立ちはだかる二つの選択肢、少女の知られざる思い
「パウ!おきなさい!パウ!」
ん?なんだ・・・・・ああ朝か、そういえばフレイと一緒の毛布に包まって寝たんだったな
「なんだ?フレイか・・・・・どうした?」
まったく、何もすることが無い牢屋なんだからせめてゆっくり寝させろ
「どうしたじゃないわよ!ほらぁ!」
そういいながら指をさすフレイ、その先をたどると・・・・・・・・
なんかおっさんがたくさんいた。
むさ!!!!!!
って一人若い女性もいる
綺麗だな~
ああ、そうか、神が言ってた朝になったら来るやつらか
「おはよう、パウロ君、よく眠れたかな?」
むさいおっさんの中から一番偉そうなやつがいやみな言い方で話しかけてきた
普通牢屋で良くは眠れないだろ
「ええ、それはもうぐっすりと、暖かい毛布もありまして、それはもうあなたたちとしゃべるより寝たくなるぐらいに」
言い返してみた
「それはよかった、実はここに来る前から君には質問したいことがたくさんあったのだが、今もうひとつ増えたよ」
「そうですか?はて、いったい何を俺に聞きたいのでしょうか?」
わかっているが言わない
「その君たちが使っている、明らかにわれわれの持っているものより上質そうな毛布はどうしたのかな?囚人への支給品にしては過ぎる物のようだが?」
ベットがあって毛布が無かったのはおそらく寒さで俺たちを弱らせてから朝になって尋問する気だったからだろうな
まぁ俺には関係ないけど
「ああ、恐らくですが私たちの状況を見越した優しい神様がくれたのではないでしょうか?」
まぁ間違っては無いな
「そうか・・・・・言う気はないか」
いや、言ったじゃねえかよ
(いやいや信憑性無いでしょ)
(神よ、冷静な突っ込みありがとう、でなんでまた急に出てきたんだ?)
(いや、君の口から神って単語が出てからつい)
「では次の質問だが立ち上がって上着を捲ってはくれないか?」
おいおい変態かよこの親父
(傷を見るためでしょう?)
(・・・・・・)
「まぁいいぜ・・・・ほら」
服を捲ると綺麗なおなかが見えた
最初は包帯が巻いてあったが眼が覚めてすぐはずしたので今は無い
うんさすが俺の体、すごい再生力だ
お!おっちゃん驚いてる
「医者よ、前に出ろ」
はっはいといいながらおっちゃんの後ろから別のおっちゃんが出てきた、このおっちゃんが医者なのか
「お前の診断ではたしか腹に穴が開き、臓器損傷、治療不可能、長くは無い、だったな?」
「は、はい一応出血は止めましたが、臓器の復元は不可能ですし、穴も大きく包帯を巻いておくぐらいしかできませんでした・・・・・しかしこんな、直ってるだなんてありえない、顔色も良好ですし・・・・・」
「うむ、私はお前が藪医者ではないことは知っているつもりだ、つまりおかしいのはお前の診断ではなく、この子供だ」
子供って・・・・・俺18なんですけど・・・・まぁおっちゃんからみたら子供か
ってさっきからあの女の人微塵も動かないな・・・生きてるのかな?
「パウロ君、質問だ、君はこの国一の名医ですら治療不可能と言った怪我をどうやって一夜にして直したのかね?」
あはは、医者のおっちゃん照れてる、可愛い
って直し方か、ふむ俺がなんかしたわけじゃないしな~
「え~とですね、たぶん俺たちの状況を見越した神様が直してくれたんですよきっと」
なんか二度目な気がするこの言い訳
「なるほど、君はよっぽど神様に愛されてるんだな、」
あ、おっちゃんなんかまるで信じてない、まぁそりゃ信じろってのが無理あるけどさ
「では、一番大事な質問だ」
今までのは大事な質問じゃないのかい
「君の仲間であるあの赤い髪の女の子は今どこにいる?アジトは?」
いやいや仲間じゃねえよ
「知らないですよ、仲間じゃないし、」
早く開放してくれ
「なるほどな、昨日の仲間は今日の敵というわけか、これも言う気が無いようだね」
いやいやいやいやいやいや、なに変な解釈してんの?
