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勉強嫌いの俺が成長する話

人生で最も憂鬱な夏休みが始まろうとしている。俺、桜井大和(さくらいやまと)は夏休み前の最後の授業を終え教科書やノートをかばんに詰めながら大きなため息をついていた。今は高校3年生でありいわゆる「受験生」ってやつだ。どこで見た記憶かわからないが頭に「必勝」って書かれたはちまきをして机に向かい、汗水垂らしてカリカリペンを走らせるあの誰かさんに自分もなるということだ。


これまで夏休み前ってのは最高にハッピーだった。旅行、プール、祭り、…楽しいことやりまくって最終日で宿題の読書感想文を穴埋め作業のようにこなす。なんて平和なんだ。夏休みバンザイ!って感じだった。


しかし今はどうだ。部活もなくなり目の前にあるのは俺が最も嫌いな「勉強」。しかも人生に影響のある試験が控えている。これから始まる夏休みのつらさを想像してまたおれはため息をついた。


バカではないけど、おれはめちゃくちゃ勉強が嫌いだった。楽しいと思ったこともないし、机に座っていることすら苦痛なくらいだ。


かばんに荷物を詰め終わり下駄箱に向かって歩いていた。すれ違った何人かの知り合いに「じゃあね、また」と声を交わし、校門を出た。どうせ明日も補習があって顔を合わせるわけだし。


おれはバス通学である。田舎出身であるから自転車や徒歩は不可能。

1時間に1本という逃したら絶望的な線しかないのだが腕時計を見たらバス停到着の10分前。余裕で間に合っている。


いつも通りスマホに入っているアプリを開いて時間を潰そうとしたところ、隣から声がした。


「君、勉強嫌いでしょ?」


最初は自分に声をかけられたとは思わなかった。

でも今度は肩を叩いてきた。


「君、勉強嫌いでしょ?」


スマホから目を離し、声のする方を見た。そこには赤いスーツを着て、ちょび髭を生やし、髪を七三に分け、薄ら笑いをしたおじさんが立っていた。うん。不審者だ。


知らない人にはついていっちゃいけないよ、といういつかの教訓を思い出し、このおじさんのことを無視しようと思ったが奇抜すぎる格好におれは興味を持ってしまった。


「どなたですか?」

だれもが聞くだろう質問を奇抜なおじさんに投げかけた。


「わたくしはセバスチャンと申します。あなたは桜井大和さんですね?」


色々めんどくさそうだ。まず日本人じゃなかった。セバスチャン?どこの国の人だ?それにおれの名前知ってたぞ。あー、わかった、ストーカーだ。夏休み前日に面白いことが起きたぞ。もういいや、どうにでもなれ。


「そうです。でもどうして俺のこと知ってるんですか?」


「それはもちろん、あなたは選ばれ者だからです。」


「選ばれし者…?」


頭にはてなマークを浮かべているとセバスチャンとかいうおじさんは右手を高く上に上げて指をパチン!とはじいた。その音は遠くまで鳴り響いた。


すると目の前の景色に異変が起きた。空間が歪んだようにねじれて、目の前にいたセバスチャンもぐわんぐわんになった。


「え、え、何したんですか!?」


するとセバスチャンは一言

「では、参りましょう。」



そのあと俺は気を失った。どれくらい気を失っていたのかわからない。


再び目を開いた時、さっきまでとはまるで違う景色の中に寝転んでいた。


「どこ?ここ。」



こうしてこれから俺の想像を超えた不思議な世界でのストーリーが幕を開けた。そして不幸なことにこのストーリーの大きなカギを握るのが、おれの大嫌いな「勉強」であった。

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