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七夕 舞

 駅に着いたが中に入れない。まあ、今さっき人身事故があったから当然だが。


「あ、あの、私の下半身ちゃんと戻ってきますよね?」


 僕にお姫様抱っこされているぱっと見、中学生くらいの茶髪ショートちゃんは不安そうな表情を浮かべている。


「ああ、もちろんだ。だから、そんな顔するな。僕まで不安になるから」


「は、はい! 分かりました!!」


 えーっと、とりあえず闇を線路の方に送るか。


「なあ」


「な、何ですか?」


「今日履いてた下着の色、覚えてるか?」


「え? あー、えーっと、たしかクリーム色だったと思います」


「クリーム色か。分かった、ありがとう」


 聞いたか? 闇ども。切れ端でもいいからクリーム色の下着を探せ。多分その近くに彼女の下半身があるはずだから。肉体がバラバラでも魂の欠損が軽微なら下半身もちゃんと霊体になっているはずだ。だから、頼む! そうであってくれ!!


「あ、あの」


「なんだ?」


「私の下半身が見つかったら……その、何かお礼がしたいんですけど」


「お礼か……。すまない、僕は基本的にそういうのは受け取らない主義なんだ」


「そ、そうですか」


「けど、君が心からそれを望むのなら僕はそれを拒まない」


「そ、そうですか! じゃあ、私の下半身が見つかったら私とデートしてください!!」


「え? デート?」


「は、はい。まあ、誰とも付き合ったことないのでうまくできる自信ないんですけどね」


「自信なんてなくていい。僕といつ、どこで何をしたいのかを考えればいいんだよ」


「わ、分かりました! 私、最高のデートプラン考えます!!」


「お、おう」


 おっ、見つかったか。よし、じゃあ、それをここまで運んでくれ、頼んだぞ。

 それから数分後、人間の闇たちが彼女の下半身(霊体)と共に戻ってきた。


「お疲れ様。えーっと、これが君の下半身かな?」


「はい! 間違いないです! 見つかってよかったー!!」


「だな。えーっと、じゃあ、くっつけようか」


「え?」


「ん? いや、なのか?」


「いや、なんというか、その、ちゃんとくっつくのか不安で」


「大丈夫。もしくっつかなくても河童かっぱの塗り薬があればくっつくから」


「あれって実在するんですか?」


「昔からあったけど、人間たちは自分たちが作ったものより優れたものを見て見ぬふりをしてきた。だから、最近まで都市伝説扱いされてきたんだよ」


「へえ、そうなんですか。まあ、たしかにそれがあれば骨折しても四肢が取れてもすぐくっつきますから医者の仕事が減っちゃいますね」


「まあ、そうだな。えっと、そろそろくっつけてもいいか?」


「あっ、はい、大丈夫です。よろしくお願いします」


「分かった。じゃあ、行くぞ。よっと」


 僕が彼女の上半身を彼女の下半身にくっつけると彼女は自力で立てるようになった。


「や、やりました! 私、また歩けるようになりました! ありがとうございます!! えーっと」


「あー、そういえば、まだ自己紹介してなかったな。僕の名前は雅人まさと。『山本やまもと 雅人まさと』だ」


雅人まさとさんですか、いい名前ですねー」


「ありがとう、君の名前は?」


「あー、えーっと、私はまいです。『七夕たなばた まい』です!!」


「まいか……。踊りが好きなのかな?」


「あー、えーっと、たしか両親が私の名前を考えている時に病室の窓から桜の花びらが舞っているのを見たからまいです」


「へえ、桜とか桜花おうかじゃなくて舞だったのか」


「そうなんですよー、まあ、別にいいんですけどね」


「そうか。あっ、そうだ。両親と話さなくていいのか?」


「両親は二ヶ月前に病死しました」


「あー、そう、なのか。なんかごめん」


「謝らないでください。雅人まさとさんは何も悪くないんですから。あと、私は今とっても幸せです。過程はどうであれ、こうして雅人まさとさんと出会えたんですから」


まい……」


「お兄ちゃん、早く帰ろうよー」


「な、夏樹なつき! どうしてここにいるんだ! 先に帰ったはずじゃ」


「あー、それはね、お兄ちゃんの近くにメスがいたからだよ。ねえ、まいちゃん。お兄ちゃんのこと、好き?」


「はい! 好きです! 大好きです!!」


「そっか。じゃあ、今日から私の……ううん、私たちの恋敵ライバルだね」


「え? あー、そうなんですか。でも、負けませんよー!」


 えーっと、君の背中を押した犯人放置しておいていいのかな? まあ、よくないよな。よし、じゃあ、あいつに頼むか。

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