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王子様と夢みる女官  作者: 笹野にこ
五章 王子と武芸大会
27/34

5-4. 王子はやっぱり強かった


前回ラストの噂話に関して、今回タグを一つ追加しました。

匂わせ程度の描写だと思いますが、今後のこともあるので…!


こういうタグの方がいいなど何かご助言があればぜひぜひお願いします(>.<)





 

 

 

そうして始まった競技はとにかくどれも見応えがあって、観戦初心者も大いに盛り上がることができた。

観客も勝者には大きな喝采を、敗者には惜しみない賞賛を送り、実にいい雰囲気の会場だ。



 

「次の出場者はあの七人ね。……ふむ、馬に乗って弓で的に当てる競技みたい。どの人を応援しようかしら?」

 

「うーん……、わたしはあの青葉色の帯の人にする!自信ありそうな顔をしてる気がしない?」

 

特段推し出場者のいないメイメイ達は、競技ごとに応援する人を決めては結果に一喜一憂していたが、これはこれで面白い。



「まあ、また当てたわ!」

 

「アンリが応援した人が勝ったの、これで何回目?目の付け所がよすぎる……」



見る目のあるアンリが推した選手は次々と勝利を獲得していき、アンリは嬉しそうに歓声を上げている。

一方メイメイが応援する選手の戦績は見事に散らばっていて、これまた応援には熱が入る。

 

二人ともそれぞれの楽しみ方で、観戦に熱中するのであった。




 


 


当然、競技の花にして締めとなる剣技の試合が始まる頃には、二人とも声を枯らしてしまっていた。

 

席の付近を飲み物売りの女の子が通りかかったので、すかさず追加で飲み物を買っておく。

これだけみんな熱狂して声を張り上げるのだから、この商売はかなり儲かるに違いない。

  

けほりと咳払いをしてアンリと喉を潤していると、そこで更なる歓声が響き渡った。


 

「あ゙、メイメイ゙、ジフン様よ!」

 

「うわ゙ぁ、さっきの入場に゙も増しで、歓声がすごいっ!」

 

「けほっ、……本当ね!………あ、始まったわ。すごい、さっそく攻め込んでいくのね……。きゃっ、一振りひとふりが重くて見ていて怖い!」

 

「ぎゃーー!! ……こほんっ、殿下に慮るとか全然しないんだね! みんなすごく活き活きと容赦なく……あ、でも倒されちゃった! 殿下、強い!」 

 


  

先ほどまでは、どちらかと言うと女性が主体の明るく楽しげな歓声が響き渡っていたのだが、今度は王子を熱心に応援する武人らもしっかりと叫ぶものだから、まるで地響きのようになっている。


試合は刃先を潰した模擬刀が用いられた。

相手の胴や腕に当てると加点され、合計点数の多い者の勝利だ。

ただし、模擬刀を手から離したり、地面にお尻をついてしまった時点で勝敗が決定してしまう。


 

―――ガッ、ガッ、……カーンッ


「勝負ありっ!勝者は、ジフン王子殿下……!」


 

王子の勝ち方は、基本的にすべて後者であった。 

相手の斬撃をぱかーんと跳ね除け、自分の身体には触れさせない。

力も技量も、どちらも感じさせる清々しい勝ちっぷりである。

 



 

「殿下との試合ともなると、多少の忖度とか花を持たせるとか、そういうのはあるんだろうなと思ってたんだけど……。うわっ、また相手の人が競り負けた……。……少なくとも今見た感じの対戦相手は、みんな本気で勝とうと全力を出しているみたいだね?」



メイメイはなんだか自分がとても偉い上司と対面したような心境になり、思わず心配もしてしまう。


しかし、それも聞くところによると、



「殿下に勝てた人は、殿下直属の部隊に所属できるみたいよ。殿下相手に点数を取った人も、個人的に指導してもらえるとかだったかしら?みんなの意見をもとに、遠慮なく戦えるように何かしらの褒美を設けているって」


という潔い配慮があり、ただ(みなぎ)るやる気のままに挑めるようになっているらしい。

 



(自信があって、実力もあって、部下思いで、周りを奮い立たせるのもうまい……。まさに上に立つ者って感じがする!かっこいい……!) 

 

そんな裏話を聞いてから試合を見ていると、さらに観戦は楽しくなる。

メイメイがすっかり王子贔屓となり、応援に夢中になっている間に、気がつくと最後の試合になっていた。


  


「さくさく着実に勝ち抜いてしまわれたから、あっという間に感じたわね……」

 

相手は王子より少し上背があり、客席からでも分かるくらい逞しい。

そんな人が放った重々しい一閃が、試合開始の合図となった。

 

喧騒にも負けないくらい激しい剣戟の音が、しばらく続いた。


 

「最後の相手は、……近衛隊総隊長だって。あの方も去年は大会に出場していないってさっき聞いたよ! 珍しい人同士の対戦だね……!」

 

「……そうね。なんだか気迫がすごくて、こちらまで緊張しちゃうわ……、あっ!」



―――ガッ、ゴンッ……

  

総隊長の重そうな斬撃が派手な音を立てて弾かれ、彼の手から模擬刀が離れていく。


  

「………っ!アンリ、王子の勝ちだよっ!」

「―――優勝は、ジフン王子殿下……!」



本日最大の歓声が、どかんと会場に降り注ぐ。

 



 

  


