倒すのはダメです
うーん、今日なんか曇ってるなー。傘持っていこう。僕が玄関の扉を開けようとすると大百足に狙われている例の幼女が僕の手を握った。
「お兄さん! 行かないで!!」
「えっと、僕これから学校に行くんだけど」
「ダメ! 今外に出たらダメ!!」
彼女は何かに怯えるようにガタガタと体を震わせている。
「どうしてダメなんだ?」
「どうしてって……ダメなものはダメなの!!」
「そうか。おい、童子。いるか?」
「はい」
「なあ、童子。空の上にいるのって」
「十中八九、大百足です」
「だよなー。よし、じゃあ、倒すか」
「倒すのはダメです。その子も消滅してしまいますから」
「え?」
「倒していいよ! 私はどうなってもいいから!!」
「ダメです。あなたには他の大百足の一部たちにはない自我があります。その証拠にあなたは今すごく辛そうな顔をしています。そしてあなたはこの家で雅人さんと一緒に生きていきたいと思っている。違いますか?」
「違う! 私は!!」
「違うのか?」
「ち、違うよ! だって、私は大百足の一部で」
「なあ、お前はこれからどうしたいんだ? 一生アレの一部でいいのか?」
「わ、私は……私は……」
答えを聞く前に彼女は磁石に引き寄せられるかのように扉をすり抜けた。僕が玄関の扉を開けようとすると座敷童子の童子がそれを妨害した。
「雅人さん、あなたには彼女と共にここで暮らせる覚悟がありますか?」
「ああ、もちろんだ。だから、早く行かせてくれ」
「分かりました。ですが、私の指示通り動いてください」
「ああ、分かった」
「よろしい。では、参りましょうか」




