オルゴールの調整
昼休みが終わるとお兄ちゃんはすっかり元気になった。私の膝枕のおかげかな? そうだといいなー。お兄ちゃんは何事もなかったかのように自教室へ向かった。これで一件落着かなー。そう思っていた私は本当にバカだったと思う。まさかあんなことになるなんて。
放課後、お兄ちゃんが倒れた。お兄ちゃんが保健室まで運ばれたという話を聞いた私はそこまでダッシュした。
「お兄ちゃん、大丈夫!? ねえ、お兄ちゃん! お兄ちゃんってば!!」
私は何度も何度もお兄ちゃんを呼んだ。けど、全然目を覚ましてくれなかった。
「夏樹さん。今、雅人さんは人間の闇と戦っています」
「闇? それってもしかして昼休みにお兄ちゃんを黒いお兄ちゃんにしたやつなの?」
「はい、そうです。そしてそれは雅人さんの心を乗っ取ろうとしています」
「そっか。ねえ、それってもしかして今朝のオルゴールのせいなの?」
「はい、そうです」
まあ、遅かれ早かれこうなることは分かっていたんですけどね。
「それでどうやったらお兄ちゃんは目を覚ますの?」
「とても簡単です。この世にいる人間を全員排除すればいいんです」
「……え?」
「安心してください。オルゴールを調整し終わるまで人間たちの魂は三途の川を渡ることができないようにしてありますから」
「ちょ、ちょっと待って! なんでそんなことしないといけないの?」
「人間の闇というのは無意識のうちに常に作られています。まあ、がん細胞のようなものだと思ってください」
「えっと、つまり、人間がこの世にいる限り闇は無限に作られてるから人間を全員排除しないとオルゴールの調整ができないってこと?」
「はい、そうです。まあ、時を止めるという方法や亜空間を使用するという方法もありますが」
「え? そうなの? じゃあ、そうしようよ」
「そう言うと思って鈴蘭さんをお呼びしました」
「あー、あの『時を止められるでっかい白い蛾』かー」
「夏樹さん、あまり本音をズバズバ言わないでください。彼女が拗ねてしまいますから」
「あー、そうなの? ごめんね、鈴蘭ちゃん。お願い、力を貸して」
「……いいよ」
「やったー! ありがとう! 鈴蘭ちゃん!! じゃあ、早速やってもらおうかなー」
「うん、いいよ。えいっ!!」
彼女がそう言うと本当に時が止まった。良かったー、これでオルゴールの調整できるねー。




