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白蛇の抜け殻

 白い蛇のほこらは少し山を登ったところにあった。


「どうですか? 直りそうですか?」


「思ったよりひどくはないけど、今日中に直すのは無理だな」


「そうですか……。うーん、ということは今日は野宿ですね」


「問題ない。童子わらこならなんとかしてくれる」


童子わらこ?」


「おい、童子わらこ。いるか?」


「はい、ここに」


「うわっ! な、なんでこんなところに座敷童子がいるんですか!!」


「あー、えーっと、彼女は俺の」


「妻です」


「えっ!? そうなんですか!?」


「違うぞー」


「えっ!? そうなんですか!?」


「ああ、そうだ。まあ、一応住み込みで働いてるから家族みたいなものだけどな」


「は、はぁ……」


雅人まさとさん、私は何をすればいいのですか?」


「あー、えーっと、このほこらを直してほしいんだけど、できるか?」


「一応できますが、結界を進化させる必要があります」


「え? もしかしてほこらが壊れた原因って」


「老朽化ではなく結界が貧弱だったせいです」


「えっ!? そうなんですか!?」


「さっきから驚いてばかりだな」


「えー、まあ、そうですね。情報量が多すぎて……。あー、ちなみに今日中に終わるんですか?」


「終わります。というか、もう終わっています」


「えっ!? そうなんですか!?」


「面白い白蛇だなー。あっ、今のは別にギャグじゃないからな」


「え? 何がですか?」


 面白いと尾も白い……はい、なんでもないです。


「いや、別に。それより良かったな、ほこらが直って」


「はい! あっ、お礼に私の抜け殻をプレゼントしますね!」


「え? いや、いいよ、別に」


「まあまあ、そう言わずに。ね?」


「いや、だから、別にいいって」


雅人まさとさん、あなた人間の闇を宿していますよね?」


「それ誰から聞いたんだ?」


「あなたと出会った時から気づいていましたよ。私のような引きこもりの神様でもそれくらい分かります」


「なるほど。その情報をばらかれたくなかったら素直に受け取っておけということだな」


「……え?」


「え? 違うのか?」


「えーっとですね、まず私は雅人まさとさんにいいことがあるといいなーっと思っています。次に私の抜け殻を受け取りたくなるようにするにはどうすればいいかなーと考えました。最後にあまりいいやり方ではありませんが、雅人まさとさんが触れられたくないことを言えばそれが達成できると思い、発言しました」


「そうだったのか。あー、ビックリしたー。それじゃあ、まあ、受け取っておこうかな」


「え? あー、ちょっと待ってください。今脱皮しますから。よっ! ほっ! はいっ! おまたせしました! 白蛇の抜け殻です!! 死んでも持ち歩いてくださいね!!」


 へえ、これが白蛇の抜け殻か。ご利益あるといいな。


「死んでもってあの世に持っていけるのか?」


「え? あなたはもう闇そのものになりつつあるので寿命という概念はもうないに等しいですよ?」


「……え?」


「あ、あれ? もしかして知らなかったんですか? あー、えーっと、今の記憶、消します?」


「いや、いい。忘れてもきっとまたその話を聞くことになるから」


「そ、そうですか。その、なんかすみません」


「別にいいよ。一応、予想はしてたから」


「そ、そうですか。あー、えーっと、何か困ったことがあったら言ってください! いつでも相談に乗りますから! あー、あと、一人で抱え込んじゃダメですよ!! 大抵、自暴自棄になりますから!!」


「ああ、分かった。じゃあ、またな」


「はい! また!!」

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