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どす黒い何か

 昼休み……屋上……。


あおいー、いるかー?」


「あっ! 先輩! はい! 私はここにいます!!」


「そうか。今来たのか?」


「はい! そうです!!」


 まあ、本当は午前の授業が終わった直後に教室を飛び出したんですけどね。


「そうかー。あおいはそんなに僕とハグしたいのかー」


「はい! そうです!!」


「そうかー。でも、僕とハグしても何も起こらないぞ?」


「起こります! 私の体が進化します!!」


「いやいや、進化はしないだろ」


「しますよ! 絶対!! さぁ、先輩。早く私とハグしてください!!」


「おう、分かった」


 私が先輩を抱きしめると全身の細胞が歓喜の声を上げました。ああ、体が熱い!! 今すぐ冷蔵庫の中か水風呂に入らないと溶けてしまいそうです!! でも、先輩のぬくもりをもっと感じていたいですー!!


あおい、顔赤いぞ? 大丈夫か?」


「え? あっ、はい! 大丈夫です! えっと、もうそろそろ離れてもいいですか?」


「ああ、いいぞ。またハグしたくなったら言ってくれ」


 ……っ!!


「は、はい!!」


 彼女の満面の笑みを見た直後、僕の体からどす黒い何かが出始める。それが僕の全身を包み込むと、僕の意識は徐々に遠のいていった。


あおい……早く……逃げろ……!」


「先輩、大丈夫ですか? 体、真っ黒になってますよ?」


「……ああ、大丈夫だ」


「そうですか。それはよかっ……」


 違う! この人は先輩じゃない!


「伏せろ! 雪女!!」


「……っ!?」


 黒い長髪が先輩を貫こうと直進してきましたが、先輩は手でそれを受け流しました。まるで最初からそれが飛んでくるのが分かっていたかのように。


「危ないなー。ちょっと今のはびびったぞ、夏樹なつき


「黙れ! 今すぐお兄ちゃんの体から出ていけ!!」


「うーん、それは俺の気分次第かな?」


「……雪女、手を貸せ」


「え?」


「え? じゃない。お兄ちゃんがどうなってもいいのか?」


「だ、ダメです! そんなのダメに決まってます!」


「なら、手を貸せ」


「は、はい! 分かりました!!」


「二対一か……。まあ、俺は別に構わないが」


「行くぞ、雪女」


「は、はい!!」


 まあ、本当は共闘なんかしたくないんだけどね。

 まあ、できれば共闘なんかしたくないんですけどね。

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