スーパーデビルハンター
ここにやつがいるのか……。まあ、このスーパーデビルハンターの手にかかれば闇の悪魔なんて一瞬で……おっと、噂をすればなんとやらだな。
「おい! 闇の悪魔!! おとなしく俺に敗北しろ!!」
「えーっと、お前、誰だ?」
「俺か? 俺は生まれも育ちも教会のスーパーデビルハンターだ!!」
「そうか。でも、学校で戦うのは色々とまずいから僕の家の近所にある公園でやらないか?」
「ダメだ! 俺は今、ここでお前を倒したいんだ!!」
「はぁ……ここ、生徒や職員の目がある学校の敷地内かつ校門の近くなんだが」
「え? あー、そういえば、そうだな。よし、じゃあ、公園まで案内しろ!!」
「分かった。夏樹、先に帰っててくれ」
「えー、お兄ちゃんが戦ってるところ見たいからやだー」
「そうか。分かった」
「あ? なんだ? 乳臭いガキは。お前の知り合いか?」
「……妹だ」
「え? こいつお前の妹なのか? へえ、なんというか色気ねえな」
「……そうか?」
「いや、見りゃ分かるだろ。出るとこ出てねえし、童顔だし、背低いし、骨と皮しかなさそうだし、まあ、要するに全体的に弱そうってことだ。なあ、お前、なんで生きてるんだ? というか、なんで生まれたんだ? なあ? なあ?」
「……はぁ……公園まで案内する。ついてこい」
「へいへい」
ま、まずい……。お兄ちゃん、マジギレしてる。どうしよう、止めた方がいいのかな?
「夏樹、お前も早くこい」
「は、はいっ!!」
「うへえ、よくあんなのと毎日一緒に暮らせるなー。俺だったら即売るぜ」
「黙って歩け」
「へいへい」
あー、この人、死んだな……。
*
家の近くの公園。
「よし! そんじゃあ、さっそく始めようぜ!! まあ、お前は今日、お前を倒すためだけに開発された、このグレートブラックスーツの養分になるんだけどな!!」
「……なあ、もう始まってるのか?」
「え? ああ、とっくに始まってるぜ。ほら、早く来いよ」
「いや、お前はもう僕に敗北している」
「はぁ? お前いったい何を言って……」
あ、れ? 俺、いつのまに切られたんだ? そもそも俺はいつ攻撃されたんだ? ああ、やべえ……体バラバラだ……。でも、俺なんで生きてるんだ?
「……謝れ」
「あ?」
「夏樹に謝れ」
「はぁ? なんだ? お前もしかして妹をバカにされて怒ってるのか?」
「ああ、そうだ。だから、お前の体を切断したあと人間の闇でかろうじて生きられる体にしてやった。別に感謝しなくていい。さぁ、さっさと謝れ」
「お、俺はお前みたいな悪魔の言いなりにはならねえ! 殺すならさっさと殺せ!!」
「殺さない。謝るまで殺さない」
「お兄ちゃん! 私のことはいいから早くこの人を楽にしてあげて!」
「うるせえ! ゴミは黙ってろ!!」
「……ゴミ、だと?」
「や、やめて! お兄ちゃん! この人を殺しちゃったら本当に闇の悪魔になっちゃうよ!!」
「ダメだ。お前をバカにした罪はどんな罪より重い。今すぐ地獄に送ってやりたいが、その前に謝罪させないと僕の気が収まらない。だから、そこをどけ」
「やだ!」
「どけ」
「どかない!!」
「夏樹、頼む。どいてくれ」
「いやだ……」
あれ? なんかお兄ちゃん狙われてない? でも、今ここを動いたら確実にお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなる。それだけは絶対ダメ!!
「今だ! 俺だと撃ち抜け!!」
「仲間を呼んだか……。でも、それじゃあ、僕を倒せない」
いや、倒せる! この日のために俺たちは一発で超級悪魔を殺せる弾丸をかき集めてきたんだ!! 今日がお前の命日だ! 闇の悪魔!!
「……これが教会とやらの限界か?」
「……嘘、だろ? なんで死んでねえんだよ」
「闇の悪魔を倒すには人間の闇の発生源である人間を滅ぼす以外、術がない。お前たちはそんなことも知らずに僕を倒そうとしたのか?」
「そ、そんな……じゃあ、俺たちの努力は無駄だったってことか?」
「まあ、そうなるな」
「う、嘘だ! お前なんかに俺たちが負けるはずがない! 俺たちは最強だ! 俺たちに敗北はありえない!」
「そうか。よし、それじゃあ、教会のメンバー全員を人間の闇のエサにするとしよう」
「や、やめろ! 他のやつらは俺に協力しただけなんだ! 全責任は俺にある! だから、他のやつらは見逃してくれ!」
「なら、謝れ。今すぐに。じゃないと教会が終わるぞ? お前のせいで」
く、くそ……。なんでこんなことに……。
「……た、頼む! 許してくれ! 俺が悪かった! 心底そう思ってる! だから、俺の居場所を……帰るべき場所を消さないでくれ!!」
「……次はないぞ」
「ほ、本当か!!」
「ああ、本当だ。ほら、さっさとここから立ち去れ。そして二度と僕たちの前に現れるな」
「か、感謝する! ありがとう! 本当にありがとう!!」
「うるさい、早く帰れ」
「は、はいー!!」
はぁ……ダメだな。夏樹(僕の実の妹)のことになるとつい頭に血が昇ってしまう。
「お兄ちゃん♡」
「……なんだ?」
「よく我慢できたねー、えらいえらい♡」
夏樹はニコニコ笑いながら僕の頭を優しく撫で始める。
「いや、僕はまだまだだ。もう少しで殺すところだった」
「そうかな? お兄ちゃんから怒りは感じたけど殺気は感じなかったよ?」
「……気のせいだ」
「もうー、素直じゃないなー、お兄ちゃんは。でも、かわいいから良し!!」
「かわいいか?」
「うん、かわいいよー。それより今日の晩ごはんどうする?」
「うーん、そうだなー。夏樹は何がいい?」
「私はお兄ちゃんの手料理ならなんでもいいよー」
「それが一番困るんだが」
「だってー、お兄ちゃんの手料理全部おいしいんだもん!!」
「そうかなー?」
「そうだよー!」
その様子を見ていた座敷童子の童子はほっと胸を撫で下ろした。雅人さんが完全に闇の悪魔にならなくて本当に良かったです。誰かを殺した時点でアウトですから。
「……とっとと闇堕ちしなさいよ」
今の声はまさか……。はぁ……かなり厄介なのが来てしまいましたね。




