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傭兵聖女  作者: 崎ノ夜
62/159

11-04

 記憶がなくても体が覚えてるって、ホラー体験談? 04


 今回はスピリトもベッドで体を左右で揺れ始めた。それによって、元々栄養不良がちで細身の海唯が揺れているベッドのせいで横に倒れていた。それを見て、吹き出して笑ったスピリトだった。


「カファロ・ヒースのペンダントが道標になったと思います。その上、あの子達が出てきた途端、あなたに主従契約をつけようとした人を見かけて、ドラゴンが横取りにしようとも見かけて、ぶっっっち切れましたよね~あの子達、大半ヤンデレですが、ヤンの部分がほとんどで、小生も少々手こずらせましたよ~ふふふ~」


 イラ立たせるような微笑みで、スピリトは海唯へ手を伸ばして、彼女を引き起こそうとしているが……


「わー!」


 スピリトも急にベッドで横倒れていた。そのせいで、海唯は跳ね上げられた。


「んだよっ……」


「血……無理……吐きそう……」


 先、スピリトは海唯の腹を触ったから、何回前のループでコルフに銃で打たれた傷痕を触ったか、その指にはほんの少し血の赤がついた。それを見たスピリトは一気に目眩が襲ってきたから、しくしくする顔で霧を出して自分をその中に包まれてやった。


「はっ?…だから何で血が苦手な奴が毎度ここに来るんだよ……」


 せっかく廉を閉めてあげたんのに、こういう場合は何の反応をすればいいか分からない海唯は、とりあえず、大昔映画で見たセリフを言った。


「えっと……お元気…に?」


 それから、海唯はスピリトを医務室に置いといて、広場へ向かった。


 海唯が歩を出した直後、医務室が真っ白な光に包まれて、ここにいる第二騎士団員は全員が治されて、唸るような酷い表情はいい夢を見たかのように安息の呼吸になっていて眠りについた。


 その中に一番重症で、一番"死体くん"に近い銀髪の青年が目を開いて、ゆっくり身を起こした。彼は目の前の光景を信じなさそうに見ていて、自分の手を見ていて、突如に襲ってきた頭痛でピリッと感じたが、その痛みは一瞬で消えた。代わりに現れたのはぼんやりとした画像で、その画像の中にはいつも黒い影が目の前でウロウロしている。


 そのすべてを見ていたスピリトは廉の隙間からアキレスを見かけて、軽く嘆いたら再び霧の中に歩いて、この場から消えた。



 昼間の歓楽街。夜の賑やかさが想像つかないくらいの人気のなさだ。スピリトはキセルを吸いてから吐いて、横になっている体のラインが彫刻のように綺麗で、煙に巻かれてからか、儚く見える。


 憂い顔で炎天の空を見て、雲一つなく清々しいほとの青空だった。


『血が苦手だっていいんだよ。怪我が見たくないだっていいんだよ。自分を傷つけたくないって、何が悪い?』


 何故か海唯のその言葉が頭の中で響いてきた。嘆くように煙を吐いたスピリトはキセルをコッコッっと灰皿に叩いてからそのまま置いて、顔を両手で覆いた。


「……はあー、年のせいで感傷的になったのかね~」



 一方、王宮から出た海唯はまるで組み立てラインのように裏道へ向かって、すかした顔でチンピラ達を倒して、ついでに財布を盗んでから、クレインの頭を揉んで、一体何が起きたのかを反応出来ていないクレインと女の子を残して、海唯はそのまま列車時刻を急いでるようにこの場から去っていた。


「あ~あ、忙しい、忙しい~」


 三階立ての建物の屋上へ登って、海唯は下の祭り街を行き来してる人々を見つめていた。騎士団の制服を着ている者達はまだ来ていないようだ。


「おかーさん!くろいモジャモジャー!」


 後ろから急に大きくて、発音が濁っている幼稚な声が届いた。屋上で干している白い布団とシートの間からエプロン姿の若い夫人が慌てている姿が見えた。


 どう見ても先の声の持ち主とは思えない海唯はちょうど変と思ったところ……


「いらしゃー!おきゃくさまですか?」


 5才くらいの子供が海唯の目線に入ろうとしてるかのようにピュンピュンっとしていた。


「あの!何かご用ですか?」


 白いシーツの挾間から、影のように黒に包まれる人を見たら、それはまるで墨のように純白な空間を汚す異物だった。

 若い夫人が海唯を見る目は怯えだった。腕に抱えてる洗い物を構わずに置いといて、すぐさま子供のところへ走ってきて、抱き上がったら、海唯から距離を引いた。


 この時の海唯はまだ"双黒"がこの異世界ではどういう意味なのかを知らない。それでも、海唯は若い夫人へ近づくことはしなくて、微笑んでいながら話をかけた。そんな目で見られるのが慣れたからだ。


