じゃあ、帰ろっか
お兄ちゃんの魂をお兄ちゃんの体に戻すとお兄ちゃんはようやく目を覚ました。
「ねえ、お兄ちゃん。私のこと分かる?」
自分の声が震えているのは分かっているけど、お兄ちゃんの前で不安を隠し切れるほど私は強くない。お兄ちゃんは私のほっぺに手を添えると微笑みを浮かべながらこう言った。
「ああ、分かるよ。ごめんな、心配させて。人間の闇にひどいことされなかったか?」
「ごめんなさい!」
「え? なんで謝るんだ?」
「だ、だって、私お兄ちゃんの体ぐちゃぐちゃにしちゃったから」
「バカだなー、僕の体はもうほとんど妖怪みたいなものなんだからそういうのは気にしなくていいんだよ」
「で、でも! あんなひどいこと普通、実のお兄ちゃんにしないでしょ?」
「夏樹は僕を助けるためにやったんだろ?」
「う、うん、そうだよ」
「そうか。なら、許す」
「え? 許してくれるの?」
「ああ、許すさ。だって、そうしないとお前が狂人みたいじゃないか。まあ、あれだ。お前は昔から僕が絡むと頭のネジが吹っ飛んじゃうから、今更そんな細かいこと気にしなくていいんだよ」
「そ、そうなの?」
「ああ、そうだ」
「そ、そっか。良かった」
「あー、でも、ちょっと一人で立てそうにないから家まで運んでくれないか?」
「うん! いいよ!! あっ、そうだ。鈴蘭ちゃん、もう時間停止解除していいよー」
「はーい」
鈴蘭ちゃんが時間停止を解除すると、時が動き始めた。
「じゃあ、帰ろっか」
「ああ、帰ろう。僕たちの家に」




