7-02
片足は第 1 象限でy=-x^2+16x+5の形で、片足は第 4 象限で y=-2x^2+1の形をしてる 02
全身は約3メードで足は6本、うなぎのように滑らかな皮膚が地面を這いつくばって雑草を潰していく、ガラスを引っ掻く音のような鳴き声だが、口らしい口はない。目もなく、むやみに暴れまわるように見えるだが、確実に騎士の方へ向かっていく。
「そっち回って足を止めろ!」
「はあ?何だって?」
パサパサと草を叩く音にその鳴き声、騎士達の連携を砕き、交流の手段を切った。
「クソ!ダメだ!刃物が入らない!」
剣を大きく振り落とし、その足を止めようとしてもその皮膚に沈んだら弾かれ、傷一つ付けない。刺さるのも同じく沈んだら弾かれ、一部の騎士達は剣で攻撃するのを辞めた。
最初は一本、それから何本か太い蔓が上から飛んできた。蔓の先には矛があって、地面を力強く掴む。その大きな体を囲み、固定した。動けば動くほど締め付けられて、暫く経ったらようやく6本の足も止また。
「一隊、アグイラ捕縛成功」
センパイさんは礼をして、そうカファロに報告した。
カファロが隣にいる魔法科の職員に目線で命令したら、職員が「戻れ」って言って契約魔獣-アグイラを呼び戻し、大きな体が縄に締め付けられてるのに一瞬で最初からいなかったのように消えた。
「どうだ!見たか、俺たちの実力よ!」アグイラが呼び戻された途端、シ二がすごいドヤ顔で海唯に話した。
「……ハアー」
海唯はつまらなさそうな顔で階段で横になって、はしゃいてるシニに向かってため息をしたから、シニがまたキレた。
「人の顔に向かってため息するな!何様のつもりだお前?!ムカつくー」
「クレインが連れ戻されたとは言え、何で私はこんなとこでバカ達の相手にしなきゃなんねーの?」
よっこいしょってだるそうに体を支え、海唯は最後の一口の栄養剤を飲み干して、適当にシニに投げた。
「人のことバカって言う奴の方がバカだ!」
「落ち着け」
センパイさんは空のパックを叩き落として、シニの襟を掴んみ暴走を止めた。
「副団長、俺達一隊は、穢に影響されて暴走状態の魔物を捕獲し、魔法科に渡す。魔物を殺すのは目的ではないですよね」
そう言ってるセンパイさんは海唯を横目でチラッと見たら、カファロにそう言った。
「ああ、そうだ」
カファロがそう淡々と返したのを聞いてて、センパイさんは急にしゃがんで海唯と視線を平行にした。
なんの躊躇うもなく人の手足を折られる奴だ。それにそうさせる力と技も身につけてる。混乱の状況でも尚、多人数の目線を把握しその死角を取れた。飛び降りて不穏な姿勢ですら一撃で肺を刺せる。その上、人の恐怖を弄んでるような狂った笑い声。
あの時あの広場で最後までも気絶しなかったのは自分だけだって、団長も副団長も体であの時の状況を体験しなかったから、自分だけが分かる。思い出すのも怖じける、体が勝手に恐怖を覚えたのようだ。
こいつは狐狼護衛団のクズ共より遥かに超えたイカれ者だ。
「……あなたは今まで何人殺したんですか?」自分の恐怖が見抜かれたような目線で、センパイさんは指先が白くなるまで手を握って、そう静かに訊いた。
2人しか聞こえない声で「一々数えるか?」って海唯は微笑んで立ち上がり、そのまま第三騎士団の訓練場から去った。
「うちの部下は皆可愛いだろ?」海唯が廊下を歩くと団長室って書いてある部屋からにやけてる声が届いた。
「おっさんの可愛いは一番意味不明って知らない?」ノックすらせずに海唯はドアを開けた。
海唯に、第三騎士団の訓練を見に来てくれって言ったのはリヒルだった。でも海唯は乗る気じゃなかった。理由は簡単だ。国王との契約は"魔法科の研究に手伝う"だけだから、それに第三騎士団には目的を果たすための情報はいないと海唯はそう判断した。
それなのに、リヒルに見せられた一冊の名簿で海唯はその頼みを受けた。
そう、リヒルはなんの言葉もかけなかった。ただ一冊の名簿で海唯の決定を変えた。
「えー、そんな言われたらおじさん傷つくよ~」
「ふはは~でも確かに"騎士として"は可愛い奴らかな」
「アハハ~コーヒー?それともお茶?」
