よろしい。じゃあ、服脱いで
昼休み……保健室……。
「お兄ちゃん、とりあえずベッドに横になって」
「なんでだ?」
「なんでって、今から治療するからだよ」
「治療か……。メスとか使うのか?」
「手術はしないよ」
「じゃあ、何をするんだ?」
「うーん、心のケア、かな?」
「なるほど。分かった。お前の言う通りにするよ」
「よろしい。じゃあ、服脱いで」
「え?」
「あー、上だけでいいよ」
「そうか。分かった」
僕が夏樹(僕の実の妹)に言われた通りのことをすると彼女は僕をベッドに押し倒した。
「ちょ! いきなり何す……」
「しっ! 静かに!! 今、お兄ちゃんの心臓の音聞いてるから」
「お、おう、分かった」
できれば、やる前に一言言ってほしかったなー。まあ、いいか。
「うーん、特に異常はないね」
「え? ないのか?」
「うん。怖いくらい健康そのものだよ」
「そうか。じゃあ、なんでもやもやしてるんだ?」
「それはやっぱり心の問題じゃないかなー。大丈夫、お兄ちゃんは闇の悪魔なんかじゃないよ」
「じゃあ、何なんだ?」
「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだよ。この世にたった一人しかいない私の大事な大事なお兄ちゃん。優しくて面倒見が良くて頼りになる理想のお兄ちゃん」
「な、なんか言葉にされると照れるな」
「本当? じゃあ、もっと言ってあげようか?」
「いや、いい。もうお腹いっぱいだ」
「分かった。ねえ、お兄ちゃん。少しはマシになった?」
「何がだ?」
「何がって、もやもやだよ」
「もやもや……。あー、なんか楽になったな。いつのまにか霧が晴れたみたいだ」
「そっか。良かったー、お兄ちゃんが元気になって。原因は多分、自分が闇の悪魔だって自覚したせいだね。でも、気にすることないよ」
「そう、なのかな?」
「後頭部にもう一つ口がある私が言うんだから間違いないよ。もう大丈夫そう? 一人で立てる?」
「ああ、大丈夫だ」
「そっか。じゃあ、午後の授業も頑張ろうね♡」
「ああ」
夏樹、お前はいろんな意味で強いな。




