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実の兄を鉄骨より強固な髪で殴る妹

 昼休み……屋上……。


「雪女、やつの動きを止めろ」


「え? それって先輩の両足を凍らせるってことですか?」


「ああ、そうだ」


「そ、そんなことしたら確実に霜焼けになっちゃいますよ!」


「大丈夫。お兄ちゃんはそのへんの人間より頑丈だから」


「そ、それはまあ、そうですけど」


 黒いお兄ちゃんが私たちの会話に割り込む。


「話は終わったか?」


「ああ、たった今終わったところだ」


「そうか。じゃあ、もう攻撃してもいいよなあああ!!」


 黒いお兄ちゃんは殺意を剥き出しにしている。まあ、こいつは私の知ってるお兄ちゃんじゃないから容赦なくボコボコにしてやろう。


「雪女、やれ」


「は、はい!!」


「遅い! 遅い! 遅い! 止まって見えるぜ!!」


 黒いお兄ちゃんは雪女の冷気をジャンプしてかわした。あーあ、ジャンプしちゃった。私が黒い長髪を花火のように広げると、やつはようやく自分が誤った選択をしたことに気づき、目を痙攣けいれんさせながらやんだ。


「そうか! お前は最初から俺を空中で仕留めるつもりだったんだな!! くそー! だから、わざと俺に聞こえる声で雪女と話してたのか!!」


「やっと気づいたか。だが、もう遅い」


 私は夏樹なつき(先輩の実の妹)さんが黒い先輩をボコボコにしているさまを直視できませんでした。心と体を乗っ取られているとはいえ、実の兄を鉄骨より強固な髪で殴る妹なんて今まで見たことも聞いたこともありません。彼女に背を向け、両耳をふさいでいても聞こえてくるにぶい音のせいで私はその場でずっとふるえていました。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


「……ああ、大丈夫だ。まあ、まだ少し痛いけど」


 少し痛い? ああ……先輩はもうほとんど人間じゃないんですね。はぁ……なんか今日夢に出てきそうです……。


「ねえ、お兄ちゃん」


「ん? なんだ?」


「私の膝枕、気持ちいい?」


「ああ、今すぐ死んでもいいくらい気持ちいいよ」


「えー、そうなのー? 大袈裟おおげさだよー。あっ、昼休み終わるまでこのまま寝てていいよ」


「ああ、分かった。それじゃあ、おやすみ、夏樹なつき


「うん、おやすみ」


 はぁ……勝てる気しないなー。でも、欲しいなー。先輩のぬくもり。

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