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闇の悪魔とアズラエルとサンダルフォン

 僕が目を覚ますと世紀末のような景色が広がっている世界にいた。ところどころ壊れている道路の上には壊れた車や倒れた電柱などがあり、人の気配はない。しかし、人以外はいる。


「コロコロ、コロコロ、コーロコロ。毎日誰かをコーロコロ。コロコロしないとコロコロされる。それが嫌ならコロコロしろ。コロコロ、コロコロ、コーロコロ」


 物騒な歌だな。作詞したの誰だ? 僕がそんなことを考えているとビルの屋上からハンマーを持った何かが降ってきた。


「早く私にコロコロされろー!!」


「はぁ……まったく、どうして僕はいつもいつも事件に巻き込まれるんだろうな」


 僕はそのハンマーを片手で受け止めると人間の闇でハンマーを切り刻んだ。


「なっ! お前! 今何をした!! 答えろ!!」


 黒い泥のような服を着用している赤髪ロングの美少女の両目にはなぜか星がある。彼女はノコギリのような歯を常時僕に見せながら僕をにらみつけている。どうやら警戒されているようだ。


「なあに、ちょっと抵抗しただけだ。それより君はここで何をしているんだ?」


「私はこの世界の殺人鬼だ! だから、お前も私のターゲットだ!!」


「なるほど。ということは君は今から僕をコロコロするんだな?」


「ああ、そうだ! い! クリムゾンメイス!!」


 うわあ、なんか空から降ってきた。あんなので殴られたら一発で骨砕けるな。


「なあ、どうして君は殺人鬼になったんだ?」


「この世界の人間たちが禁忌を犯したからだ!!」


「なるほど。それで? 人間たちは何をしたんだ?」


「天使狩りだ」


「天使狩り?」


「ああ、そうだ! 闇の悪魔に魂を奪われた人間たちが始めた胸糞悪い愚行だ!!」


「そうか。それで君は殺人鬼になったんだな」


「ああ、そうだ! けど、私は毎日誰かを殺さないと消されてしまう。それなのにどこに行っても人間がいない。どうしてだ? もうこの世に人間はいないのか?」


「生存者が何人いるのか分からないのか?」


「分かる。けど、壊れてる。お前がいるのにゼロのままだ」


「それは僕が半妖だからだ」


「半妖?」


「人と妖怪のハーフのことだ。まあ、僕はほとんど妖怪みたいなものだから人間としてカウントされてないんだろうな。ところで闇の悪魔って今どこにいるんだ?」


「分からない。やつの名前以外、何も分からない。居場所も年齢も何もかも謎だ」


「そうか。でも、妙だな。もし、そんなのがいるんだったら真っ先に君を消しに来るだろ? なんで来てないんだ?」


「そういえば、そうだな。なんでだろう」


 彼女がそう言うと空から黒い剣が降ってきた。それは地面に突き刺さる前に変形し、人の姿になった。


「やっと気づいたか。だが、もう遅い! 私を追放した天界はつい先ほど滅んだ!! お前の帰る場所はもうどこにもない!!」


「そ、そんな! なぜだ! サンダルフォン! なぜそんなことを! まさか、お前が闇の悪魔だったのか!!」


「闇の悪魔? そんなの私が考えた二つ名だ。そんなことより私と共に楽園を築かないか?」


「楽園? 私にとっての楽園を滅ぼしたお前なんかとそんなの作りたくない!!」


「そうか。では、死ね。アズラエル」


 サンダルフォンが放った黒い光線が彼女の胸を貫く直前、僕は彼女を人間の闇で作った盾でそれを防いだ。


「無事か? アズラエル」


「お、お前! なぜ私を助けた!! 私はお前を殺そうとした殺人鬼だぞ!!」


「さぁ? どうしてだろうな。気づいたら体が勝手に動いてたとしか言いようがないな」


「お、お前……」


「おい、今のはなんだ? まさか人間の闇か?」


「だったらどうする?」


「お前を殺す」


 あっ、やったー。生存フラグ立ったー。


「今のあんたにそれができるのか?」


「ガキが! 今すぐ死ねええええええええええええええ!!」


 サンダルフォンの全身から放たれた黒い光線は僕の全身を破壊しようと迫ってくる。僕は人間の闇で作った巨大な盾でこれを防いだ。


「なあんだ、天使ってこんなものなのか。なんか期待外れだなー」


「天使をバカにするなー!!」


 僕はサンダルフォンが攻撃する前に人間の闇でできたミキサーの中にやつを放り込んだ。


「なあ、アズラエル。ミキサーのスイッチ押してもいいか?」


「え? うーん、とりあえず保留で頼む」


「そうか。分かった」


 天使の力を闇に変換するミキサーの中でジタバタ暴れているサンダルフォンは僕に殺意を向けていたが、僕はそれを無視してアズラエルと話し始めた。


「なあ、元の世界に帰れる方法はないのか?」


「ありはする。だが、その……わ、私とその……しないといけないぞ」


「え? なんだって?」


「だ、だから! その……私とハグしないと帰れないんだよ」


「え? それだけでいいのか?」


「ああ」


「そうか。というか、なんで僕はこの世界に呼ばれたんだ?」


「あー、それは多分、私が応援を呼んだせいだ。応援を呼ぶとたまに失敗して異世界から何かやってくるからな。今回はたまたまお前だったんだろう」


「そうか。なるほどな。じゃあ、そろそろ帰ってもいいか?」


「え? もう帰るのか?」


「ああ。特にやることないし、向こうには僕を必要としてくれるやつらがいるし、早くしないと遅刻しちゃうから」


「遅刻ってお前学生なのか」


「ああ、高校生だ」


「そうか。分かった。えーっと」


「あー、そういえばまだ名乗ってなかったな。僕の名前は雅人まさと。『山本やまもと 雅人まさと』だ」


雅人まさとか……うん、覚えた。じゃあ、またな、雅人まさと!!」


「ああ、また会えるといいな、アズラエル」


 僕が彼女とハグをすると僕は元の世界に戻った。


「ふむふむ、あいつのいる世界の座標はコレか……うん、覚えた。よおし、これでいつでも会いに行けるな! さて、これからどうしたい? サンダルフォン」

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