っているんですか?」
中村は、不思議そうに答えた。
「同じ会社の田中です。」
ひろみが言うと
「ああ、田中さんですか?こんなところでどうしたんですか?」
中村は、ひろみより5つ年上の先輩だが
髪型がぼさぼさ・・・
しかも
オタクっぽい雰囲気が漂っていて、会社の女子の中で、付き合いたくない男性NO.1だった。
しかし、彼を見たひろみは、気が抜けた。
そして、
急に泣き出してしまった。
中村は、そっとひろみに胸を貸してやった。
しばらくして、ようやく落ち着きを見せたひろみを見た中村はやさしく声をかけた。
「今からタクシーを呼ぶよ。」
その時、ひろみは、なんとなくこう言ってしまった。
「中村さん・・少し付合っていただけません?」
そして、二人は近くの居酒屋に行った。
お酒も勢いもあり、
ひろみは、中村に散々、大塚の悪口を言った。
中村は、ひろみの愚痴をただ聞いてあげた。
そして
ひろみは目を覚ますと自宅のベットにいた。
しかも
裸で・・・・