まったく違うから
「君にはほかにも聴きたいことがあるのだが、これからの課題もできた、今日はこの辺にしておこう、ではまた明日来るよ」
「おいおいちょっとまて、俺は犯罪者じゃないんだからここから出せよ」
こんな何もすることが無いところにいつまでもいられるか
「それは無理だ、どこの世界に囚人に出せといわれて牢屋を出すやつがいる「いやおれは犯罪者じゃ」ではな」
そう言っておっちゃんの集団+おねえさんは出て行った。
・・・・・・・
なんなんだよまったく
とりあえずこの先の方針をフレイと決めるか
「おいフレ・・・・・イ?」
そこにはすやすやと毛布に包まり眠っているフレイの姿があった。
こいつよく今の状況で眠れたな・・・・ある意味将来は大物になるだろうな
でもまぁ今はとりあえず
・・・・・・・・バシ!
「イッターーーーーーーーイ」
「痛いじゃねえ! なに寝てんだよお前、普通いまの状況で寝られねーだろ?」
「だって私蚊帳の外だったし」
「まぁいい、で今後のことを話すぞ?」
「つまりだな、俺はここを出る、このままいた場合まず釈放してくれる可能性は0に等しい
仮に容疑が晴れたとしても俺という異端をあいつらが手放すとは思えない、だからこの国にもいられない、俺はここの敵対国へ移るつもりだ、同盟国だと指名手配される可能性があるからな、まぁ見た目なんかどうとでも変えられるがやはり気分がいいものじゃない」
「そうよね、パウはおなかに穴が空いてて私、死んじゃうかと思ったのに今すごいピンピンしてるし」
「でだ、問題はお前だフレア」
そう、この状況で一番の問題はフレア
「私?なんで?」
状況を理解してないのかこいつ
「お前は俺についてくるのか?こないのかだ」
「え?もちろん付いてくよ?なんで?」
ああ、たぶんこいつ自分の言ってることなんもわかってないな
「お前さ自分の言ってることきちんと理解してるか?お前は本当に俺についてくるのか?俺についてくるということはお前は脱獄することなり、犯罪者として確定する、そして別の国に行くということは過去を捨てることになるんだぞ?お前はもうフレイ・K・マーカスにはもどれないんだぞ?お前の過ごした16年間はなくなるんだぞ?分かってていってるのか?お前は奴隷市場で買った、たかが一ヶ月しかともに過ごしてない俺とともに本当に行けるのか?」
「え・・・あ」
フレイは動揺している
そうだよく考えろ
「いいか?いまならまだお前は助かる方法がある、俺がお前を眠らせ三日間ほど起きないようにする、そして俺が一人で脱獄し、姿を消す。
おそらくお前のことはすぐにでもお前の父親、トールさんのもとまで伝わるだろう、言い方は悪いが俺がいなくなればお前に価値などない、軍務大臣であるお前の父親が言えばおそらくお前はすぐにでも解放されるだろう、俺を悪役にし、俺に操られていたとでも言えば」
そうつまりは
「お前次第だ、本当ならお前の意思など無視して後者にするつもりだったのだが、俺はここまでともに来たお前の意思を尊重する」
そう・・・本当なら他人を巻き込む気なんか無かったんだが、
なぜこんな風に考えたんだろうな俺、
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無言が空間を支配する
確かに簡単にできる決断ではないことはわかってる
しかし、してもらわなければならない、これは人生を変える決断なのだから
「・・・く・・・・・・・・・・・・いくよ、一緒に」
・・
・・・・・
「そうか・・・・理由を・・・・・・・・聞いてもいいか?」
たかだか一ヶ月、ともにふざけてるが新鮮な毎日を過ごしてきたが、なにが彼女を決断に導いたのだろうか?
「私ね・・・・・・・楽しかったんだ・・・・・・・・毎日が」
楽しかった?
「あなたと奴隷市場で初めて会ったあの日から、あなたは私の日常を変えた、私の家に貴方が来てからあなたはいろいろなことをした。」
確かに、いろいろあったな
「まずは出会ったあの日、あなたは家についてすぐにどこからともなく不思議な服を取り出した。あれって燕尾服って言うんだっけ?すっごくびっくりしたんだよ?はじめてみる服だったしね、それにすっごくかっこよかったから」
そうかかっこよかったのか
「そしてその後、お父様と闘って・・・・・・あっという間に倒しちゃったし、あれには・・・・・・・・・本当にびっくりした。お父様に勝てる人なんていないと思ってたのに、」
まぁ俺は強いからな・・・・・邪神とは相打ちになっちゃったけど
「その後も・・・・・・家での使用人の仕事全部奪っちゃってさ・・・・・・・ほかの使用人の人に怒られてたよね?私たちの仕事を奪わないでくださいって」
そういえばクビにされちゃうって笑いながら怒られたっけか・・・・・
「私が寝るときも毎日ベットの横でお休みを言ってくれたよね?
