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コトリバコ

 今日もいつも通り夏樹なつき(僕の実の妹)たちと共に登校する。事件は多々あるけれど僕はこの日常が好きだ。まあ、そう思った直後にアレと出会ってしまったのだが。それは僕の下駄箱の中に入っていた。それは小さな箱だった。それはただの箱ではなかった。それは妊娠可能な女性と子どもたち(男女問わず)を呪い殺す呪具だった。その呪具の名前は『コトリバコ』。


「お兄ちゃん、どうしたの?」


「あっ! いや、なんでもない!! ちょっとぼーっとしてただけだ」


「ふーん、そうなんだ。なら、いいけど」


 僕はそれをカバンの中に入れると早足で自教室へ向かった。えーっと、たしか神社に持っていかないといけないんだっけ? はぁ……どうしてこんなことに。


「お兄ちゃん! 私、今日筆箱忘れちゃったみたいなの。だから、シャーペンと消しゴム貸して!!」


「え? あー、うん、分かった」


 僕が夏樹なつきにシャーペンと消しゴムを手渡そうとすると彼女は僕の手首をつかんだ。


「ねえ、お兄ちゃん。さっき下駄箱の中から何か取り出してたよね?」


「あー、まあ、そうだな」


「そっか。じゃあ、それ見せて」


「ダメだ」


「どうして?」


「頼む。何も言わずに自分のクラスに戻ってくれ」


「そっか。かなりやばいものなんだね」


「すまない」


「なんで謝るの? お兄ちゃんは何にも悪くないよ」


「いや、謝らせてくれ。僕は人間の闇を過信しすぎていた。こんな恐ろしい呪い、とてもじゃないが対処できない」


「そっか。でも、良かったね。呪いを操れないことが分かって」


夏樹なつき、お前怖くないのか?」


「目の前でお兄ちゃんを失う方が怖いよ」


「そうか。分かった。ありがとう、夏樹なつき。なんとかなりそうな気がしてきたよ。でも、やっぱり一人じゃ心細いから放課後一緒に神社までついてきてくれないか?」


「いいよー」


「ありがとう、助かるよ」


「別にいいよ。放課後、暇だから。じゃあ、そういうことで」


「ああ」


 夏樹なつきが去った後、僕はカバンを開けた。その直後、僕の手の平に何かが当たった。それは僕がそれから手を離そうとすると手の平から僕の体内に侵入した。あー、そうか。こいつは僕を支配するためにやってきたのか。だから、誰にも危害を加えようとしなかったん……だ……な。


「ふむふむ、なるほど。どうやら呪いの耐性はまだなかったみたいだねー。さあてと、これからどうしようかなー。よし! 決めた! とりあえずこの学校にいるやつら全員殺しちゃおう⭐︎」


「おい」


「え? ちょ、なんでここにいるの? 自分のクラスに戻ったんじゃなかったの?」


「はぁ……またメスか……。これだからメスは」


「えーっと、私に何か用?」


「出ていけ」


「え?」


「早くお兄ちゃんの体から出ていけ。じゃないと私の髪でハチの巣にするぞ」


「あー、その、えーっと、今私が出ていくとこの体バラバラになっちゃうから放課後まで待ってほしいなー、なんて」


童子わらこちゃん、いる?」


「はい、ここに」


「うわっ! なんか出てきた! えっ? もしかして座敷童子? うわー、いいなー。私も欲しいなー」


「ねえ、童子わらこちゃん。こいつ、何なの?」


「コトリバコ……になれなかった出来損ないです」


「失敗作ってこと?」


「違うよ! 私は憑依できるコトリバコだよ!!」


「はぁ……いいですか? あなたには誰かを呪い殺せるくらいの呪いはありません。虫程度ならできますが、それ以外は愛しかありません」


「あ、愛? え? じゃあ、私コトリバコじゃないの?」


「いえ、あなたは立派なコトリバコです。ただし、自分の愛しか増幅できない欠陥品です」


「そ、そんな! じゃあ、私これからどうすればいいの?」


「それは……」


「それは?」


「放課後になったら話します」


「えー! そんなー! なんでそんな意地悪するのー?」


「あなたが無知すぎるからです。おっと、もうすぐ予鈴が鳴りますね。では、私はこれで」


「あー! 待ってよ! 童子わらこちゃん! 童子ちゃーん!!」

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