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傭兵聖女  作者: 崎ノ夜
31/159

4-06

これから4~5千くらいにする

私が読みやすいから~

職業:傭兵。種族:ペット。性格:最悪。06


町の外れ。あの森に向かう人気のない道に一つわき道がある。その道にそって歩けば、知らず間に雰囲気は一変する。愛と欲と嘘を満ちている歓楽街が来客を招き、誘惑する。

……と、それも夜の話だ。今は太陽が熱く輝くまっ昼の時だ。


蒔花閣(じんかかく)、あそこだ」

「おお~赤レンガ造り~」

「青楼街って人少ないな、昼なのに?」

「確かにいつもより人気がないです」

「何だ何だ~戦闘バカは常連さん?」

「リヒル団長のアホを縛って連れ戻す、の意味なら」

「「「…………」」」




カファロたちが入り口に着いた時、店員さんが事前に知ったようにお迎えしに出ていた。


「館主がお待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」


ピカピカに磨かれたフローリングが空間を伸ばし、高い天井にクリームイエローの光が浮いている。

入り口の両側の階段を上り、廊下に赤、ピンク、紫の植物がぶら下がってる。ラベンダーの香りがする。

他の店員たちが店の掃除をして、小さい子が食事や洗濯をしてる。

楽師は障子の向こうで琵琶を弾いてる音が聞こえる。舞人はちょこちょこ個室から顔を出して、ヒソヒソしてる。


遊女は見かけない。


三階の奥の部屋。金枝の木彫りが円になって飾ってある。中から煙、精確に言えばマリファナの匂いがする。それを知ってるのも海唯だけだ。


「どうぞ、お入りを」


案内の店員が木のドアを引いて、海唯たちに入らせてから、館主の後ろに立っていた。


「ふ~そろそろ来るとは思ってましたが、予想外のお方もいるとは~」


紺色の長髪が綺麗に三つ編みで結んで、流水のように胸まで垂らしてる。ニコリとする館主がキセルを持って、邪魅な姿で椅子で寛ぐ。


「初めまして、蒔花閣(じんかかく)の主のスピリト・ファシノです。小生のことをスピリトっと呼んで……」

「外道目!女の子を返せ!」

「ふ~何の話ですかね?」


スピリトは煙を吐いて、後に立ってる店員の攻撃準備を止めた。


「双黒の者よ、勝手にベッドに登らないでくれます?」


梅花の枝を描いてあるびょうぶの後ろ、ふかふかなベットで海唯はダイブしてる。この場のピリピリした空気を関係なく。


「双黒だと知っての上、殺すとはどういうおつもり?」

「第二騎士団の団長様は"黒"の危険性をご存知のはずだと思っておりますけどね」


「女の子をここに攫ってきただろ!」

「少し落ち着きましょう?王子様」


「一介の青楼の館主には関係のないはずだと」

「ふふふ~ごもっともです。小生はただ双黒の者を呼び寄せるつもりですが、まさかご立派な方々の勢ぞろいになるとは思っておりませんでした」


「その上俺の友達を殺したいとは何のつもりだー!」

「……すまんが、一人ずつ話してくれます?」


クレインが腕を抱えて、海唯が寝転がってるベッドで座ってた。


「ありがとうさん、王子様。それでは、団長様は何を?」

「呼び寄せるため?」


魔人、特に穢に当てられた魔人は、人間を見境なく攻撃してしまう。それは、5歳児でも分かる常識のようなことだ。だから見つかり次第殺すのが第二騎士団の役目。奴らは何にでも化けられるが、魔法を施す時に本来の目の色に戻る。つまり、金色の瞳を持つ者は魔人の他ないのだ。

誰かを呼び寄せるだけのため魔人だと訴え、ましてや、第二騎士団長であるアキレスの耳に入るよう言いふらすとは、目的が見えない。


「ええ~双黒の者に用があるですからね~騎士殿にご退場願えませんか?」


それでも、スピリトは煙を吹いて、余裕な笑顔をかけ続いてる。


「ああ~そうか~小生のした事が、何とお客様にお茶も出せずに帰らせようとは、君、茶を出して」

「かしこまりました」


後ろに立ってる店員が冷たいハーブティを人数分、机に置いてて、また戻の位置に立っていた。


「俺達もついてるのを知ったの上案内したのに?」

「ふ~小生は一介の商人です。騎士殿に無礼な真似はできかねますからね」

「その上、聞かれてまずい話を危険性のある双黒の者に言うってか?ならば、今ここで君を逮捕してもいいんだな?」

「誤解ですよ~聞かれてまずいのは小生ではいないと思いますね」


スピリトはベッドへ目を置いた。クレインが怒りながらこっちを睨んでいて、海唯はまったくの無関心。


「危険性を承知で殺したい双黒を、何らかの事件に巻き込みたい。それは逮捕になることではないんだと、第三騎士団の業務は凄く楽になる」

「第三騎士団の副団長様は噂通り仕事熱心なお方ですね」


会話が弾まない。スピリトがアキレスとカファロとの話し合いはピリピリを増して尚、ずっと遠まわしな言い方で、いまだに目的を話すつもりはない。

会話の中で、"双黒の者の命を狙ってる者がいる"、"これは騎士団に関わってはいけないグレイゾーンのこと"、 "高値で双黒の者の腕を買いたい"っと、スピリトはそれとなく海唯に示してる。

