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変わり者の将軍は男装姫を娶る  作者: 雪野みゆ
第六章
23/27

6-4

 翌日、彩姫は痛む頭を押さえながら、馬を進める。


 大露まで同行を申し出てくれた楊一味とともに山岳ルートをひた進む。


 どこからか調達してきた輿に愁と白蘭を乗せてくれたので、彩姫たちの負担が減った。


 青藍は馬に乗りたいというので、芳磊と同乗している。


「彩姫。大丈夫か?」


「李翔様。大丈夫です。やはりお酒はダメですね。今後は控えることにします」


「ああ。そうだな。それがいい」


 少し残念だと思う李翔だ。


 酒を飲むと彩姫はさらに可愛くなる。


 たまには酔わせて可愛くなった彩姫を愛でたいのだ。


「それにですね。お酒を飲んだ後の記憶がないのです」


「……俺の話はどこまで覚えている?」


「ええと……草原を自由に駆け回っていた云々の辺りで記憶が途切れました」


 李翔は金づちで頭を殴られたような衝撃に襲われる。


(ほとんど序盤じゃねえか! あの後の大好きは? 俺の愛の告白はどこに行った?)


「申し訳ありません、李翔様。いつか続きを聞きたいのですが、ダメですか?」


 彩姫があまりにもしょんぼりしているので、李翔はダメだとは言えない。


「ダメではないぞ。任務が終わったら、ゆっくり聞かせてやる」


(今度は絶対に酒は飲ませない!)


「本当ですか?」


「ああ、約束する」


 嬉しそうに彩姫は笑った。



 予定どおり道程は進んで、三日目に最後の難関に辿り着いた。


 ここを超えれば、後はなだらかな丘となる。丘を越えれば大露の港はすぐそばだ。


「あと一息ですね。楊さんのおかげで早く到着できそうです」


 彩姫は現在地を地図で確認する。


 山岳ルートを熟知している楊は抜け道を知っていて、彩姫は要所要所で地図に印を付けていた。


「地図を書き換えるのか?」


「はい。演習の際に役に立つかと思いまして……」


「黄彩は軍を退役して将軍に嫁いだんだろう? そんなことする必要はないんじゃないか?」


 李翔と彩姫の会話に割り込んできた楊に指摘されて、彩姫はそういえばと思い直す。


「いいのです。李翔様のお役に立てるのですから……」


「へいへい。内助の功ってやつか」


 突如、かなりの上空で白耀が三回ピィと鳴き、少し置いて四回また鳴いた。


「黄彩!」


「はい!」


 咄嗟に李翔は黄彩と彩姫を呼ぶ。


「楊さん、愁様たちを連れて迂回ルートへ。弓矢を使える方は私についてきてください」


「相変わらずいい連携だな。黄彩を退役させない方がいいんじゃないか? 将軍」


 楊は李翔の軍にいたので、白耀の合図を覚えている。


「俺もそう思うが、仕方ないな」


 李翔は迅雷の馬首を白耀の声がした方へ返す。


「敵襲だ! 襲来に備えろ!」


 戦場のように李翔が下知をくだす。


「彩姫。余も弓矢を使える」


「父上は皇帝です。矢面に立たせるわけにはいきません」


「余に矢は当たらないよ。何せ妖怪だからね」


 巷で「妖怪」と言われていることを芳磊は知っている。


「ですが……」


「其方に弓を教えたのは余だよ。師の言うことが信じられないか?」


 彩姫に弓を指導したのは芳磊だ。娘に才能があると思った芳磊は、呉氏が止めるのも聞かずに本格的に教えた。


確かに芳磊の弓の腕は相当のものだが、それは的が止まっている場合だ。実戦とは違う。


「分かりました。ではなるべく私のそばにいてください」


 いざとなったら、彩姫自身が盾になるつもりだ。


「ところで何故敵がいることが分かったのかな? ここからかなり離れているだろう?」


 敵がいる位置はここから四里(二キロ)は離れている。しかも周りが高い木に囲まれていた。


「白耀の索敵です。最初の三回は敵襲の合図で高い上空で鳴いたということは、敵は弓矢を持っています。そして最後に四回鳴いたのは敵が四里離れているということです」


「すごいね。鷹にそこまで仕込むとはたいしたものだ」


「雛から育てていますから」


「我が国の軍が無敵なのが分かったよ」


 白耀の索敵によって敵の奇襲を素早く察知し、先手を打つ。


 この手で何度奇襲を防げたか分からない。


「それだけではありませんよ。我が国の軍は李翔様の軍だけではないのですから」


 芳磊は「そうだね」と頷いていた。

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