うん!!
山本家……リビング……。
「あー、えーっと、とりあえずもう変化の術、解いていいぞ。あっ、別に今夜のおかずにするつもりも自首しろだなんて言うつもりもないから警戒しなくていいぞ」
「……本当か?」
「え? なんだって?」
「本当に私を許してくれるのか?」
「それはこれからの君次第だな。ほら、さっきからずーっと殺意剥き出しの女の子がいるだろ?」
「うん」
「あの子、僕の実の妹なんだよ」
「え? そうなの? なんだかすごく性格悪そう」
「は?」
「夏樹、落ち着け。この子はまだ子どもだ」
「躾のない子どもは獣と同じだよ」
「そうだな。でも、お前の殺気に気づけないほどバカじゃないぞ」
「それは……まあ、そうだけど」
僕は少しシュンとした夏樹(僕の実の妹)の頭を優しく撫でるとスリをした子(黒い影の塊)をそっと抱き上げ、優しく抱きしめた。
「な、何をする! 離せ!!」
「辛かったよな。悪いことだっていうのは分かってたけど、生きるのに精一杯だったんだよな。今までよく一人で頑張った。でも、もうそんなことする必要はない。今日からここがお前の家だ」
「お、お前……なんでそんなこと分かるんだ?」
「それはな、お前の顔にそう書いてあったからだ」
「私は今、黒い影のはずだ。だから、どこにもそんなこと書いてない」
「書いてあるさ。まあ、君以外にしか見えないペンで書かれてあるから君には絶対に見えないけどね」
僕がそう言うとその子はようやく変化の術を解いた。その子は頭の上に葉っぱを乗せており髪の毛やシッポの毛は茶褐色である。
「そ、そうなのか?」
「さて、どうだろうなー」
「うー! いじわる!!」
「はいはい」
狐がいるところに狸あり……か。
「あー、えーっと、とりあえずお風呂入るか? ほら、今日雨だったから結構濡れただろ?」
「うん、濡れた」
「だよな。よし、じゃあ、狐の凛か座敷童子の童子、どっちに体洗ってもらいたい?」
「どっちもやだ」
「ガーン!!」
「はぁ、そうですか」
「二人ともそんなに落ち込むな。というか、二人には娘がいるじゃないか」
「そ、そうですねー」
「まあ、私の場合、娘ではなく、娘みたいなものですが」
「あー、えーっと、それで君は誰とお風呂に入りたいんだ?」
「ん」
彼女は瞬時に僕を指差した。それを見た夏樹は真顔になった。
「え? 僕?」
「うん」
「なんでだ? 僕は男だぞ? 男はみんなオオカミなんだぞ?」
「それは知ってる。でも、お前は違う。なんというかお前のそばにいるとすごく落ち着く」
「そ、そうか。じゃあ、一緒に入るか?」
「うん!!」
彼女はここに来て初めて満面の笑みを浮かべた。僕ってそんなに母性あるのかなー? いや、父性かな? うーん、まあ、どっちでもいいや。




