混浴
家に帰ると座敷童子が玄関にいた。
「た、ただいま」
「おかえりなさい。いつもより五分遅く帰って来ましたね。何かありましたか?」
何もなくはないが、とりあえず黙っておこう。
「いや、別に何もないよ」
「そうですか。では、今日は私と一緒にお風呂に入りましょう」
靴を脱いでいる時にそんなことを言われたため、転びそうになった。
「は、はぁ? どうしてそうなるんだよ。というか、最近一緒に入っただろ?」
「あの時は夏樹さんも一緒でしたよね?」
それはまあ……そうだが。
「話がしたいなら、風呂から出た後にしてくれよ」
「それは非常に効率が悪いので、おすすめしません」
意外と頑固だよな、こいつ。
「あー! もうー! 分かったよ! 一緒に入ってやるよ!」
「ありがとうございます。では、参りましょうか」
結局、こいつのペースになるんだよな……。
まあ、別にいいんだけどさ。
*
「何をしているのですか? 早く座ってください」
「いや、その……別にいいよ。そういうのは」
座敷童子はため息を吐く。
「背中くらい流させてください。私は一応、居候なんですから」
「じゃあ、その……せめて、前を隠してくれ。目のやり場に困るから」
座敷童子は自分の胸部に目をやった。
そこには少ししか膨らみがなかった。
「こんな貧相な体付きでも興奮するんですか?」
「いや、その……男のそれとは違うから、本能的に意識しちゃうっていうか、なんというか」
座敷童子は僕の手首を掴む。
「いいから早く座ってください。明日も学校があるのでしょう?」
「わ、分かったよ。だから、あんまり引っ張るなって!」
その直後、僕は足を滑らせてしまった。
あっ、これはまずい。
気づいた頃には、もう遅かった。




