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この世界は私の本当の

 カメレオンのお姫様は相変わらず自分のことしか考えていない。


「いや、だからな、あんたの行動が世界を狂わせているから今すぐやめてほしいんだよ」


「いやよ! だって、この世界は私の本当の……」


 彼女は何かを言いかけたが口を閉じてそれを体内に押し込んでしまった。


「ちょ、なんだよ、今の。ちゃんと最後まで言ってくれよ」


「な、何のこと?」


「いやいや、今何か言いかけてただろ? この世界は私の本当の何なんだ?」


「……わ、笑ったりしない?」


「ああ、笑わないよ」


「絶対?」


「ああ、絶対だ」


「じゃあ、私のしっぽのリボンにキスして」


「え? なんでそんなことしないといけないんだ? あんたの国ではそれが約束する時の儀式なのか?」


「え、ええ、そうよ」


「そうか。なら……」


「お兄ちゃん、それ多分婚姻の儀式だよ」


「え? そうなのか?」


「ちっ! 余計なことを……」


「なんか言った?」


「い、いえ! 何も!!」


「そう」


 夏樹なつき(僕の実の妹)のその一言のおかげで僕はカメレオンの国のお姫様との婚姻を回避できた。


「ありがとう、夏樹なつき。お前は本当に頼りになる妹だよ」


「これくらい当然だよ。私はお兄ちゃんの妹なんだから」


「あ、あんたの妹って少し変わってるわね」


「まあな。でも、かわいいだろ?」


「え? う、うーん、胸ないし低身長だし、あんたのことしか愛してないみたいだから正直かわいいとは思わないわ」


「いやいや、そこがいいんじゃないか。というか、まだ成長期なんだから可能性はあるだろ? それに恋をしたら誰でもそうなる可能性があるんだから別にそこはいいだろ」


「あー、えーっと、あんたたち実の兄妹なのよね?」


「ああ」


「うん」


「えっと、人間の実の兄妹は恋愛しちゃいけないんじゃないの?」


「いや、別にそんなことはないぞ。まあ、一応、書類上の結婚はできないけどな」


「あっ、そう。でも、あんたたちのは単なる共依存なんじゃないの?」


「そう思うのならそれでいいよ。別に理解してほしいわけじゃないから」


「ふーん、そうなの」


「ああ、そうだ。それで? あんたにとってこの世界は本当の何なんだ?」


「……分かってるくせに」


「頼むよ、お姫様。じゃないと僕はあんたをこの世界から追い出さないといけなくなるんだよ」


「……笑ったら死刑だからね」


「ああ!!」


 まったく、何なのよ、こいつ。なんで私をまっすぐ見てくれるのよ。ほんとムカつく。けど、なんか嬉しいから許す。


「えっとね、私にとってこの世界は本当の居場所なの」


「本当の居場所?」


「ええ、そうよ。この世界はね、生き生きしてるのよ。みんーなキラキラ輝いてて羨ましいのよ。だから、あんな窮屈なところにいたら窒息死しちゃうわ」


「お城の中ってそんなに狭いのか?」


「えーっと、たしか私の部屋はこの学校よりちょっと大きいはずよ」


 え? 校舎が一室なのか?


「は? 全然広いじゃないか。あー、でも、あんた体大きいから色々部屋に置くと狭くなるな」


「そうなのよー! 私は庶民みたいに森で暮らしたいのに王族だからダメって言われてるの!! ひどいと思わない?」


「うーん、でも、それってあんたの両親があんたを大事に思ってるからそうしてるんじゃないのか? ほら、あんたはお姫様だから変なオスに目をつけられないようにしないといけないだろ?」


「だからって! あんな狭いところにいるのはもういやなの! だから、私は家出したのよ!!」


「そうか。なら、部屋を広くすればいいんじゃないか?」


「あれ以上大きくなんかできないわよ」


「あー、今のは僕の言い方が悪かったな。えっと、この世界とあんたの部屋をつなげるんだよ」


「え? そんなことできるの?」


「僕にはできないけど、多分あいつにならできるよ。おーい! 童子わらこー! いるかー?」


「はい、ここに」


「えっ! 何こいつ! コケシ?」


「失礼な、私は座敷童子です」


「あー、家出されたら困る妖怪ランキング一位のアレね」


「はい、そうです。あと雅人まさとさんの恋人です」


「え? そうなの?」


童子わらこちゃーん、どうしてそんな嘘つくの? お兄ちゃんは今、誰とも付き合ってないよー」


「たしかに今はまだ付き合っていませんが、これからそうなる可能性はありますよね?」


「ないない! 絶対ないよー!」


「はいはい。それで? 私は何をすればいいんですか?」


「えーっとだな、このお姫様の部屋と」


「レオナよ」


「レオナ様の部屋とこの世界をつなげてほしいんだよ」


「分かりました。あっ、報酬は前払いでお願いします」


「え? お金いるの?」


「いえ、今のはレオナ様にではなく雅人まさとさんに言ったのです」


「え? 僕?」


「はい、そうです。私一人で大仕事をするのですからそれなりの報酬がないとおかしいです」


「そうか。うーん、じゃあ、ハグでいいか?」


 僕が彼女にハグをすると彼女の呼吸が少し荒くなった。


「あ、頭も撫でてください」


「はいはい」


「ああ、やはりあなたは私の理想そのものです。結婚してください」


「僕はお前よりかなり年下だぞ」


「構いません。式はいつどこでしますか? 子どもは何人欲しいですか?」


夏樹なつきの前でよくそんなこと言えるな。僕がいなかったらお前何回か死んでるぞ」


「お願いします、答えてください。私はもう我慢できません」


「うーん、早めに仕事が終わったら答えようかなー」


「そうですか。分かりました。では、秒で仕事を終わらせます」


「そうか。でも、雑な仕事したらダメだぞ」


「分かっています。あ、あの、ひ、ひたいでいいのでキスをしてもらえないでしょうか」


 うーん、夏樹なつき(僕の実の妹)の殺意がほぼマックスになってるからそれは無理だなー。


「それはご褒美にした方がよくないか?」


「そう、ですね。分かりました。そうします」


 彼女はそう言うと僕から離れた。


「おまたせしました。では、始めましょうか」


「え、ええ」

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