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王子様と夢みる女官  作者: 笹野にこ
五章 王子と武芸大会
24/34

5-1. 武芸大会なんてものがあるらしいです


ちなみにジフン王子とメイメイは共に夏生まれです(唐突な豆知識)


ソユンはどの季節に生まれたと思われますか?(ˊᵕˋ)




 


 


メイメイがソユンと親しくなろうと作戦を練ってから、季節がまた一つ巡った。

 

その間、計画を立てるだけでは終わらず地道に実行に移した辺り、わりと頑張ったのではとメイメイは自画自賛する。


 

例えば、今まで以上に噂を集めて回ったり。


(伝手が少ないからもはやアンリを頼ったほうがよかったかもしれないけど、自力でやる意義っていうのもあるだろうから……!)

 

ほかには、休憩時間も休日も気を抜かずにソユンの姿を探し、あわよくばお話をするところまでこぎつけたり。


(それにしてはお話できる頻度少なくなったんだけど、最近特にお忙しいみたいだから仕方ない……!)


 

小さなことでもこつこつと続けることが成功への近道なのだ、きっと。


 





 

「メイメイ、その後の進展はどうなの?」


 

アンリ宅でのお泊り会の帰り道、王都に向かう馬車の中でアンリが問いかけてくる。

 

ちなみに、お泊まり会はあれから月に一度ほどの頻度で行われている。

二人とも数日の休みを取れたときは、王都から遠いメイメイの家にも招いた。


アンリを友達として紹介したとき、両親が嬉しそうにはしゃいでいたのはいい思い出だ。

しっかり者で社交的な彼女はすっかり気に入られて、今ではソユンと同じくらい手紙の話題の中心人物である。

 


 

「王子の話題を出すと心なしか嬉しそうにしてくださるから、最近暇さえあれば王子について一層しっかり調べてる。わりと詳しくなったんだよ!」


  

例えばよく身につける衣装の傾向、食べ物の好み、訓練の頻度など。

 

この前は王子について、素朴な食べ物も召し上がるようで親近感を抱いてしまったなんて伝えてみたが、ソユンはいつもよりほんのりご機嫌になったように感じた。

 

よくよく普段の態度を見逃さないようにしているからこそ分かる程度の違いだが、喜ぶ気持ちが滲み出てしまっているのを見ると、胸がぎゅんとときめくのを抑えられない。


 

「なかなかお話する機会がないからね、こういうちょっとした会話でわたしの熱意を訴えていきたい所存だよ……!」

 

思いっきり下心丸出しだが、段々と調べるのも楽しくなってきたメイメイである。

 

快活で頼もしく美丈夫らしい人がこの国の王子殿下だなんて、おめでたいことではないか。 

王族に関心を持ったからか、今までより仕事への意欲も高まっており、まさにいいこと尽くしだ。


 

「メイメイ……!やる気に満ちていて偉いわ!」


胸を張って報告すると、小さなことでも優しく賞賛してくれる褒め上手によって、ぱちぱちと拍手で讃えられる。

こうして楽しくメイメイなりに頑張っていられるのも、定期的にこういう場を設けてはアンリにめいっぱい応援されているからだと思う。

 

包容力がありすぎて褒めて伸ばす方針の子育てみたいになっているけれど、アンリとメイメイ、こう見えて同い年である。




 

 

そんなこんなで今日もお喋りを楽しんでいると、王都に差し当たった辺りから外が賑やかになってきた。

いつも人が集まる場所だし、今くらいの時間からはなお一層ひしめき合うが、常を上回る盛況っぷりである。

 

馬車から降りると、薄暗くなった夕刻とは思えないほど灯りがこうこうと照らされ、あちこちの店で気合の入った声掛けが行われている。

隣にいるアンリに話すのにも、声を張らないといけないくらいだ。


 

「うわわ、人多いねー!出店も増えたし何かあるのかな」


「あら、そういえば武芸大会の時期ね」


 

―――武芸大会。


あまり存じ上げない大会だが、メイメイは基本的な行事ごとすべてに興味を持たずにやってきたので、こういうことは珍しい話ではない。


  

要は国中の精鋭の武官たちが弓や剣の腕を競い合う武芸の祭典的行事で、一年に一回、大々的に行われるらしい。

 

国軍が主催、つまり王子の取り纏める国事であるそうだ。

王子にまつわるそんな大層な行事を知らなかったなんて、調査不足であった。

 

