37.死して生きる
骨壷を見つめていた。
二つ。並んでいる。
同じ手順で、同じ道具で、同じ時間をかけたはずなのに、
中身は違って見えた。
光の反射、粒の質感、触れたときのわずかな重さ。
理由はわからない。
ただ一つだけ、確かに言えることがある。
──二つでは、足りない。
最初は偶然だった。
あれは「選んだ」わけじゃない。
目の前にあったから、手を伸ばしただけだ。
二つ目は違う。
場所も、導線も、声をかけるタイミングも決めていた。
偶然を排除したつもりだった。
それでも、この差が出た。
条件を揃える必要がある。
同じ流れ、同じ場所、同じ過程。
すべてを一致させて、初めて「比較」という言葉が意味を持つ。
人間を選ぶ感覚はもう薄い。
今は、対象を抽出しているだけだ。
孤立しているか。
消えても誰も探さないか。
生活パターンは単純か。
そして──壊れていく過程が、きちんと見えるか。
言葉なんて当てにならない。
「大丈夫」と言いながら汗をかく人間もいる。
「死にたい」と呟きながら必死に生きようとする人間もいる。
正直なのは、身体だけだ。
呼吸の浅さ、瞳孔の開き、声の震え。
それらの方が、言葉よりよほど雄弁に生を語ってくれる。
だから、次はもっと揃える。
偶然は要らない。
選ぶ。
条件を整え、手順を決め、記録する。
違いを見極めるために。
骨壷を指先で回し、左右対称に置き直す。
影が揃ったのを確認してから、
私はようやく視線を外した。
……何を求めているのだろうか。
命を奪うことが目的だったのか?
違う。
満たされるはずだったのに、
二つを並べた今も、胸の奥は静まり返ったままだ。
「生」を奪うたびに、
確かに手の中には熱と重さが残る。
だが、それらはすぐに消えてしまう。
痕跡を消し、形を揃えるたび、
逆に中身までもが溶けていくようで、
私の内側に残るものは何もない。
もっと深い場所に触れなければならない。
もっと鮮やかに、もっと長く、もっと確かに、
「生きている証」を奪い取らなければならない。
そうでなければ、この欠落は埋まらない。




