この家族、面白いな。
木下巡査の彼氏のふりをすることになった僕。そのことを知った夏樹(僕の実の妹)はショックを受けたが「正直協力したくないけど、お兄ちゃんがそうしたいのなら私は協力するよ」と言った。僕は彼女の頭を撫でながら「ありがとな、夏樹。頼りにしてるぞ」と言った。その時の夏樹は作り笑いをしていた。
*
木下家……客間……。
「お父さん、お母さん。今日はね、紹介したい人がいるの」
「どうも、はじめまして。現在、華菜さんとお付き合いさせていただいている『山本 雅人』と申します」
「ほう、そうか。それで? 娘のどういうところが好きなんだ?」
「いつも元気なところや明るく爽やかな笑顔を浮かべながら町を守っている時の姿、それと優しいところです」
へ、へえ、雅人くんって私のそういうところ好きなんだー。なんか嬉しいなー。
「ふむ、そうか。職業は?」
「現在、花屋で働いています」
「花屋か。君はどんな花が好きなんだ?」
「キョウチクトウです」
「そうか。まあ、くれぐれも危険な愛を娘に捧げるんじゃないぞ」
「はい、用心します」
「おう」
「ねえ、二人はどこで知り合ったの?」
「え? あー、えーっとねー」
「僕の実家の近くにある公園です。その公園にあるベンチに座っていた華菜さんの顔を見た時、少し寂そうな表情を浮かべていたので僕は彼女に声をかけました」
「へえ、そうなの。それで? どうやって華菜ちゃんを虜にしたの?」
「お母さん! なんでそんなこと訊くの!?」
「これから家族になるかもしれないんだから、いろいろ知っておいた方がいいでしょう? ねえ? お父さん」
「おう、そうだな」
「そ、そんなー」
「雅人さん、娘のことは気にしなくていいから早く続きを話してちょうだい」
「分かりました。僕は華菜さんにおまわりさん、いつもお疲れ様ですと言いながらベンチに座りました。華菜さんはあー、どうも。でもまあ、今ちょっと休憩してるんですけどねと言いながら独り言を言い始めました。前半は愚痴でしたが、中盤あたりから泣き始めました。どうも自分が目指している理想の警察官になかなかなれないことが原因だったらしく、僕は華菜さんを優しく抱きしめました。その後、華菜さんは僕の胸の中で静かに泣いていました」
「そのあとは?」
「えー、まあ、その、自然に華菜さんと一夜を共にしました」
「あらー、そうだったのー。いい人見つけたわね、華菜ちゃん」
「や、やめてよ! お母さん!!」
「良かったな、華菜。彼ならお前を幸せにしてくれそうだ」
「そ、そう?」
「ああ」
「ええ」
「そ、そっかー。あっ! ちょっと雅人と二人で話がしたいんだけど、二人ともちょっと席外してもらっていいかな?」
「ああ、いいぞ」
「ええ、いいわよ」
「ありがとう、二人とも。あっ、そうだ。今日のお昼、なあに?」
「今日のお昼はそば飯よ。それと晩ごはんは赤飯よ」
「せ、赤飯!? 気が早いよー!!」
「あら、そう? あー、そうそう、ねえ、雅人さん」
「何ですか?」
「あなたはもう私たちの家族になったも同然なんだから、実家だと思ってくつろいでいいわよ」
「分かりました。では、そうさせてもらいます」
「よろしい。それと華菜ちゃん」
「は、はいっ!!」
「夜になるまで変な声出しちゃダメよ」
「そ、そんなこと分かってるよ!!」
「あら、華菜ちゃん、顔真っ赤よ。大丈夫?」
「こうなった原因は明らかにお母さんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
彼女は大声でそう言いながら彼女の母親を部屋の外に追い出した。この家族、面白いな。




