仕方ないのです
座敷童子が雪女に放った技が何だったのかは分からない。
しかし、座敷童子がその技を使った後、雪女は倒れていた。
何が彼女を襲ったのかは分からない。
だが、たしかに彼女は座敷童子に敗北した。
その事実は、ねじ曲げることができない。
それが例え、鬼の力を宿している者であっても。
「……う……うーん……ここは……」
僕が目を開けると、死んでも毎日見たい妹の顔があった。
「あっ、おはよう。お兄ちゃん。大丈夫?」
「え? あー、まあ、大丈夫……かな」
その時、彼は妹の太ももに頭を乗せていることに気づいた。
「あっ! ごめん! 夏樹! 今、離れるから!」
「私は別に気にしてないから、お兄ちゃんはしばらくこのままでいて。じゃないと、お兄ちゃんを今日の晩ごはんにしちゃうよ?」
僕を食べるって……。
それは僕を犯すという意味か?
それとも後頭部にあるもう一つの口で食べるという意味か?
それとも……。
「おや? やっと目覚めましたか。体の具合はどうですか?」
リビングにやってきたのは先ほどまで雪女と戦っていた座敷童子だった。
「え? あー、まあ、どこも悪くはないな。それより、雪女さんはどうなったんだ?」
「それは、あの雪女のことですか? まあ、本来なら警察を呼んで即逮捕ですね。あなたを拉致、監禁、拘束したのですから。しかし、あの娘の家の力は大きいので、そのようなことにはなりませんでした。これからも彼女はあなたを狙うでしょうが、私という存在がいる限り、あなたは大丈夫です」
大丈夫?
本当かな?
「何ですか? 私を疑っているんですか? あなたの額に今すぐ『絶対服従』と書いて欲しいのですか?」
「ごめんなさい。それは勘弁してください」
さすがにそれはまずい。
「よろしい。では、夏樹さん。そろそろ交代してください」
「はーい」
え? ちょ、夏樹。
僕は今、まともに動けないんだから、こんなロリこけしと二人きりにさせないでくれ!
あ、あれ? 声が出せない。
どうしてだ?
妹がリビングから出ていくと、座敷童子は僕の頭を自分の太ももの上に乗せた。
「あなたは今、私が雪女に放った技の効果を少し受けています。なので、しばらくの間、あなたの体は私が近くにいればいるほど、私が念じただけで私の言いなりになってしまいます」
な、なんだよ! それ!
聞いてないぞ!
「今から、それを解除します。しかし、そのためにはあなたは私の唾液を体内に入れないといけません」
は? ちょ、なんだよ、それ。
「仕方ないのです。文字使いの奥義を受けた者は奥義を使用した者の体液を摂取しないと、一生あなたのような状態になってしまうのですから」
いやいやいやいや、もしそうだとしても、家族でもないやつの唾液なんか誰が……。
あれ? 僕はどうして口を開けてるんだ?
「では、いきますよ」
や、やめろ! やめてくれ!
あ、あ、あ、うわあああああああああああ!!