今すぐお兄ちゃんを凍らせてお持ち帰りできる力
あれ? 正門に誰かいるな。
「あっ! おはようございます! 先輩!!」
「おー、葵じゃないか。こんなところで何してるんだ?」
「え、えーっと、そのー、せ、先輩とハグしたいなーっと思ってここで待ってたんです」
は? 何この女。というか、なんでこんなにツヤツヤしてるの?
「そうか。でも、ずっと立ってるのしんどかっただろ?」
「いえ、ずっと先輩のこと考えてたので全然しんどくなかったです」
「そうか。なら、いいんだが」
「お兄ちゃん、早くしないと遅刻しちゃうよ」
「おっ、そうだな。ということで、ハグは昼休みまでお預けだ。じゃ!」
「あっ! ちょっと待ってください!!」
「なんだ?」
「あっ、えっと、今先輩の体の中に嫌なものを吸い込む妖精がいますよね?」
「え? あー、まあ、いるな」
「そうですか。えっとですね、このまま放置しておいたらいつかきっと大変なことになると思うんです。なので今すぐその妖精の力だけを凍結してもいいですか?」
「ああ、別にいいぞ」
「お兄ちゃん! この女は今すぐお兄ちゃんを凍らせてお持ち帰りできる力を持ってる雪女なんだよ!? ちょっとは警戒しようよ!!」
「大丈夫。葵にその気はないから。だよな? 葵」
「え? あー、はい、そうです」
時々、お持ち帰りしたくなることは黙っておきましょう。
「だってよ。ということで、よろしく頼む」
「あっ! はい! 頑張ります!!」
この女、絶対お兄ちゃんをお持ち帰りしようとしてる。けど、まだそれを実行しようとはしていない。まあ、もしそうなっても全力でこの女を潰せば解決するからしばらく放っておこう。
「い、いきますよー! 部分凍結!!」
「おっ! なんか少し苦しくなくなったような気がするぞ。ありがとう、葵。助かったよ」
「本当ですか!! それは良かったです」
「ねえ、お兄ちゃん、早く行こうよー」
「あー、そうだな。じゃあ、昼休みになったら屋上に来てくれ! そこでハグをしよう!!」
「はーい! 分かりましたー!!」
あー、先輩今日もかっこいいいですー。それになんとなくすごくいい一日になりそうな気がしますー。