資料の山に溺れてるリヒルはそのめんどくさい書類仕事をほったらかして、ソファーの手すりに足をかけた海唯を招待した。
「酒~」
「こないだカファロちゃんに没収した~」
2人が一同にため息をしながら頭を横に振った。
「はい、どうぞ」リヒルがコーヒーを机に置いてから、海唯の向かいの椅子に座り、「では、うちの可愛い部下について語ろうか」
「……おっさんは私を信用してんな」海唯はカップを鼻元で嗅いてから、コーヒーを飲んだ。
「もちろん~兄ちゃんを信じない理由はもうなかったから」リヒルもコーヒーを飲んで、ニコニコそう言った。
「へ~そりゃどうもって言ったほうがいい?」
「いいえ、ありがとうはこっちの台詞だが、兄ちゃんには必要ないだろ」
「そう言われるようなことしてないだけだ」
「そっかそっか~兄ちゃんも可愛い子だね。17歳だけなのに大人ぶってる~」
リヒルの言葉を聞き、海唯は足を戻してカップを置いて、ちゃんと座った。
「お?話す気?」
「もともと話しに来たからな~」
「それはありがたい」
リヒルもカップを机に置いて、真面目な顔した。
「コミュの手段とか、攻撃のバラエティーとか、まーまだ色々問題はあるが、一番はセーフラインの問題だな」
「セーフライン?」
「"殺す気で戦う"のと"殺さない目的"とは相反してないってこと」
「……そっか、その点には考えもしなかったな」
顎の髭を触りながら思考に入ったリヒルを見て、海唯は話しを続いた。
「そうは言ったがすぐに切り替えるのは無理だろうね。それに、殺すことに抵抗があるのも仕方ない、おっさんならどうする?」
「"殺す気で戦う"なら、戦闘中で常に相手の弱みや弱点を付ける。逆に言えばその弱みをズレて捕獲する」
リヒルの答えを聞いて、海唯は意外と感じた。いいえ、意外というより、そんな思考もあるんだって驚いた。
なぜなら、"弱みをズレて捕獲"なんて簡単な一言だが、実現するには決して容易くはない。
穢の影響がますます深刻になっていくのもあって、リヒルは第三騎士団の力不足を実感した。なのに、今まで何もしなかったのは突破口がないからだ。だから、海唯に声かけたのに、
返した答えは甘ちょろ過ぎて、海唯は驚いたのだ。
「……ん~いいんじゃね?私には関係ないし」
「アハハ、正解じゃないようだな?兄ちゃんの答えも聞かせてくれないか?」リヒルは海唯の見下すような視線を気づき、いつものチャラ顔に戻ってそう聞いた。
「私、おっさんのことも可愛いと思ってるよ」
「お?照れるな」
「だからお前ら全員、騎士辞めた方がいい」
「ハハ、兄ちゃんは意外と正直に言うね」
コーヒーカップは空になった。海唯は立ち上がって、団長室のドアを開けて、真っ直ぐ出て行くだとリヒルがそう思ってるところに、海唯は振り替えて一言残してから離れた。
海唯が離れた後しばらくしたら、ドアノックの音が届いた。
「ダーテオ団長、書類の片付け終わりましたか?」
団長室に入ったのはカファロだった。
リヒルが散らかってる事務机で溺れて、ガキのようにダダこねてるのを慣れたように、カファロは資料本や申請書などを分類して畳んでからリヒルを椅子から蹴り落として、椅子に座り代わりに書類仕事をし始めた。
「カファロちゃん~俺への扱いを段々雑になってない?」
カファロは返事しなかった。
リヒルを床に横になってるまま話しをかけ続けていく。
「……あの子のことどう思ってるのかな~っておじさんはカファロちゃんに聞きたいな~」
「凄い、でも、怖い」
「そうなりたいと思わない?強くなりたいだろ?」
「いいえ。"強さ"は色んな形があるって分かった。俺は、俺の道を貫く」
あぐら座で床に座り、リヒルは頭をあげて自分の仕事を文句なしに引き継いたカファロをを見て微笑ましい笑顔した。
「カファロちゃんはこのまま変わらないでいてくれよ~じゃないとおじさんは悲しい」
「何言ってるんですか?」
「アハハ、先はね、おじさん言われたのよ『騎士辞めた方がいい』って」
リヒルがソファーで座り契約魔物を召喚し、翠色の水母が出てきたらリヒルの身を沿って嬉しいそうに滑り回ってる。
