その4
ドリュアスは藁を積んだ荷馬車に乗る男に
「ああ…のんびりし過ぎだ」
こっちに乗れ!逃げるんだ
「あれはモンスターの群れだからな!」
やられるぞ
と呼びかけた。
男はそれにどこかのほほんと
「いや」
と言いリリアを見ると
「その後ろの夫人はエルダスのアンドル・ルーカスさまのご婦人か?」
とつげた。
リリアはそれに
「私は構いません」
どうぞ
「ご一緒に」
と告げた。
男は笑み肩を竦めると
「いや、先に行ってくれ」
俺はのんびり行く
「人間と関わるのは好きじゃないからな」
とさっぱり告げた。
「ノースクロスの聖塔へ行けばフィーアが力になってくれるだろう」
さぁ、行った
さぁ、行った
そう言って手をピラピラと振った。
ドリュアスは乗ってくる様子のない男に顔を顰めつつ
「逃げろよ!」
命は大事だからな!
と言うと追い抜いて走らせた。
鳶色の髪をした何処かさえない男は彼らの馬車を見送りゆっくりと馬車から降り立った。
「なるほど」
統制されたモンスターの軍勢か
「…エルダスに眠っていた破滅の紋章が目覚めたってことは本当だったか」
…いやはや…
男はそう呟くと荷馬車を一瞥し
「しかし…まぁ」
せっかく買った藁を台無しにされてもなぁ
と呟き、手袋を外すと右手の平を見て笑みを浮かべた。
「それにせめてアンドル・ルーカス殿の妻とお子は助けてやらないとな」
目の前には土煙を立ててモンスターの軍団が迫ってきていたのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。