行事の名前を聞いてもぴんと来ていない様子を見てすぐ説明してくれたアンリに、メイメイはいつもありがとうの気持ちでいっぱいになる。



 

「昨年はあんまり興味がないみたいだったからほかの子と行ったけど、すごく盛り上がっていたのよ」


長年育ててきた腰の重さが軽減されつつあるメイメイは、アンリの楽しそうに話す様子に、行きたいかもという気持ちになってきた。

と、そこで最後の決定的なひと押しが放たれる。


 

「そうそう、なんと今メイメイが一生懸命調べている王子殿下も、今年は出場します! どう?せっかくだし見に行かない?」

  

「え、行く!」


 

先程励ましてもらったこともあって、この言葉には食いつかざるを得ない。

今までどっしり構えていた腰だってひょい、だ。

 

メイメイの元気な返事に、大人びた友人はそれがいいぞという心得顔で頷いた。


 

「今年は特に大盛りあがりすること間違いないの!いつもは主催者側の殿下が出場するっていうものだから、例年以上に注目を浴びているみたいでね。ほら、だからこうやって出店も人も、いつもよりうんと多いんだと思う」

 

「本当に絶好の機会だね!? もうこれは、ソユン様との次回の話題は大会で確定……」

 

「武術に優れていらっしゃると評判のお方だから、ひと目見たいと訪れる人がきっとたくさんいるわ。ソユン様も今ご準備に追われていらっしゃると思うけど、今の時点でこれだけ盛り上がっていたら、誇らしくお思いでしょうね!」

 

「そうだね!よし、わたしも王子の活躍、絶対に見逃さないぞ……」


 

にっこりと励ましてくれるアンリに、メイメイは拳を握ってその心構えを見せる。

 

期間限定で王子の情報収集家を担っているメイメイにちょうどぴったりの機会なうえに、今まで縁がなかった華やかな行事ごとに友達と連れ立って行けることになったので、メイメイのわくわく度はかなり高まった。





 



どうやらメイメイが今まで意識していなかっただけのようで、宮廷に戻るとあちこちで大会の話に花が咲いていた。

やれどこそこの隊員が今年はいい働きを見せているだとか、今年はそれぞれの部門で誰が優勝するか当てようだとか。



「今年は特に市場の盛り上がりが違うね。さすが殿下が出場する年だけあるよ……!殿下は剣技の試合に出られるのかな?」  


「いちばん盛り上がる競技だし、みんなも期待してるだろうな。もう地区単位では出場者の選抜も終えてるって話だけど、選ばれたやつらは殿下と対戦する可能性があるってことだろ?光栄だろうなぁ…」 


「ほら、昨年の一騎打ちで優勝した……誰だったっけ?あの人との対戦になれぱ見応えがあるだろうね」


「そうよね!でも、きっと勝つのは殿下に違いないわ。わたしの職場ではみんながそう言うから賭けにもならなくて」


 

最もよく聞くのは、やはり王子の話題だ。 


宮廷勤めの官吏から王都に訪れた観光客まで、毎日のように楽しそうに笑い合う。



(最近はきっと特にお忙しいんだろうけど、この雰囲気を味わうだけでもソユン様は喜びそうだな……)


王都には連日いつも以上に人がいて、最近増営された出店の数々は夜遅くまで笑い声で満ちている。

その活気が王子に由来するものなら、かの首席補佐官はきっと嬉しそうに微笑みを浮かべているのだろう。




そして大注目されている王子だが、出場自体は初めてではない。

というのも、過去には王族代表という名目で数回ほど出場したことがあったそうなのだ。

  

ただ他の参加者と比べて若かったことや安全管理上の問題を考慮し、弓や馬術を披露する程度の、象徴としての参加に留まった。

しかも、軍での重要な地位を与えられて公務を本格的に担うようになってからは、出場も途絶え、主催に転じている。



(そんな中、年々増加する国民の声に応えたいからと、今回の出場を決めたとか……)  

 

皆の期待を一身に背負い、大注目を浴びながら競技を行うなんて、メイメイだったらいくら特技があったとしても到底無理なことだと確信できる。


きっと自信や度胸に満ちた人なんだろう。

メイメイは自分に足りないものを持つ人として、王子に尊敬の念を抱いた。





町の賑わいにつられ、メイメイもお祭り気分に浸っている間に、いよいよ大会の当日となった。


 

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