「ここは何のお店?」


「ヤドだよ~」


 次の瞬間で泣き出すような母親とは鮮烈な対比になった5歳児は、母の腕の中で天真爛漫の笑顔でそう答えた。


「知らない人とは話すなって言ったよね!」


「よぞらみたい!きれいー」


「ほら!黙りなさい!」


 若い夫人が凄い小声のつもりで5歳児と話してるだが、ヤンチャな子供はまだ母の怯えを理解できなくて、両手の指で輪を作って自分の目の前に置いた。どうやら、5歳児は海唯のような真っ暗な瞳を見るのが初めてで、それが夜空のように凄く綺麗だって伝えたいが、あいにく、若い夫人にもその本人にも届いていないみたいだ。


 海唯は最初から屋上の壁際で座っていたが、若い夫人のほうが少しつづ後ろへと引いていて、ここからすぐに逃げ出したいという顔だ。もちろん、海唯もそれを分かるだが、そんなよくあることより自分の目的を優先した。


「宿ね~一泊はいくら?」


「く、首輪……み、見せて……頂いても?」


「首輪?……ああ~」


 先ほどスピリトの話を思い出した海唯は若い夫人の今の行動を納得したように、壁際から降りて、下の街のほうへ指さした。


「私は第三騎士団の犬だよ~先に着いただけで、そいつらももうすぐ着くところだと思うが……あ!ほら、来たよ~」


 若い夫人はおどろおどろで下へ覗くと5歳児が先に母の腕から飛び出して、壁際のほうへドタバタ走ってきたら壁を上った。


「きしだんだー!」


「あっ!エッド!」


 手が滑って、若い夫人の絶叫と共に5歳児はそのまま三階立ての宿から落ちていた。


 子供の手が滑って体が壁の外を超えた時、海唯は片手で壁を支え何の迷いもなく落ちた子供と一緒に壁を飛び越えた。

 ナイフで瓦礫の隙間を狙い刺さって、減速し、ついでに三階の窓辺でかけている服を拾って、荷物を片付けるように子供を包んだ。でも、その思ひ寄らぬ重心の傾けによって、ナイフが壁から抜けてしまって、手からも離れてしまった。


 まばたきのように"あるモノ"が視界の一角から飛び過ぎてきた。ニヤっとして、海唯は子供をしっかり抱きしめてから、腰の力で体を空に回転し、足先がピッタリ落ちたナイフを蹴り落として、店のオーニングを結ぶ紐を切ったからオーニングがパッと開いた。


 ざっと計算してこの僅かな0.58秒での反応時間でここまで出来る人がいたら、周りの人々はその人のことを"人"だとは呼ばないだろう?それに、この雑技のような技を成し遂げる前提は子供が落ちる時点、あるいは、その前に飛び降りてからこそギリギリ、落ちている子供が地面で綺麗な脳みその花を咲かせる前に届けるのだ。


 そして、海唯は出来た。いいえ、海唯は出来る。


 なら、海唯は子供が落ちたのを見て、瞬時に反応し、子供を救ったのか?答えは否定だ。依頼人や護衛依頼の対象はともかく、赤の他人でただの子供を助ける理由はない。

 それで答えは一つだけ残った。海唯は事前に子供の墜落を分かったからだ。それは"ループだから"ではない。何せ、これは"初めて起きたこと"だから。


 そう。子供は落ちたではなく。"落とされた"のだ。


 でも、殺すつもりはないし、怪我させるつもりもない。ついでに、母親に子供のことを身を持って助けた事実も見せつけられたし、騎士団もその声で呼び寄せられたなら、むしろ、一石二鳥ではないか!



