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百花

 体長一キロメートルほどの大百足おおむかでは僕の唾液によってバラバラになってしまった。どうやら自分たちの子どもを人間の子どもたちに大量虐殺されたことが原因で怒りにとらわれてしまい、その結果暴走してしまったらしい。とにかくたくさんのムカデと合体して子どもたちに復讐してやろうという考えしか頭になかったため老若男女問わず合体させていた。しかし、うちに逃げてきたあのはそれをこばんだためヤツに襲われた。

 今さっきヤツは彼女を洗脳するためにコアと合体させようとしたが、僕がヤツの体内に唾液を塗ったためそれはできなくなった。


「お兄さん、私に名前つけて」


「え? 名前? うーん、じゃあ、百の花と書いて『百花もか』にしよう」


「モカ……かわいい名前だね」


「そうか? おっと、そろそろ出ないと遅刻確定だな。じゃあ、いってきます」


「待って!」


「ん? なんだ?」


「えっと、その……い、いってらっしゃい」


 彼女は僕のほほにいってらっしゃいのキスをすると、ニッコリ笑った。


「あ、あー、うん、い、いってきます」


 僕は苦笑しながら家を出た。理由は物陰からこちらを見ていた夏樹なつき(僕の実の妹)がスタスタとこちらに向かって歩き始めたからだ。


「ねえ、お兄ちゃん、どうして逃げるの? というか、あの、だあれ? ねえ、教えてよ。ねえ、ねえ、ねえ」


「その話は歩きながら話すから! とりあえず真顔で近づくのやめてくれー!」


「うん、いいよ♡」


 あー、良かった。夏樹なつきの黒髪ロングで全身貫かれるかと思った。

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