そして朝起きたら必ずパウがいていっつもおはようございますって言ってくれたよね?」
まぁ・・・・確かにしてたな
「パウの代わりに私がお父様に鍛えられるようになったとき、たまにお父様の目を盗んで町に連れてってくれたよね?」
まぁな、俺のせい?でそうなったからせめてもの罪滅ぼしで連れてってやったけか?
「我が家にさ、変な習慣も作っちゃったよね?三時のおやつっていうの、家主も使用人も関係なく同じテーブルに着く時間、パウが作ったとてもおいしいケーキをみんなで食べる時間、あれから使用人との会話も増えて、ますますみんな仲良くなったよね?」
そういえばなんとなく思いつきでトールさんに提案したらいつの間にか習慣化してたな
「私ね・・・・・・・・ほんとに・・・・・・・・・楽しかった」
そうだったのか
「私ね・・・・・・・・パウのこといつしか尊敬するようになっちゃったんだ。」
うそコケ・・・・
「パウはなんでもできてさ・・・・・・みんなに笑顔を与えられて・・・・・・・私なんか足元にも及ばなくて・・・・・でもいつしかああなりたいと思うようになった。
使用人なのに主人のわたしよりすごいパウ・・・・・・本当はね・・・・・もっと甘えたかったんだ・・・・・・けどね・・・・・ほら、私ってさ・・・・照れ屋だから、いつもパウに対してだけなんかつっけどんになっちゃって・・・・・・・素直になれなかった。」
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
俺は何を言えばいいんだろうな
何もいえない・・・・・・・・・・・・・・・・いや言うべきじゃないな
「私ね・・・・お母様にこう言われたことがあるんだ・・・・・・・あなたはあなたの人生を歩みなさい、この先あなたの歩む道には幾多の選択肢が出てくる。
そのときはあなたが選ぶべきなのは貴方が正しいと思う選択肢、たとえその選択肢を世界中のすべての人が否定しようと、それはきっと正しいはずだから、って」
世界中すべての人が否定しようとも・・・・・・・・か
「だからね・・・・・・私は決めた、私は・・・・あなたとともに行きたい」
「だから・・・・・連れてって?私を・・・・・あなたとともに」
彼女は今どんな思いを胸に秘めてるのだろうか?
その眼に涙を滴らせながら
「わかった、ともに行こう!」
でもその前に・・・・・・・・
・・・・・
・・・・・・・・・パシ
フレアの頬を引っぱたく
いまさらになってたがフレアの話を聞いてからどうしてもしたくなった。
「なぜあの時来た?俺は逃げろといっただろう?」
「だって、心配だったから」
「俺もお前が心配だ・・・・・だからもう・・・・・無茶するな」
「うん!わかった・・・・・・でも・・・・・だったら」
だったらなんだ?と思ったところで今度は俺がフレアに頬を引っぱたかれた
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「主人にあんまり・・・・・心配・・・・・・・かけないでよね?」
そういいながらフレアは笑う
泣きながら笑う
そうか・・・・・・・俺はいつの間にか勘違いをしていたようだな
心配をかけていたのは・・・・・・・・俺のほうだったようだ
まったく、自分が恥ずかしくなってきた
「だな・・・・・・今度から気をつけよう・・・・・・・・・・お互いに」
うん!っとフレアはうなずく
「さて話も終わったし・・・・・・・出るか?」
「うん!いこう!」
そして俺たちは終に脱獄を試みた
今回は今までで一番長く書きました。
著者がんばりました
シリアスを取り入れたのでちょっと違った雰囲気を楽しめたんじゃないでしょうか?
てか著者にシリアスは合っているでしょうか?不安です
けど、話の中で一番好きな部分です
感想を書いてくれている方
ありがとう!
とっても励みになります。
非常に長く書け~~~~~~~って感想が多いです
ありがとう!
感想や誤字脱字、物語の矛盾の指摘など、まだまだ待ってます
どんどんどうぞ!
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