『ガェードカンーガラガラーゴンッ!』


 急な響きが一瞬ザワツク街を静かにし、それからすぐ状況を確認しに来た第三騎士団とその外野で野次馬してる人々だった。

 床で散らかってるのは破れた果物、いくつかの店のオーニングと元々ベランダで干してある服。

 一体何が落ちたのか、慎重に近づく騎士団団員が子供の泣き声を聞いたら心臓が一瞬止まったように慌てて散乱してる物をどかして、子供の様子を確認した。


「エッド!エッド!」


 人ゴミの中を懸命に入り込んで、若い夫人が鳴きながら我が子の名を呼び続いた。


「この子の母親ですか?子供は無事です。このくらいの子から手を離してはいけないので、ご注意ください」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 前髪がほとんど目を隠している騎士団員が丁寧な言葉使いの割にどこかキツい口調で泣いてる子供を抱き上げて母親に渡した。


「や~危ない危ない~無事でよかったね~カクテル副団長~」


 散乱な瓦礫の滓と服に埋もれた海唯は身に付いた埃を叩いてから、馴れ馴れしくその騎士団員の肩を組んで、半身を傾けて若い夫人に親しげの微笑みを向けた。


「あなた様が騎士団の方だと疑い、先は本当に失礼いたしました!エッドを助けてくださり本当にありがとうございます!うちの宿の部屋、一晩どころかお好きにお使いくださいませ。もちろん、お代は取りません!」


「えー!本当ぉっうぁっ!?」


 一瞬嫌悪感が触れられた肩から全身を走ってきて、騎士団員が海唯の腕を払おうとしてるが、海唯の反応がもっと早くて、騎士団員の肩を組む手から滑り出した針でその団員の首に当てた。


「えーいきなり何なの?照れないでくださいよ~カラメル副団長ぉ~」


 海唯は団員の耳元でいたずらのようにそう囁いてから、団員は舌打ちをして、早く若い夫人をこの場から離れるよう話かけた。


「奥さん、国民の皆さんに安全の暮らしを支えることが我ら第三騎士団の仕事です。お代はちゃんと払わせてください」


 その誰かの名前か分からないし、二回とも違う名で呼ばれていた団員さんは、平然の顔をして若い夫人にそう返したが、首から届いたジンジンする殺気に頭から水を浴びたようにぞっとした。彼は顔を向けて、自分の肩を組んでる人の顔を見ることすらできない。


「センパイーわっ!どうなってんっすか!?」


「シ二、ここの片付けを……」


「ってか、テメー、誰だー!?あー!」


 センパイさんの話は終わっていないうちに、シニはすでに海唯を絡んできた。センパイさんは海唯が針をしめたのに意外と思ったが、シニの突っかかりに対して悪意を示していないのを見て少しほっとしたようだが、その自分の肩を組んでる腕も退いて欲しいとも思った。


「何馴れ馴れしくうちの隊長の肩組んでんっすか?あー!?」


 どう威張ってもチワワにしか見えないシニが自分が思ってる一番脅しに見える顔で、海唯にそう言いながら、センパイの肩を組む海唯の腕をパッと退かした。


「えー?隊長?テクノロ副団長に用があるんだけどね~まっいいや~!な~チビ、お前らの副団長に会わせろよ~」


 その敏感ワードをキャッチするアンテナが頭に植えているように、シニがかっとなってセンパイさんが止めに入る前に手を上げて海唯へ殴ってきた。

 もちろん、そんな悪意すら持っていない子供の喧嘩同然な殴りに、海唯は飄々と躱して、身を回したら、一つの袋を若い夫人に渡した。


「うちの隊長にお代を払えってシバかれたので、これで足りるかな?」


 急に呼び止められた若い夫人はビックリしたが、海唯の完璧な笑顔の前に思わず肩の力を緩めた。何せ、海唯は息子の命の恩人なんだから。


「えっ!ええ、はい。あーいいえ!銀貨二枚で十分です!」


「そう?~じゃ、夜に行くからね~」


「はい、部屋を整いて、お待ちします!」


 若い夫人がお礼をして、宿に戻ったらシニはやっと気づいた。


「あー!テメー!俺の財布!」


 こうして、シニが海唯に売った喧嘩は徐々に第三騎士団のほぼ全員を巻き込んで、王宮前広場での市街戦、改めて、ただのガキ達の大喧嘩に成り果てた。




 記憶がなくても体が覚えてるって、ホラー体験談? 完





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