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じゃあ、まず目を潰すね

 放課後、僕は夏樹なつき(僕の実の妹)と一緒に下校した。他人の目にはきっと兄妹ではなく恋人のように見えているだろう。それくらい僕たちの仲はいい……いや、良すぎる。お互いの距離がとても近い。双子だからとか毎日一緒に過ごしているからとか、そんな理由でそうなったわけではない。僕たちはきっと片方どちらかがいなくなった時点でどちらもいなくなってしまう運命なんだ。

 僕がそんなことを考えていると家に着いた。いや、着いてしまった。


「お兄ちゃん、私先に部屋で待ってるから」


「ああ、分かった」


 彼女は手洗いとうがいを済ませた後、トタトタと足音を立てながら自室へ向かった。僕は彼女が彼女の部屋のドアを閉める音を聞いてから彼女と同じことをして彼女の部屋へ向かった。


「……夏樹なつき、入ってもいいか?」


「うん、いいよ」


 僕が彼女の部屋のドアを開けると彼女の黒い長髪が僕の体を拘束した。その後、それは僕を彼女のベッドまで運んだ。


「……お兄ちゃん、私これからお兄ちゃんにひどいことするけど、いい?」


 ベッドに仰向けになっている僕の顔を覗き込んでいる夏樹なつきの目に少しだけ怖がっている僕の顔が映っている。それに気づいた僕は深呼吸をして体と心と魂を落ち着かせた。


「ああ、いいぞ。お前が満足するまでやってくれ」


「分かった。じゃあ、まず目を潰すね」


 明日、僕は酒呑童子に殺されるかもしれない。けれど、この世で最も僕のことを理解している夏樹なつきに僕の最期を見せるわけにはいかない。そう、これは儀式だ。明日、どんな状況になっても戦意を喪失しないようにするための儀式なのだ。


「……お兄ちゃん……もう終わったよ」


「……あー、そうか」


「ごめんなさい。私、手加減できなかった。でも、手加減したらきっと私後悔する。だから」


「僕の体を徹底的に壊してくれてありがとう。これで少しは勝率上がったかな?」


「上がったよ。爆上がりだよ。大丈夫、お兄ちゃんならきっと勝てるよ」


「だといいんだがな……」


 お兄ちゃんの血で真っ赤に染まった私のベッドが少しずつ真っ白になっていく。ああ、やっぱりお兄ちゃんはもうほとんど妖怪になりつつあるんだね。でも、お兄ちゃんがどんな姿になっても私はお兄ちゃんのこと絶対嫌いになんてならないからね。

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