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傭兵聖女  作者: 崎ノ夜
37/160

5-SP:《残夢共鳴》

5-04に入れたら長すぎるから、分けた!

笑う門には……何だっけ?死に戻る?SP:《残夢共鳴(ざんむきょうめい)


深夜。海唯は宿屋の女将さん-ティーナに部屋換えを秘密にしてってお願いしたら、戻の部屋の二つ隣の部屋に変わった。


カーテンも閉めて真っ暗な部屋、シャワー室から水の音。

脱がした服は風呂場で散らかってて、血跡の付いた包帯はシャワーの水に濡らし赤色に染まった。


雑に結んでた黒髪が解かれ、濡れた髪は少しくねくねしてる。

湯気の満ちた風呂場に居ても、水滴る白い肌を侵食してるタバコの焼き目は際立つ。

時間を経つにつれ増えんばかりの青痣や出来たての痂が、白陶器のような皮膚では余計に目立つ。


曇る鏡。人間の美に対しての想像を具現化したような顔立ち。その割に、首から下は見るに忍びない。

キレイに割ってる筋肉、無駄な脂肪がない胴体と四肢にある継ぎ接ぎの手術痕。何箇所で鮮明に残されてた数字やマークの烙印。


手を伸ばし、海唯は自分をぼんやりと映ってる鏡を通し、心臓の位置にある焼印をさする。

鏡が拭かれて、曇り散る。そこだけ明確に見えるようになった。

荊棘に纏われたギア。胸元に穴が開けられたようだ。


「……あ~服は一着だけだった……」


体を拭いて風呂場を出た海唯。裸のまま、まだ少し濡れてる髪の毛から水滴がぼたぼたと床に落ちる。

海唯は布団で身を巻き、ベッドに寄りかかって床に座ってた。

暗闇に慣れた目は何もない壁を見つめてる。


『助けを呼んでる人が見えないのか』


カファロの声が響いた。


「……見えてるよ、いつも……」


爆発された屍体、乱暴されてる子供、虐げられてる捕虜。人々を轢いて走る戦車、溶かせた指が銃の引き金にくっついた腕。絶望の顔。

それでも、海唯は目を背けていない。


『この子は姉を助けてって泣き願ってる』


クレインの声が響いた。


「……聞こえてるよ、ずっと……」


人々の叫ぶ声、銃の音、子供の泣き声、火の音、止まない爆発音にエンジンの音、人々の罵る声。絶望の声。

それでも、海唯は耳を背けていない。


「うっせー……うるさい………黙れよ……」


海唯は手を噛みづくながらそう言った。自分の声を響かないような、沈黙の叫喚。


突然、ある青年が海唯の視界に入った。黒い軍靴に黒いスーツ、狂気じみている嘲笑で海唯に背向き両手を開いた。


『ひゃははっは~ははっははははは~笑えやクズ共!ようこそ現実世界へ!ひゃははっははは~あ?ペット、何ボーっとしてんだ?』


瓦礫に混ざってる屍体、埃と泥と一体になってる弾の殻、綿がはみ出たお人形が穴の空いてた戦車の隣で座ってる。

泣き声、叫び声、笑い声が混ざってる街中にて、青年は後ろに付いてる海唯を気づいた。


『お前、化け物って呼ばれてんな?ひゃははは~ウケる~マジで平和ボケしたな!クズ共!ひゃははははは~ひゃははっは~』


青年は海唯の前でしゃがんでから頬を掴んで、無理やり持ち上げた。

懸空になった両足、つまずいた息。海唯は両手で青年の腕をしがみついた。


『……ぶっははははっははは~変な顔~ひゃははははは!っはあ~……ペット、笑わなきゃ損だぞ』


先ほどの景色は青年の笑顔で覆わせた。

先ほどの騒音は青年の狂笑で覆わせた。


海唯は無意識に手を伸ばし……そこには誰もいなかった。

何もいなかった。静かな部屋、自分の呼吸しか聞こえない。光のない部屋、でも目ははっきり見える。


床で横になり、足を曲がって膝を抱えて、緩々と目を閉じた。




笑う門には……何だっけ?死に戻る? 完



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