見事に勝ち抜いた手腕は、王子が名実ともにこの国で最もすばらしい武人であることを観客に納得させるのに十分だった。

 

たいへん不敬すぎることにソユンのついでと考えていた王子を、格好良くてすごい人だと認識し尊敬してしまうほどに、メイメイにとっても王子の活躍は鮮明なものであった。

熱狂的な人気がある理由も分かったし、普段から長い時を一緒に過ごすソユンが彼を慕うのも当然だろう。

 


(うわー、早くソユン様にお会いして、この気持ちを共有したいな……! 興奮冷めやらない今この瞬間の感想をお伝えして、あの嬉しそうな笑顔になるところも見たいっ……)

 

メイメイはソユンへの会いたさを、いつにもまして強く感じることになった。





 

 

優勝者の王子が会場を見回すと、最初に入場してきた時のように、観客が総立ちで思い思いに声を張り上げ、その腕っぷしを讃える。

観覧席にいる王族たちも誇らしげに笑い合っている様子が窺えて、なんともほっこりする光景だ。

 

拍手喝才を浴びる王子は、大げさに喜んでみたり安堵してみたりすることなく、しっかりした足取りで王太子の元へ歩いていき、勲章を授与された。


朗々と弟王子にねぎらいの言葉をかける場面になると、さすがに皆静かに見守った。


 

「ジフン、……とても見事な試合だった。以前にも増して剣の腕前を上げたようだね。さすがは我が国きっての武人だ。わたしも兄として、王太子として誇らしく思うよ。これからもそれぞれの分野で互いに励み、ともに国を支えていこう」

 

「勿体ないお言葉です。軍務を一任してもらっているからには、実力を伴わなければ皆のものに示しがつきませんので。これからも精進してまいります」

 

よく通る声での如才ない返答に王太子も微笑んで頷き、武芸大会は大盛況のうちに終幕となった。



 

 

 

大いに沸き返る観客たちの歓声に鷹揚に応え、王子は自分の天幕へ戻っていく。

なんとなくそれを眺めたままでいると、ソユンがねぎらうようにジフンに歩み寄るのが見えた。

 

自慢の主人を前にした彼の側近は自分のことのように嬉しそうで、遠目からでも喜んでいるのが分かる。

対する彼の主人はというと、先程の堂々としつつも謙虚な様子から一変、当然だとでもいうように肩をすくめてみせている。

 

細かい表情は見えないが、機嫌は良さそうだ。


 

(たいへんご立派でございました! ふん、あれくらい当然だ――、くらいの気安いやりとりしてたりして!)


例えるなら好きな舞台役者同士が仲良くしているのを眺めて喜ぶ愛好者のごとく、メイメイは二人の様子をにまにま見守った。

 


(系統の異なる美形が親しげにしているのを見るのって、目の保養になる……)


王子はまずおいそれとご尊顔を拝むことができない人だし、ソユンだって本来なら対面することすら叶わないような身分だ。

 

そんな二人が揃っているところなんて、宮廷に来て二年と少し経った今でも、片手で数えられる程度しか見たことがない。

それも、遠目から、わずかな時間のみ。

 

ついつい目を見開いてじっくり鑑賞してしまうのは、仕方のないことだろう。

 



 

「なあにメイメイ、嬉しそうな顔」

 

「ソユン様の魅力を噛み締めているところ」

 

「あら予想外の回答。気になる武官さんでもできたのかと思いきや、こんな中でもソユン様を見ていたのね?」

 

「えへへ……。ほら、今も王子殿下と一緒にいるから……」

 

「あら、本当ね!……さすがメイメイ、よく見てる」


 

憧れの人がこの国の王子に信頼され、気のおけない関係を築いている様子は、何様だというところではあるが、見ていて誇らしくなってくる。

その得意げな気持ちが顔に出ていたのはさすがに照れくさく、笑って誤魔化した。

 


  


 

帰る準備をする人や感想を言い合う人、いまだに王子や出場者の名前を叫び大声で称える人、思い思いの人たちでごった返す中、メイメイたちもそろそろ帰路に着こうと席を立つ。 



初めての観戦はとても楽しく、どうにも名残惜しい。

そんな気持ちでメイメイも最後に再び会場に、そして二人に視線を戻す。

 

その瞬間―――




(あれ……)


ふ、と王子が顔を上げ、ちょうどこちらの方向を強い視線で射抜いた。

 

距離があるのに、ぴたりと目が合ったかのような緊張感が身体を走る。

その眼光の鋭さに圧倒され、思わず一瞬周りの音が消えてしまったような感覚に陥ったほどだ。

 

すぐに視線は逸れたし、周りの人も彼がこの辺りに視線を向けたことには気がつかなかった様子である。



  

(…………気のせい、だよね?)


見られているかと思えばそうではなかった、なんてことはよくある話だ。

特にメイメイは目がいいから、向こうにその気がなくても視線を感じてしまうなんてことがよく起こる。


そもそも、この国の最も尊い血筋のお方が、遠くにいる面識のない女官風情を意識して見やるなんぞありえない。

視線が合ったと思うだけでも、烏滸がましいことだろう。

  


―――それに、強い敵意のようなものを感じたのも、ただのおかしな勘違い。






胸をざわつかせた一瞬であったが、明るく笑うアンリやあちこちで聞こえる楽しげな声に囲まれているうちに、この時感じた違和感はすぐに消え去っていった。





 

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