重要なのは混浴なんですよ!
女の子の幽霊『七夕 舞』の一件は無事解決したが、彼女はなぜか僕に好意を寄せている。心当たりは一切ない。また、そうなるように行動した覚えもないため僕は今すこーし困っている。
「雅人さん! 一緒にお風呂入りましょう!!」
「幽霊は風呂に入る必要ないと思うのだが」
「肉体はなくても心と魂はあるので一応きれいにしておかないといけないと思うんですよ。ほら、悪霊って自分が何なのか分からなくなった時になりそうじゃないですか。つまり、できるだけ生前にやっていたことをやっていればそんなことにはならないんですよ! 多分!!」
「なるほどな。でも、それって僕と一緒にお風呂に入らなくてもいいよな?」
「いいえ、それは違います。重要なのは混浴なんですよ! もっと言うと誰と混浴するのかが重要なんです!!」
「なるほど。デートみたいなものか」
「そうです! デートです! あっ、さっきみなさんに自己紹介した時に『雅人さんはこの家の家族全員とデートする予定』があるっていう話を聞いたんですけど、それって本当ですか?」
「ああ、本当だ。でも、夏樹と童子以外、未だにデートプランが決まってないんだよ」
「あー、色々行きたいところがあって一日じゃ回れないみたいな感じなんですね。それなら雅人さんが分身すればいいんじゃないんですか?」
「あー、そうか。たしかにそれなら僕の取り合いにもならないし何日でも僕とデートできるな」
「あ、あれ? 私、冗談のつもりで言ったんですけど、本当にできるんですか?」
「童子ならできると思うぞ。あいつの文字の力は半端ないからな」
「そ、そうですか。えーっと、それで、私と混浴する件はどうなるんですか?」
「うーん、そうだなー。夏樹、お前はどう思う?」
彼女はどこからともなく雅人さんの背後から現れました。妖怪ってみんなこうなんでしょうか?
「うーん、別にいいけど、いくつか条件があるよ」
「条件?」
「まずお兄ちゃんを襲わないこと。次にお兄ちゃんを誘惑しないこと。最後にお兄ちゃんを殺さないこと。この三つが条件だよ」
「も、もし、その条件を無視して欲望のままに雅人さんを求めてしまったらどうなるんですか?」
「私の髪って普段は真っ黒だけど、銀髪になると物理攻撃だけじゃなくて神とか幽霊とか人間の闇みたいな物理攻撃があんまり効かなそうな存在にもダメージを与えられるようになるんだよ」
「あー、えーっと、今のは警告、ですよね?」
「うん、そうだよ。まあ、せいぜい私に殺されないように気をつけてねー」
「は、はい、気をつけます」
「よろしい。お兄ちゃん、一緒にお風呂入ろう♡」
「おう、分かった」
この人、やっぱり頭おかしいなー。まあ、多分原因は雅人さんなんだろうなー。




