キミといた毎日
「ねぇ………………
拓海…」
私は、心友の
紗知から
もらった花を病室の
小さなタンスに
置く拓海の名前を
呼んだ。
「ん?」
拓海は振り返りながら
言った。
「私…
死にたくないな…」
私は、今の自分の
思いを拓海に告げた。
じはらく沈黙が
続いたが
「何、言ってんだよ。
死ぬわけないだろ」
拓海はどこか
遠い所を見つめ
言った。
「だって、私あと
11ヶ月の
命なんでしょ?」
私は、床を
見つめてそう聞いた。
すると、拓海は
私に近づいて
ぎゅっと
私を抱きしめた。
「俺が、ずっと
傍にいる。お前を
死なせたりはしない」
「…………っ!
死にたくないよぉ…
ねぇ…!拓海ぃ…っ」
その時だった。
「………っく…
ハァ…ハァハァハ…」
息が出来ない。
拓海…。
「おぃ…。
彩?!
おいっ!」
私は、意識を
失った。
あ…。
拓海の声がする。
「………かしぃよ!
あんた、ちゃんと
診たのか?!
おい!」
『申し訳ござい
ませんが…
こればっかりは…』
ねぇ拓海、
何で怒ってるの?
拓海が
近づいてくる。
あっ椅子に座った。
「………のやろう…。
…っ!……っく」
泣いてる?
ねぇ、拓海?
私は目を開けた。
すると、案の定
拓海は泣いていた。
「たく…み…?
泣いて…る……?」
「っあぁ、彩。
泣いてないよ。
あくびだよ。あくび」
嘘つき。
「先生、
何だって?」
「聞いてたのか?」
「うん…で
何だって?」
「ん…あぁ。
何でもないよ…」
「何でもなくない。
私、拓海が怒る声
聞いてた。
教えて。」
私は、真っ直ぐ
拓海を見つめて
言った。
それに、気付いたのか
拓海は、
話し始めた。
「彩の命がさ…
あと……1ヶ月………
もたないかも…
だってさ……ハハッ
こんな、事って
あるんだな。
11ヶ月から
1ヶ月だよ。本当
参っちゃうよな」
ねぇ、拓海。
泣いていいよ。
私の、前だからって
我慢しないで。
私が泣きたく
なっちゃうよ。
ポタッ ポタッ
涙は少し流れ
始めると止まる事を
知らない。
「ごめんな…
本当にごめんな…」
「何で、…っ
拓海が…………
あやま…る…のぉ…」
神様、1ヶ月
もたないかもって
聞いた時、正直
驚いたな。
悲しいよ。
「でもさ、俺が
ずっと傍にいるから」
「ありがとう。」
拓海は、次の日も
次の日も毎日欠かさず
来てくれた。
そして、3週間後。
「先生っ!
早くっ!」
「どうしましたかっ」
「彩が、
苦しんでんです!」
「彩さぁんっ!
聞こえますかー!」
あぁ…拓海の声だ。
紗知もいる。
お父さんもお母さんも。
みんなと、
話したいのに
動けないな。
あっ拓海の手が
私を包んでいる。
ねぇ、拓海。
君といた毎日は全部
素敵な思い出に
なったよ。
ありがとう。
ぴーーーーーー…
「彩………?」
ありがとう。
拓海。