幼馴染の後悔
「んん…ここは……?」
白を基準とした無機質な部屋で、ベッドに横になっていた。
病院だろうか。しかし病院という感じでもない。
俺が見知らぬ所に困惑していると、ドアが開いた。
「おはようございます。お目覚めはいかがですか」
「ど、どうも」
そう言いながらドアから黒服を着用した黒髪の眼鏡の女性が入ってくる。
急な来訪に戸惑いつつも会釈をした。
「あなたは…?ここはどこですか?」
起きてから疑問に思ったことを尋ねる。
女性は俺がこの質問をすることをわかっていたかのように説明を始めた。
「私は木崎智美と言う者です。本日から私含め、他12名が蒼太様の担当護衛官を務めさせていただきます」
「そしてここは、屋敷の地下にある医療施設の最高レベルの部屋となっております。この外にも、1mおきに護衛が配置されています」
「は、はあ……」
よくわからないがここは家ってことでいいのか?
「もうすぐお嬢様がご到着になられます。私は外で待機していますので、なにかあればお申し付けください」
「…ありがとうございます」
ここまで厳重にする必要があるかと疑問に思うが、千聖なりの思いやりなんだろう。
しかしこの規模に、千聖が何者なのか知りたくなってしまう。
五分ほど経つと、ドアが開いた。
「そーた……」
「お、千聖」
千聖は申し訳なさそうに眉をひそめて入ってきた。
いつものそーちゃんではなくそーたになっていることから、相当落ち込んでいるのだろう。
それに、今回の件は千聖はなにも悪くない。
「そんな落ち込んだ顔するな。千聖はなにも悪くないだろ?」
「ううん…ちがうの…」
どうしたものか……。
俺が襲われたことが自分の責任だと感じているようだ。
千聖は心優しいからそう感じてしまうのだろう。
なんていい子!まるで天使だわ!
俺が脳内で変なことを考えていると、千聖が口を開いた。
「私が悪いの!そーたが襲われること知ってたのに…私は…私はっ」
「待て待て待て。知ってた?何を言ってるんだ?」
「…実は、あの女の近くにいた時、こっそり盗聴器を付けたの……それでそーたがおそわれるって知って……」
近くにいた時って、千聖が神代たちの背後からいきなり現れた時か…。
盗聴器から知った情報だから、相澤が言ったってことだろ?
なら千聖が謝る必要なんてない。
俺を一人にさせたのも、なにか理由があったのだろう。
幸い、俺はなんともないし、なにも問題は無い。
「千聖、それは相澤が仕組んだことだろ?ならお前がそこまで落ち込むことはない」
「でも…」
「ああもう!じゃあ今度なにか服でも買ってくれ!それで許してやる!」
「服……?」
千聖は許してやると言う言葉に反応し、少し晴れた表情を見せた。
「ああそうだ。許してやる」
「ほんとに?」
「本当だ」
千聖の表情がだんだん明るくなってくる。
なんとか元に戻りそうだ。
「そうだな。まあ三着くらいでゆるし……」
「わかった!じゃあたくさん用意しとくね!!」
「いや、俺はそんな……」
「じゃあねそーちゃん!私用事ができたから!」
そう言って嵐のように去っていった。
俺は千聖が退出した部屋の中で一人、ため息を吐いて呟いた。
「少しは話を聞いてくれ……」
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