でも、向こうは何も言って来なかったし、こっちに興味がないと示すようにベッドでごろごろしてる。


まったく興味ないのにここまで来たことに、ここにいる騎士殿に感謝すべきか?でも、彼らがいるから目的を話すわけにはいかないから、どの道、目的を果たせない。

スピリトはキセルを吸ってから吐いて、目の前にいる掴みどころの無い双黒の者に、もはや手上げだ。


そんな時、どこに引っかかったかは分からない双黒の者はまさか急に話かけてくれた。


「はー、おい、細目」

「ふふっ、小生のことでしょうか?ようやく、小生と話す気になりましたか?」

「私を殺したい奴は誰かなんて全く興味ないし、面白がるため火遊びするつもりもないし、金も興味ない」


スピリトからの暗示を全てゲットした上で、興味ないとはっきり言った海唯には、スピリトは最悪の手段を取るしかないと判断し……


「ふ~それは想定外ですね……仕方あるまい、王子様、騎士殿……言いにくいことですが……蒔花閣(じんかかく)の花魁は魔人です。うちの女の子達は皆、その魔人に連れ去られたのです」


スピリトは輪の形をしてる煙を吹いて、キセルを下ろし、事実を述べた。


「「「!!!」」」

「へ~最初から言えよ~よし、話を聞こうじゃないか」


アキレス達が驚いてる割に、海唯は案外その話に食っ付いた。

海唯はハーブティを嗅いてから飲んで、ニヤリとスピリトに話を続けろと催促した。


「"花魁は魔人"って?」

「ほう?小生の話に乗ると?」

「それって本当なら、利用されてやるよ」

「ふふっ、見返りを求めないとは、一番怖いですね」

「魔人に興味があるって、それ自体が見返りって言ってもいいんだよ」

「はは、黒を持つ者は曲者揃いと言われますが、魔人に興味がある人とは初めて会いましたね」



蒔花閣(じんかかく)の花魁は魔人だ。

荊棘の先に咲いた鮮やかな花のように美しくて危険。傾国の美貌を持つ花魁はそう噂話をされてた。遊女達の憧れで頂点。一目を見るため爭って歓楽街に訪れる男達が次々と門前払いされたから、ますます一層の神秘と気高さを増しつつ。

彼女のその言葉で言い表せない姿に、傾心しない人はいない。

彼女のその優雅な一挙一動に、恋慕しない人はいない。

彼女のその魅惑な声を聞いて、余韻が残らない人はいない。

欲しい。自分のモノにしたい。彼女を見た男達は皆そう願ってる。


そして、怪奇が起きた。それは、雨がしとしと降っている夜の日に。


部屋の中で花魁は寝てるように息を止めた。

それを一番発見したのはスピリトだった。

花魁の喉から放射状で血が障子に散らかして、徐々に逆流してる。

心臓の鼓動が止まっていく花魁は、息の根が止まっていく花魁は、体が冷たくなっていく花魁は、金瞳を光って再び目覚めた。


「人間は残酷でありんす。うちが大事に召しがります」


目覚めた花魁はその一言を残し、瞬きの間に部屋から消えた。

その光景を目にしたスピリトは急な悪寒に襲わり、他の部屋へ飛び出した。

隣も、隣も、その隣も。次の部屋も、次の部屋も、その次の部屋も。

蒔花閣(じんかかく)の遊女達はその一瞬で消えた。

残されたのは唖然としてるお客達と呆然としてるスピリト。そして、花魁の部屋の真ん中に浮かぶ黒い球だった。


蒔花閣(じんかかく)の花魁は魔人だって噂されてた。そして、その夜を境に本当に魔人になった。魔人に体を乗っ取られた。


「花魁はうちの看板です。魔人から取り戻してくれません?」

「生きてるとは限らないだろう?その話じゃむしろ、死んだ確率の方が高い」

「消えた瞬間、うちの花魁が"助けて"と申しました」

「ふん~じゃ、他のは?」

「そうですね、ほかにもようやく仕入れた上物がいたし、できる限り頼みたいです」

「商品だから?」

「ええ、小生の大切な商品ですから」


海唯の問いに二つ返事で答えたスピリト。

アキレスは不快な顔をした。カファロはスピリトに訂正しろっと低い声で言った。


「ふざけるな!貴様は人を何だと思ってるんだ!彼女達は貴様の商品ではない!生きた人間だ!」

「落ち着きましょう?王子様。奴隷市場に出されたのを小生がお金を払って買ってきたんですよ?」

「奴隷制は廃棄した!」


クレインは頭に血が上って、微笑んでるスピリトに向かって怒鳴った。

皆の反応をただ静かに見てる海唯だった。


「細目の話に乗ると、女を商品扱いしてる奴の仲間入り。でも、そのまま何もしないと、その女達は商品の価値すら失くなって、死ぬ。どうすっー…」

「違う!彼女達を青楼(ここから)も救うんだ!」

「へ~ん~じゃ、頑張って~」


海唯はニコニコで他人事のようにクレインに手を振った。実際も他人事だが、そう思ってるのは海唯だけだった。


「ん?魔人に興味はあるが、人助けは興味ないよ?私。だから手を貸すと思うなよ。ああ~それと~銀髪くんはこの茶番に乗るって言ったら、私全力で邪魔するから、そのつもりで」


海唯はそう言ってアキレスにニコニコした。


「なっ!?貴様はそんな奴だと思ってなかった!もう貴様なんか友達じゃない!絶交だ!」

「海唯、見損なった」


クレインとかファロが海唯に怒って出ていた。店員さんの案内で花魁の部屋に向かった。


「双黒は聞いた通りのクズですね」

「誰から聞いたのかな~?細目野郎」

「ふふ~小生のお友達からかな?~さて、結界に入って、魔人さんに会うため、小生達も行きましょう?ご案内します」




職業:傭兵。種族:ペット。性格:最悪。 完


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