「こちらは魔法科に提出する書類で、こちらはサインが必要な書類です。きちんと目を通してください」
カファロはドンって書類をテーブルに、リヒルの前に置いて、また椅子にかけ片付けを続いた。
リヒルを第三騎士団の団長をやめさせるつもりはない、それに騎士をやめるなんて許せる訳もない、と言ってるようだ。
「それでさー、帰り際に『正解はないから、やりたいようにやればいい』っても言われたの
「ダーテオ団長はいつもやりたい放題じゃないですか?」
「アハハ~そうだね。カファロちゃんのそういうとこが好きだよ」
カファロの言葉は皮肉でも、嫌味でもない。単に今までのリヒルの行動を見てそう話しただけだから。それは、リヒルにとってとても力強い後押しだってことはカファロは知らない。
「ブクブク、吐き出して」
リヒルの命令を受け、水母がリヒルの身から下りて、徐々に床で集合し、一つになった。それから水母の体内からブクブクと水の泡が見えてきて、一冊の名簿が出てきた。
「これはなんですか?」
「奴隷市場のお客名簿。買い上げの"商品"の資料と値段も書いてある」
この層だけ病室の前に騎士が立っている。重なた三つの魔法陣の腕章から見れば、それは第二騎士団の者だ。
第二騎士団団員が看護師の制服を着ている人に頷いて挨拶してから、病室のドアを開けてくれた。
カルテと換えの包帯や薬を持ってる看護師も軽く頷いて病室のドアを閉めた。
「リリ・ハンナさん、体の具合はいかかでしょうか?」
看護師は優しい笑顔でそう聞いたがリリはずっと窓に向けてボーとしてる。それでも、看護師は軽く彼女の足を持ち上げ、汚れた包帯を解き、薬を塗ってあげた。
「早く立ち直られてはいかかですか?妹さんは心配してますよ……ああ、言い間違いました。"娘さん"でしたよね?」
「あんたっ?!」
目の中に驚きと恐怖をよぎったリリの口を布で塞いて、看護師はニコリっと話しを続いた。
「リリ・ハンナ。12の歳で教会に拾い、"清き聖体"として思い存分可愛がられた後、14の年で子を生んだ。元気な女子だね?」
口が塞がれ、声にもならない音で鳴き続く。必死に暴いても、腕すらままに上げられない体。
そんなリリを見ても、看護師は笑顔のまま述べていく。
「ようやく拳を振うしか能のない親から離れたのにな~、それでも娘が同じことに合わないように必死に外へ逃げ出したら、今度は奴隷商に掴まれて青楼へって、運がないね~」
首から耳まで赤くなるまで叫んでるリリ、涙が不甲斐なくボロボロ落ちてるだが、その目の中に宿るのは憎しみだけだ。
「ん~そうだな~当ててみようか?……反抗の目線に興奮してる豚共がまず頬を引っ張る。一回目、頬がジンジンして熱い。二回目、耳の中がピーって怪音を鳴る。三回目、頭がクラクラする。そして……」
リリの表情から憎しみのほかに、絶望の陰が蔓延していく。腕を半上げしてるリリは自分の耳すら防がれない。看護師の言葉に侵食され、抗う術はない。
「温くてヌルヌルの物にこじ開ける。体が裂けたような痛みに加えて、だんだん何も考えなくなってく。朧な視界に入ってるのは……」
「海唯!そこまでにしてください!」
白玉が唐突に現れるのは今が始めてじゃないが、海唯が関心してるのは白玉の声は外に届くのかってことだから、リリの口を塞いた手を離れた。
「もう少し静かにしろよ~白玉。私の魔力で姿も声も"形成した"だろ?だったら立場をわきまえて、ね?」
「その布も外してください」
「お前の出番はまだだ」
海唯は白玉の耳を切ろうとして、白玉は上へ飛んで逃げた。
「やっぱり刀はもうすり抜けないんだな。文字を解読するのは正解だ、知識も力だもんね~」
その言葉がなくても白玉は分かってる。海唯がもし本気で切ろうとしたら、今自分の耳はもう切り落とされたのだ。
「魔力量が少ない人でも、極限状態に追い詰めれば魔力を搾り取れます。そして、記憶をより鮮明に思い出すほど効果があります」
「自分で言ったなら同意と見なすね?」
「覆うつもりですか?」
苦笑いしてる白玉の問いに海唯は愚問のように肯定の答えを出した。
「……その意味……理解していますか?」




