君は自分に興味がないのか?
次の日の朝、僕は一人で公園へ向かった。
「おはよう! いい朝だね!!」
「おはようございます。一条先輩」
先輩はその場で両腕を体の真横まで上げている。何のトレーニングだろう?
「君は自分の体を完全に使いこなせているか?」
「え?」
「人の体というのは訓練しないと命令通りに動かないものなんだよ。だから、本当は鏡の前で自分の動きを確認しながらやらないといけないんだよ。まあ、私にはもう必要ないがな」
「それって人間は自分を五感でしか認識できないからですよね? 僕みたいな半妖だと霊力の流れでそういうのは普通に分かりますよ」
「なるほど。君と私の差は霊力の有無か。はぁ……やはりただの人間では君には勝てないようだね」
「そんなことありませんよ。僕は家族や友人たちを傷つける存在にしか攻撃できませんから」
「雅人くん、その言い方だと自分を傷つけるやつらはどうでもいいと言っているようなものだぞ?」
「安心してください。昨日のように決闘を申し込まれたら軽くのしてやりますから」
「……君は自分に興味がないのか?」
「別にそんなことないですよ。ただ自分よりも妹の方が興味深いので」
「なるほど。つまり、君はあれか? シスコンというやつなのか?」
「さぁ? どうでしょうね。まあ、自分より妹を優先する場面が多いのでそう思われても仕方ないでしょうね」
「ふむ、そうか。まあ、とにかく明日までにコンディションを整えておいてくれ」
「はい、分かりました」
なんか昨日より親しみやすいな。先輩の口調が変わっているからかな?
うーむ、おかしい。私は他人にあれこれ言うようなやつだっただろうか? まあ、おそらくなかなか面白い後輩と出会えたからだろうな。




